大阪ガス傘下のKRIは2月26日、現行の5倍の寿命を実現する「“超長寿命”蓄電池」の開発に世界で初めて目途を付け、2025年度にユーザー求評用試作サンプル品の供給を目指す。
また、複数のパートナー企業と連携して、研究開発から事業化までに必要なリソースを一括提供する「蓄電エコシステム」を構築し、顧客の要望にグローバルに対応できる体制を整えた。
今日も蓄電池市場は、車載用・定置用などの複数の用途向けに世界で拡大し続ける。当然、日本国内でも蓄電池は、〝2030年度の温室効果ガス削減目標〟〝2050 年のカーボンニュートラルの達成〟に向けて自動車の電動化、再生可能エネルギー(再エネ)の主力電源化を達成するための最重要技術の一つとして位置付けられている。
そうしたなかでKRIは、先進的研究開発機能とコンサルティング機能を併せ持つ総合的な民間受託研究会社として、エネルギー・環境技術、材料技術を中心とする受託研究・分析評価を手掛けることによって、顧客事業の支援を行う。
また自社研究により新たな技術シーズの掘り起こし、新たな価値の創造に取り組み、蓄電池分野の受託研究開発事業の拡大に取り組んでいる。
今回、取り組む“超長寿命”蓄電池の開発技術では、ノーベル化学賞受賞者の吉野彰氏が提唱する「超長寿命化」に沿って、KRIの「超長寿命化コンセプト」に賛同する企業と一緒に「材料・電極・電池」「診断・運用」の2側面から「超長寿命化」について議論・開発を進めてきた。
この結果、正極にリチウムを含む酸化物、負極に炭素材料を用いた“超長寿命”リチウムイオン電池(LIB) 基盤技術の完成・目標到達に目途が得られたことから、2025年度から10Ah(400Wh/L前後/概ね電動バイクに搭載する程度の容量)のユーザー求評用サンプルの供給を開始する予定だ。
なお、これには今年2月に子会社化したエス・イー・アイ(SEI)の試作実証技術の活用を想定しているという。同プロジェクトに於いては最終的に、電気自動車に搭載されている従来の30kWhの電池寿命(例えば保障16万km)を5倍以上にすることを目指す。
一方で「蓄電エコシステム」では、従来からKRIでは電池技術者、材料技術者、分析技術者、調査専門員が連携し、蓄電池の研究開発をサポートする「ワンストップサービス」を実施してきたが、蓄電市場が成熟するにつれ、顧客からの要望が多様化し、課題も高度化する中、KRI単独では対応できない事案もある。
そこで「蓄電エコシステム」のテーマでは高度分析・解析、試作実証、少量生産、データ解析・製品実装などの各分野で高い技術を有する外部企業、研究機関と連携し、研究開発から事業化までに必要なリソースを一括提供する「蓄電エコシステム」を構築。既にグローバルに対応できる体制を整えた。
その一例としては、高度分析・解析は東レリサーチセンター、電極・電池・システム試作実証はエス・イー・アイ (2月に子会社化)およびエナックス、システム設計はマイクロ・ビークル・ラボ、計測の分野では東京精密、さらに蓄電池システムからのリアルデータ解析、電池状態推定、余寿命診断などを基礎としたシステム運用技術の実装開発は宇部情報システムと連携していく構え。
1. 蓄電池の超長寿命化技術のイメージ
・「材料・電極=電池開発」で、KRIコンセプト(下図)に賛同して頂いた複数のメーカー様と共同で開発中。
・加えて「診断・運用技術」で、KRIが持つ劣化診断、寿命推定の知見に基づき、データ・モデル・経験を融合させる解析技術を利用して開発中。
2. 「蓄電エコシステム」のイメージ
・高い技術をお持ちの外部企業さま、研究機関さまとの連携・提携により、研究から事業化までに 必要となるリソースを一括提供出来る体制を構築。
・今後はさらにユーザー企業様との連携を推進し、蓄電池ビジネスの発展に向けてグローバルに対応できる体制を目指す。