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2024年2月28日【エネルギー】

大阪ガス傘下のKRI、寿命5倍のサンプルLIB提供へ

坂上 賢治

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大阪ガス傘下のKRIは2月26日、現行の5倍の寿命を実現する「“超長寿命”蓄電池」の開発に世界で初めて目途を付け、2025年度にユーザー求評用試作サンプル品の供給を目指す。

 

また、複数のパートナー企業と連携して、研究開発から事業化までに必要なリソースを一括提供する「蓄電エコシステム」を構築し、顧客の要望にグローバルに対応できる体制を整えた。

 

今日も蓄電池市場は、車載用・定置用などの複数の用途向けに世界で拡大し続ける。当然、日本国内でも蓄電池は、〝2030年度の温室効果ガス削減目標〟〝2050 年のカーボンニュートラルの達成〟に向けて自動車の電動化、再生可能エネルギー(再エネ)の主力電源化を達成するための最重要技術の一つとして位置付けられている。

 

そうしたなかでKRIは、先進的研究開発機能とコンサルティング機能を併せ持つ総合的な民間受託研究会社として、エネルギー・環境技術、材料技術を中心とする受託研究・分析評価を手掛けることによって、顧客事業の支援を行う。

 

また自社研究により新たな技術シーズの掘り起こし、新たな価値の創造に取り組み、蓄電池分野の受託研究開発事業の拡大に取り組んでいる。

 

今回、取り組む“超長寿命”蓄電池の開発技術では、ノーベル化学賞受賞者の吉野彰氏が提唱する「超長寿命化」に沿って、KRIの「超長寿命化コンセプト」に賛同する企業と一緒に「材料・電極・電池」「診断・運用」の2側面から「超長寿命化」について議論・開発を進めてきた。

 

この結果、正極にリチウムを含む酸化物、負極に炭素材料を用いた“超長寿命”リチウムイオン電池(LIB) 基盤技術の完成・目標到達に目途が得られたことから、2025年度から10Ah(400Wh/L前後/概ね電動バイクに搭載する程度の容量)のユーザー求評用サンプルの供給を開始する予定だ。

 

なお、これには今年2月に子会社化したエス・イー・アイ(SEI)の試作実証技術の活用を想定しているという。同プロジェクトに於いては最終的に、電気自動車に搭載されている従来の30kWhの電池寿命(例えば保障16万km)を5倍以上にすることを目指す。

 

一方で「蓄電エコシステム」では、従来からKRIでは電池技術者、材料技術者、分析技術者、調査専門員が連携し、蓄電池の研究開発をサポートする「ワンストップサービス」を実施してきたが、蓄電市場が成熟するにつれ、顧客からの要望が多様化し、課題も高度化する中、KRI単独では対応できない事案もある。

 

そこで「蓄電エコシステム」のテーマでは高度分析・解析、試作実証、少量生産、データ解析・製品実装などの各分野で高い技術を有する外部企業、研究機関と連携し、研究開発から事業化までに必要なリソースを一括提供する「蓄電エコシステム」を構築。既にグローバルに対応できる体制を整えた。

 

その一例としては、高度分析・解析は東レリサーチセンター、電極・電池・システム試作実証はエス・イー・アイ (2月に子会社化)およびエナックス、システム設計はマイクロ・ビークル・ラボ、計測の分野では東京精密、さらに蓄電池システムからのリアルデータ解析、電池状態推定、余寿命診断などを基礎としたシステム運用技術の実装開発は宇部情報システムと連携していく構え。

 

1. 蓄電池の超長寿命化技術のイメージ
・「材料・電極=電池開発」で、KRIコンセプト(下図)に賛同して頂いた複数のメーカー様と共同で開発中。

 

 

・加えて「診断・運用技術」で、KRIが持つ劣化診断、寿命推定の知見に基づき、データ・モデル・経験を融合させる解析技術を利用して開発中。

 

2. 「蓄電エコシステム」のイメージ
・高い技術をお持ちの外部企業さま、研究機関さまとの連携・提携により、研究から事業化までに 必要となるリソースを一括提供出来る体制を構築。

 

 

・今後はさらにユーザー企業様との連携を推進し、蓄電池ビジネスの発展に向けてグローバルに対応できる体制を目指す。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。