カナダのソフトウェア・ベンダーであるブラックベリー(BlackBerry、本社・オンタリオ州)は8月26日、オンラインで記者説明会を開き、組み込み車載ソフトウェア「ブラックベリーQNX」がフォルクスワーゲン(VW)グループのソフトウェア子会社に新たに採用されたと発表した。(佃モビリティ総研・松下 次男)
自動車向けソフトウェア基盤の「QNX」をVWのソフトウェア子会社が採用
同説明会は、QNXの事業概要とインテリジェント車載データ・プラットフォーム「ブラックベリーIVY」の新たな協業企業選出の公表などを目的に行ったもの。
QNXの事業概要については、ジョン・ウォール・シニアバイスプレジデント兼ブラックベリー・テクノロジー・ソリューション・オペレーションズ責任者、IVYの説明についてはIVYプラットフォーム・デベロップメントのサラ・タティス・シニアバイスプレジデントが行った。
ジョン・ウォール・シニアバイスプレジデント兼ブラックベリー・テクノロジー・ソリューション・オペレーションズ責任者
ウォール・シニアバイスプレジデントは車載インフォテイメントシステムから今や自動運転・ADAS(先進運転支援システム)向けへと発展する組み込み車載OSについてほとんどの自動車メーカーが採用するまで拡大していると表明した。
IVYプラットフォーム・デベロップメントのサラ・タティス・シニアバイスプレジデント
QNXはすでにOEMトップ10に採用済み、EVでは25社中、24社に採用
具体的には、トップ10のOEMの全て、EV(電気自動車)メーカーでは25社の24社に採用済みとした。EVメーカーの残りの1社は独自の技術を採用する米テスラ。
日本の自動車メーカーについてもほぼすべての乗用車メーカーがQNXを採用しており、すでに市場で走行しているQNX搭載の車両は2021年の累計1億9500万台から2022年には2億1500万台を突破すると説明した。
BlackBerryのパートナー並びにOEMとベンダ各社
既にQNXテクノロジーを採用する自動車メーカーは45社に上る。また、ティア1の自動車部品メーカーについても日本のデンソーなどを含む上位7社全てがQNXを採用しているとも述べた。これらはブラックベリー全体の業績にも大きく寄与したと話す。
BMWがADAS向けソフトウェアをリナックスからQNXに変更した
また、最近のトピックスとして独BMWがADAS向けソフトウェアをリナックスからQNXに変更したことやボルボ・トラックスでも複数の領域にQNXを採用していると紹介した。
こうした中で、今年第1四半期についても新たに14のQNXのデザイン・インを獲得、うち9件が自動車だと明らかにした。
新しいところでは、VWグループのソフトウェア子会社「CARIAD(キャリアド)」がソフトウェア・プラットフォーム「VW.OS」の構成要素にQNXテクノロジーを採用したと発表。このプラットフォームは2020年代半ばからVWグループのブランドに採用される予定だ。
PATEOがインテリジェント・コクピットにQNXテクノロジーを採用
また、中国ティア1大手の車両インターネットテクノロジー製品・サービスを手掛けるPATEOがインテリジェント・コクピットの「PATEO CONNECT+」にQNXテクノロジーを採用したと公表。
同コクピットは中国大手、国際的メーカーである2社を含む5社の自動車メーカーの10モデル以上に採用、量産される見通し。
ウォール・バイスプレジデントはこのほか半導体メーカーのエヌビディアが提供する自動運転ソフトウェアにQNX技術が採用されているほか、クアルコムの車両デジタルコクピットの88%にQNXテクノロジーが採用されていると明らかにした。
BlackBerry IVYのロードマップとクラウド環境に於ける開発概念
エッジ・ツー・エッジでOEM、ティア1、半導体メーカーの連携が重要
さらにグーグルのアンドロイドとも自動車システムを共同開発しており、アンドロイド12以降ならば簡単にQNXがアップデートできるとした。
ウォール氏はこのように自動車の進化に向け、1社だけですべてのソフトウェア技術に対応するのは不可能、「エッジ・ツー・エッジでOEM、ティア1、半導体メーカーの連携が重要だ」と訴えた。
クラウド環境で提供するインテリジェント車載プラットフォームのIVYでは、コネクテッドカー技術に注力するカナダ企業を支援するアクセラレータ・プログラムを展開しており、今年からIVYの利用環境も提供するなど新たな取り組みを始めた。
SDV時代に向けた自動車業界の課題
この中で、第3期プログラムとして「Deeplite」「Raven Connected」「Sensor Cortek」「Wedge Networks」の4社を選出。
これにより、ドライバーと同乗者のエクスペリエンスを向上させるための、車載データを活用した次世代コネクテッドカーのユースケース提供などに取り組むことが可能になると説明した。