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2023年12月8日【ケミカル】

ブリヂストン、航空機用タイヤ事業の優秀事例を世界表彰

坂上 賢治

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ブリヂストンは12月8日、自社グループ内に於いて「第13回ブリヂストン グループ・グローバルTQM(Total Quality Managementの略/総合品質管理)大会」を開催。今回は、世界規模で航空機の離着陸を支えているブリヂストン製・航空機用タイヤが表彰の対象となった。

 

ちなみに一般的に航空機タイヤは、個々1本当たりで30tにも上る重量を支えながら、約350Km/hの速度で離着陸を繰り返すため、着陸時のタイヤ表面温度は250℃以上、フライト時は高度10,000mで気温マイナス45℃の環境に対応するなど過酷な条件下でも安心安全を守り切ることを求められる。

 

また過去に於いて航空機用タイヤは、航空機の離着陸数百回毎に交換されてきたのだが、今日の新品タイヤは複数回のリトレッド(トレッド面のみの張り替え)も可能だ。リトレッドは、高耐久を保つタイヤ骨格を再利用し、摩耗したトレッド部のみを更新することで、高い資源生産性と環境負荷低減により、サステナビリティ性の向上に貢献する取り組みだ。

 

しかも航空機用タイヤは、様々なエアラインや空港で使われることになるため、北半球・南半球のみならず、極寒や灼熱の滑走路など、タイヤ使用環境が多様に亘る。

 

従ってリドレッド可能な新品タイヤの製造過程では、無限とも言える素材・部材の組み合わせを介した製品検証が前提となる。しかしそれは難解を極める領域だ。つまりリトレッド回数の更なるアップについては難しい状況にあったのだ。

 

そこで今回、同社の技術チームはデジタルデータを活用。まずは新品タイヤ1本あたりの製造過程下で7,000超のデータを収集。これをベースにこれまでは暗黙知となっていた熟練作業員の手作業による製造過程を可視化し標準化する取り組みに挑戦した。

 

当該データと、航空機に装着・使用された後のタイヤの状況を示すデータと、タイヤ構造や素材のビッグデータ解析を経て、タイヤ1本毎の部材・素材・構造の配置精度と、世界の空港での使用環境との関係性を洗い出し、遂に適した対策を施すことに成功した。

 

その結果、これまでは暗黙知であった匠の技をデータ分析を介して再現できた上に製造方法の新たな標準化も確立。リトレッド回数を上げるための精度向上に漕ぎ着けた。

 

大会では、最終選考としてこうした事例を含む16件の発案が発表されて、スペイン、アメリカ、ベトナム、日本などの計9つの事業拠点が表彰されるに至っている。

 

なかでも先の通りで、東京都小平市の日本の技術センターが「データ活用による航空機用タイヤのリトレッド可能回数の向上」を提案し、これがグランプリを獲得した。

 

同社では大会の開催について、「常に〝最高の品質で社会に貢献〟することを使命に掲げる当社にとって本大会は、改善事例をグローバルで共有し相互研鑽することを目的としています。

 

ブリヂストンの企業活動の基盤である〝品質へのこだわり〟は、当社のDNAであり、創立92年歴史の中で培ってきたグローバル規模の事業上の財産です。こうしたイノベーションの共有と継続的改善を繰り返し、地道に現場で業務品質の向上に取り組むことは今後、我々の成長へ向けて全てのベースとなるものです。

 

本大会を等してブリヂストングループは、業務品質向上の浸透を継続的に推進し、オペレーショナルエクセレンスの追求を徹底してまいります」と話している。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。