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2024年1月19日【テクノロジー】

日本規格協会、電動モーターの高効率測定手法を発行

坂上 賢治

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一般財団法人日本規格協会( JSA/本部:東京都港区、理事長:朝日弘 )は、2023年12月20日にJIS C 2541:2023( 赤外線カメラによる鉄心表面の損失分布の熱的測定方法/JIS C 2541 )を発行したと( 2024年1月19日 )発表した。

 

JSA( 日本規格協会 )では、この「 JIS C 2541 」で規定された測定方法の普及が促進されることで、モータの効率向上による省エネが図られ、カーボンニュートラル社会の早期実現が果たされるという。

 

 

今回JSAが、「 JIS C 2541 」を発行した理由は、電気自動車( EV )、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車へと電動化が進む自動車産業界に於いて、駆動用モータの高効率化のニーズが高まっていることにある。

 

そもそも駆動用モータの高効率化には、主要構成部品のモータコアの積層鉄心のエネルギー損失(鉄損)を精密に測定する必要があるが、従来の磁気センサでは精密な測定ができなかった。

 

そこで新たな測定方法が望まれていたため、今回の赤外線カメラを利用した測定方法によって、従来の磁気センサの100倍の分解能で測定でき、かつ、非接触で測定出来ることから被測定物の形状の制約を受けずに、モータコアの積層鉄心部分で生じる損失のひとつである鉄損を熱的に測定し、損失分布画像とする方法の規格化が開発された。

 

 

このJIS C 2541では、装置構成、測定手順、報告事項を規定して、測定原理、測定事例を説明しており、例えば真空チャンバに設置したモータを回転させることで生じるモータコアの損失を、赤外線カメラの熱画像から温度上昇率を算出。比熱を乗算することで損失を測定し、モータコア表面の損失分布を表示できる。

 

この場合の測定分解能が、従来の磁気センサによる測定の100倍であることから、試料の端部、細部および、非接触で測定することから曲面の測定が可能になるとしている。

 

より具体的には、モータコア等の積層鉄心(積層電磁鋼帯)の高精度の損失測定が可能になる。例えば下図の測定事例では、損失分布図の赤丸部分に積層鉄心の積層を固定する溶接が施してあり、その影響で透磁率が低下し、ティース両脇に磁束が集中し損失が高くなっていることが判る。

 

下図の測定事例では、赤丸内に積層コアの固定としてカシメを使用しているが、その部分がカシメによる応力等によって損失が高くなっていることが判る。

 

 

つまりJIS C 2541では、従来の磁気測定法と比較すると鉄心表面の損失を測ることにより、モータコアの性能評価・比較が容易に精度よく可能となる。

 

 

併せて損失箇所を特定し、改善することでモータコアの損失を低減させ、モータの高効率化へと繋げることができる。今後は同測定方法が広く利用されることで、モータの効率向上による省エネが図られ、カーボンニュートラル社会の実現に寄与すると結んでいる。

一般財団法人 日本規格協会(JSA)
本部 :東京都港区三田3-13-12 三田MTビル
設立 :1945年(昭和20年)12月6日 商工大臣設立許可
事業内容 :規格開発部門、標準化普及部門

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。