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2022年12月2日【ソフトウェア】

BlackBerry、QNXソフトウエアをクラウドで提供

坂上 賢治

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米アマゾン傘下でクラウドサービスプロバイダ(CSP)最大手のアマゾンAWSは、米国西部時間の11月28日から翌12月1日(日本時間の11月29日から12月2日)の4日間に亘って、同社の年次イベント「AWS rs:Invent2022」を米国ネバダ州ラスベガス市(ベネチアンコンベンション&エキスポ センター)で開催。( 坂上 賢治 )

 

 

同催事で参加したブラックベリー(BlackBerry Limited)は会期の最終日、自社の組み込み型OS「ブラックベリーQNX」を、アマゾンAWS上で初提供する事を発表した。同社は、これにより顧客企業が行う製品開発期間の大幅短縮を約束。最終製品に至る市場投入スピードの向上に貢献して行くと発表した。

 

クラウド上で実行される「ブラックベリーQMX」RTOS(リアルタイムオペレーティングシステム)は、クラウドネイティブなワークベンチとして機能することから単独使用が可能だという。

 

またブラックベリーとAWSが共同開発したクラウド環境動作の自動車向けAIデータ処理プラットフォームの「ブラックベリーIVY」と連携して使用する事も出来るとしている。

 

 

ブラックベリーQNX事業で製品管理及び戦略部門バイスプレジデントを務めるグラント・クールヴィル氏は、「QNXの基本ソフトウェアのクラウド化は、容易なアクセス性と自由自在な拡張性が実現出来るため、組み込み開発者にとってこれまでの常識を覆す存在となるでしょう。

 

それはミッションクリティカルな組み込みシステムに取り組む開発者にとって、製品の開発・導入に至るライフサイクル全体を通じ、協業並びに作業の迅速化を約束するものです。

 

例えば自動車産業界を例に取ると、車載用の電子アーキテクチャは日々複雑化しており、平均的な自動車でもその車載ソフトウエアは1億行以上のコードによって構築されています。そうした中で一般の自動車ユーザーも、世界各国で交通環境を司る規制当局も、次世代のクルマに対して、より拡張された機能性と、柔軟性の高いパソーナライズ対応を求めています。

 

それゆえ自動車メーカーと車両の開発技術者は、目的地に向かう途中に於いて素早く渋滞状態を知らせたり、事前に凍結した路面に対する警告アナウンスしたり、バッテリー残量を先回りして調べて適切な場所の充電スタンドを予約するなど、個々のドライバー毎に適応出来るソフトウェアづくりーを重ねつつ、それらの機能のテストを繰り返すなど、的確に要求性能に応えていくという重圧に直面しています。

 

しかし我々のAWS対応のブラックベリーQNX RTOSの利用で、難なく開発業務の合理化が可能となり、この結果、個々の技術に立脚した開発者間の相互干渉を軽減させ、様々な課題についての迅速な克服が実現可能となります。

 

加えて個々の車載OSや個々車両のハードウエアなどからの提供される多種多様なデータ処理を、一貫して処理出来るブラックベリーIVX環境もフル活用出来ます。

 

今回のデモンストレーションでは、自動車サプライヤーのマレリがクラウド環境を介してAIソリューションを使ったテストと統合作業を進めた後、これをハードウェアに素早く導入して車内で実行する方法を紹介しました」と述べた。

その利用状況についてマレリ社で電子システム部門のバイスプレジデントを務めるヤニック・ホヤウ氏は、「QNX AMIにより、当社の開発者はチームの立ち上げ時間を大幅に短縮しつつ、高品質な製品開発を終える事が出来ています。

 

これは当社の業務形態に革命を起こすものであり、今後は、車載ソフトウエアのテストをハードウェアなしに実行出来ます。

 

そしてこれこそが、当社が待ち望んでいたソフトウェア開発に於ける転換点となりました。当社の統合型コックピットDCUのMInD-Xpが、市場に先駆けて同環境で開発出来る事をティア1サプライヤーとして光栄に思います」と語った。

 

またアマゾンAWSでオートモーティブ担当を務めるジェネラル・マネージャーのウェンディ・バウアー氏は、「この業界の100年に1度と言われる再編期に、様々な企業のリーダーを結びつけられるという栄誉は、当社のAWSゆえに成しえる事であり、それはこの仕事に取り組むための我々のモチベーションになっています。

 

当社のGraviton2プロセッサを通じ、クラウドが持つ潜在能力を解き放つ事。ブラックベリーLTDのドラスティックな変革を支えていく事は、当社のみならずクラウド産業業界全体にとっても大きな活力の源となっています」と結んでいた。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。