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2023年5月17日【ケミカル】

日本ミシュラン加盟の群馬積層造形基盤、活動成果報告を実施

坂上 賢治

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写真は向かって左から日本ミシュランタイヤの須藤元代表取締役社長、群馬県立産業技術センターの細谷肇所長、GAMの鈴木宏子代表理事、CETIMのポリーヌ・ボルニュGM、山本一太群馬県知事

 

3D金属積層造形技術拠点を日本に開設して2年、その活動の技術成果を報告

 

仏ミシュランの日本法人である日本ミシュランタイヤ(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:須藤 元)は5月17日、自社も加盟する「一般社団法人群馬積層造形プラットフォーム(GAM)」は、群馬県庁に於いて報道陣を募って3Dプリンティング技術を中核とした活動成果に関する技術報告会を実施した。( 坂上 賢治 )

 

造形物:軽量化と剛性を両立した航空機用部品 (手前:縮小スケール)

 

当日は、山本一太群馬県知事も列席した同報告会の中で、今年新規メンバーとなった群馬県立産業技術センターとフランスの国立産業技術センターにあたるCETIM(セティム)との連携を披露。

 

続くプレゼンテーションのフェーズでは、車体骨格製造でスバルのティア1企業である東亜工業による逆転の発想を活かした技術理論。しげる工業による従来工法では成し得ないコンフォーマルクリーニング構造の成型技術。

 

共和産業は、自動車パワープラント試作・開発品やレース車両へ提供する特殊製品などに係る技術成果と併せて人材育成の成果を強調した。

 

加えて今後のGAMの積層造形技術開発の探索テーマと方向性を示す「探索マップ」を発表した。

 

造形物:人工衛星のソーラーパネル展開用ヒンジ(一体成型により軽量化と耐久性を向上)

 

GAMは2021年7月に次世代技術を担うオープンプラットフォームとして設立

 

そんなGAMは、そもそも2021年7月にミシュランと群馬県下の有志企業が集結。次世代イノベーションを担うオープンプラットフォームとして設立された。

 

翌2022年4月にはミシュラン太田サイト内に金属積層造形装置(金属3Dプリンター)2台を設置し、活動拠点となる「ミシュランAMアトリエ」を開設。

 

以来これまでのおよそ2年間余り、GAMは「ミシュランAMアトリエ」をベースにデジタルモノづくり人材を育て、技術者のリスキリングを積極的に行う他、GAMメンバー企業と共に積層造形技術の実用化を目指す共同開発に取り組んできた。

 

設備:ミシュラン AM アトリエ(セミナーや会議・商談、新しい適用を模索するブレインストーミング区画)

設備:ミシュラン AM アトリエ(仲間とのリラックスしたコミュニケーションスペース)

 

そして迎えた同日、実際のものづくりに繋げる共同開発の第一歩として、自動車部品を製造するコンフォーマル冷却金型に於ける金属積層造形の冷却効果検証、少量生産品用の素材として金属積層造形の適合性検証の結果を発表した。

 

それによると、上記の金属積層造形の冷却効果検証と適合性検証のいずれも、金属積層造形の有意性がある領域とそうでない領域を検証して、明確にすることが出来たとしている。

 

設備:高水準のHSE・品質管理に対応した造形室

作業:造形室内でのトレーニング(受講者は安全衛生・環境リスクを受講、PPEを装着)

作業:造形室内でのトレーニング(受講者は安全衛生・環境リスクを受講、PPEを装着)

作業:AddUp社製金属粉末ふるい分け装置(作業者は金属粉末に触れることなく雰囲気ガス内でふるい分け

 

まずは「コンフォーマル冷却金型」「少量生産品」への金属積層造形の適用に取り組む

 

そうした過去2年間の弛まぬ技術活動を経た今後、GAMが最初に取り組むテーマ(同法人が、探索テーマとして目指すべきロードマップを〝探索マップ〟という俯瞰図にして示した)は「コンフォーマル冷却金型」と「少量生産品」への金属積層造形の適用であるという。

 

 

このコンフォーマル冷却金型とは、形状に適応した冷却配管を内部に持つ金型で、冷却効率と生産効率が高い特徴を持つもの。

 

作業:AddUp社製FormUp350造形チャンバー内へのビルドプレート設置作業

設備:AddUp社製FormUp350

設備:AddUp社製FormUp350タッチパネル

 

これらのテーマの追求により、日本の製造業に於いて、金属積層造形が今後どの領域に有意性があるのか、どのように企業課題や社会問題の解決に繋がるのかを明確化していく。

 

今回発表した「探索マップ」のイメージ図

 

つまり報告会で上記のように示した「探索マップ」は、GAMが金属積層造形をものづくりに実装し、新たな価値を生み出すに至るまでの道筋を示すマップである訳だ。

 

それは4つのステップで構成され、図中には青・紫・オレンジ・緑で示している。それぞれ「GAMの取り組むテーマ」、「価値を実現するための方策」、「乗り越えるべき課題」、「AMのもたらす新たな価値(ゴール)」を意味し、このマップを元に共同開発を行いながら、今後は課題や解決の方策を明確にしていく。

 

そして柔軟にマップを更新しながら、志を同じくする仲間と新たな価値創造を目指すと語っている。

 

今後も革新的な技術と〝わくわくする展開〟を群馬から発信し続ける

 

こうしたテーマと指針についてGAMの鈴木宏子代表理事は、「ミシュランAMアトリエを使ったGAMの共同開発の成果を、今回初めてご報告出来ることを大変嬉しく思います。

 

GAM設立から2年弱、拠点となるアトリエ開設から1年で、〝探索マップ〟を策定し、金属積層造形の生み出す新たな価値を見える化することが出来ました。今後、より多くの仲間とともに実用化と共同開発を加速していきます」と述べた。

 

また三方良しの理想を掲げてこのGAMに参画している日本ミシュランタイヤの須藤元代表取締役社長は、「本年夏の本社の群馬移転に先行して、GAMとともに今回の共同開発成果報告が出来、群馬県の仲間となったことを実感しています。

 

ミシュランはタイヤメーカーというコアを持ちながら、〝タイヤを超越した〟分野でも積極的に協業の可能性を探っています。

 

成功には、ミシュランの専門知識に加え、高い専門性を持つ外部企業の皆様とのコラボレーションが不可欠です。これからも金属積層造形を皮切りに革新的な技術と〝わくわくする展開〟を群馬から発信し続けます」と結んでいた。

 

参画企業_しげる工業のコンフォーマルクーリング金型

 

ちなみに最後に、GAMの概要をより具体的に説明すると同法人は、産業界のニーズに基づき金属積層造形技術とその関連先端技術の普及・人材育成・研究開発・実用化を推進することで地域に貢献することを目指している団体だ。

 

併せて新たな時代のものづくり産業の礎として、新しいプロセスや新産業の創出に寄与することも最重要ミッションのひつととしている。

 

参画企業_東亜工業の水管精度確認用試作品

参画企業_共和産業の二輪用シリンダーヘッド

 

そこで先の通り2020年8月からJETROや群馬県の自治体、公共団体、大学、企業と協力して法人設立の協議や準備を進め、2021年7月に当地、群馬県に於いて一般社団法人として発足した。

 

現在GAMは、過去2年余りの基礎研究期間を経て、金属積層造形に関する教育、実用化プログラムの提供、メンバーサロンでの共同研究開発と知見の共有、地元の大学や自治体、公共団体と連携したプログラムを広く提供する意向であり、これに興味を持つ団体や企業等からの質問。参画希望の要請などについて、今日に於いて門戸を開いているという。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。