NEXT MOBILITY

MENU

2023年7月27日【テクノロジー】

日本発の「自動バレー駐車システム」が国際標準に

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

経済産業省は7月27日、日本・ドイツ共同開発の「自動バレー駐車システム」に関する国際標準(ISO 23374-1)が発行された事を明らかにした。

 

この自動バレー駐車システムとは、大型施設の駐車場等で自動車ユーザーが出入口で乗降車する際以外は、車両の受け渡しと駐車スペースまでの往復と駐車を無人の自動走行により行う技術を指す。

 

同技術が普及する事は、駐車場スペースの有効活用や駐車場内での事故低減に寄与する。更にユーザーの駐車操作がなくなるため駐車場所の探索・空き待ちなども解消されるなど、利用ユーザーの利便性の向上やCO2の排出削減効果も期待されるとしている。

 

同技術の開発に至った経緯は、ショッピングモール、大型複合ビル、テーマパークといった大規模な商業施設や空港などで「駐車場が見つからない」、「駐車場所が遠い」といった事がストレスになる事。また都市部では、駐車間隔が最小化されず、限られた駐車場スペースの効率的な活用が出来ていないという課題があった。

 

そこで上記課題の解決に向け、日本や欧米、中国を始めとする世界各国に於いて、自動運転技術を用いた自動バレー駐車システムの実用化に向けた検討が行われ、その中で、システムの動作や手続き、車両とインフラのインターフェースの仕様など、国際的に統一された標準の整備が求められていた。

 

そこで、日本国内に於ける車両技術の研究開発と実証実験から得られた成果をベースに、自動バレー駐車システムをより広く世界に普及させるべく、日本が技術標準を提案。これをドイツと協力する事を介して国際標準化に至った。

 

具体的な標準化にあたっては、自動車ユーザーが駐車場の入口でクルマから降車した後、車両が駐車場内を無人で自動走行して所定の駐車場所に駐車。引取り時は、ユーザーが乗車する場所まで自動走行するシステムを定義した。つまり(1)駐車場の予約から駐車場への車両の引渡し(2)駐車場内での自動走行及び駐車(3)車両引取りまでのシステム動作や手続きを規定した。

自動バレー駐車システム

 

但し、駐車場内では車両と駐車場インフラとが協調して無人での自動走行レベル4を実現する際、車両とインフラはお互いに独立したシステムとなるため協調させる仕組みの標準化が重要となる。

 

そこでこの標準化では、世界中の様々な方式に対応させるべくシステム構成によって、3タイプのインターフェース仕様を規定した。

 

ひとつは車両の制御機能を車両側が担う「タイプ1」、続いてインフラ側が担う「タイプ2」、また車両・インフラがお互いに連携する「タイプ3」となる。

 

特にタイプ3に関しては、日本の経済産業省・国土交通省共催の「自動走行ビジネス検討会」で企画された自動バレー駐車システムの実証プロジェクトで検討されたシステムそのものとなる。

 

従って国内で実証実験も行われ、日本で確立された技術内容をそのまま標準に織り込み、日本の考え方とも整合した国際標準とし、日本が国際議長を務めるISO(国際標準化機構)/TC204(ITS 高度道路交通システム)/WG14(走行制御)に、日本から2017年4月に提案し、2023年7月13日に国際標準として発行された。

 

ちなみに同システムの確立・普及は、今後、数多くのメリットを生む。例えば駐車間隔の最小化による駐車場スペースの有効活用や、駐車場内での事故の削減への寄与。

 

またユーザーの駐車操作が不要となり駐車場所の探索・空き待ちなども解消されるため、ユーザーの利便性の向上、CO2の排出削減も実現する。

 

更に駐車場に車が停まっている間に、充電や洗車などのサービスを行うことも可能となり、駐車状態にある時間の有効活用にも貢献する。加えて乗降車場所の自由度が高まるため、高齢者や車いす利用者にも優しい環境づくりが可能。配送業や工場内輸送などの事業へシステム応用すれば、人手不足解消にも繋げられるとしている。

 

以下当該記事の関連リンク
International Organization for Standardization

公益社団法人自動車技術会 「自動車の標準化2022」

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。