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2024年2月26日【IoT】

ネクスティ、エヌビディアGPUの実証環境を提供

松下次男

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写真左から、ジーデップ・アドバンスの飯野匡道CEO、ネクスティエレクトロニクスの柿原安博社長、エヌビディアの大崎真孝日本代表

 

豊田通商グループのエレクトロニクス商社、ネクスティエレクトロニクス(東京都港区、柿原安博社長)とジーデップ・アドバンス(東京都中央区、飯野匡道代表取締役CEO)は2月26日、モビリティ分野向けに最新のエヌビディア(NVIDIA)テクノロジーのトライアル環境を4月1日から共同で提供開始すると発表した。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

提供するサービスは生成AI(人工知能)を含むプロダクショングレードのAIアプリケーションの開発・展開をユーザーが試せるPoC(概念実証)環境サービス「GPUアドバンスド・テスト・ドライブ(GAT)」。

 

自動運転をはじめとしたモビリティ分野の進化に対し、AI開発を促進する環境サービスを構築し、提供するものだ。

 

GATは「エヌビディア DGX H100」および「エヌビディア AI エンタープライズ」 ソフトウェア プラットフォームで構成されたエヌビディアの超高速最新「GPU アクセラレーテッド システム」を利用する。

 

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東京都内で記者会見した柿原社長はこうしたサービスを展開する狙いについてモビリティ分野では「ソフトウエア・ディファインド・ビークル(SDV)時代の到来により、ソフトウェア主導の開発が高まっている」としたうえで、AIは「自動車のあらゆるサービス、開発、製造工程で使用されている」と強調した。

 

いまやAI開発に欠かせないデータセンター向けのGPU市場は年々膨らんでおり、グローバルの市場規模は5兆6千億円(2023年)を超える。エヌビディアはこの市場で98%のシェアを独占する。他社も追随するが、当面、エヌビディアの圧倒的優位は変わらないと見られている。

 

一方、モビリティ分野をみても、SDV時代の到来とともに、競争力の源泉となるAI開発力のインフラ・GPUサーバーへの投資は重要となっており、2019年頃から欧米企業を中心に急速に自社導入が進んでいるという。

 

柿原社長はとくに生成AI以降の、導入企業が加速していると述べ、自動運転技術分野でも生成AIを活用しカメラなどで制御するテクノロジーが増えているとした。

 

これに対し、日本のモビリティ企業はGPUの投資規模が低く、取り組みが遅れていると話す。

 

提供するトライアル環境のGATはGPU導入段階、拡張段階、シミュレーションベンダーなど様々なケースに対応し、利用者ニーズに最適で、最新システムを複数用意する。

 

共同提供する2社の役割はネクスティ エレニクスが営業、データセンターの運営、ソフトウェア開発を、ジーデップ・アドバンスがエヌビディア DGX システムおよびソフトウェアの調達、導入、運用支援、GPU アクセラレーテッドAIシステムの設計、構築、運用支援を担当する。

 

AIは自動運転、車室内エンターテイメント、バッテリーマネージメントなどのサービス面のほか、モビリティ製品の開発、製造工程、さらにスマートシティなど多様な分野に応用されている。

 

トライアル環境の提供は1週間単位ごとに占有可能で、最長6カ月使用可能。また、期間によらず最初の1週間は無料で提供する。トライアル環境はトヨタグループが使っている高度なセキュリティ機能を備えた信頼性の高いネットワークで、重要なデータが保護されるとした。

 

柿原社長によると、最新GPUのクラウド上のPoC環境は「使用までの待ち時間が長くなっていると聞いている」と述べるとともに、GPU製品についても調達に時間がかかっているのが実態だ。

 

これに対し、今回提供するGATはLLMLLM(大規模言語モデル)、デジタルツイン、高精度CA(コンピューター利用の工学支援システム)など利用者ニーズに最適で、最新の高性能GPUトライアル環境を複数用意するほか、GATの検証環境は最新のDGXシステムのリリースに合わせてアップデートする。

 

さらに豊富なネクスティ エレクトロニクスオリジナルAI評価環境を手軽に試せる環境を構築し、仮想環境を用いないベアメタル物理サーバーを期間占有で利用できるとともに、 機密情報を安心してアップロードできる高セキュア回線のデータセンターでの運用できるのが強みという。

 

写真左から、ネクスティエレクトロニクスの柿原安博社長、ジーデップ・アドバンスの飯野匡道CEO、エヌビディアの大崎真孝日本代表

 

記者会見に同席した大崎真孝エヌビディア日本代表兼米国本社副社長はモビリティ分野に特化した取り組みについて「世界的にも珍しいケース」としたうえで、両社の取り組みは「日本の産業界全体にも大きな影響を及ぼすだろ。連携していきたい」と述べた。記者との質疑は次のとおり。

 

――サービスのどのような形になるのでしょうか。

 

「基本的に、サーバーで提供し、クラウドで使うものよりは大きくならず、料金体系もそれよりは安くなる。一週間の使用も可能だ」

 

――最初の一週間は無料としているが。また期間を最長6カ月としているのは。

 

「最初1週間はアアプロードに期間としているため。そのあとしっかりと検証してほしいと考えているためです。また、最長6カ月としているのはリソースが限らており、自社投資を行う判断期間、タイミングと考えているためです。さらに長い期間、または大規模に試したいというところについてはエヌビディアのクラウド環境をお勧めすることになるでしょう」

 

――モビリティ分野に特化するといっても、自動車メーカーからティア1、それに

 

MaaS領域など幅広い。主として、どの領域をターゲットにするのでしょう。
「すべてのモビリティ分野が対象です。系列を問わず、日本全部のモビリティ企業です」

 

――モビリティ企業に特化した狙いは。

 

「日本で最大の産業であり、すそ野が広い。こうした中で、技術の進化とともに、知見が集まり、エコシステムが構築でき、その結果として産業クラストとしての広がりが期待できるでしょう」

 

――GAT売り上げの目標があればお聞かせください。

 

「3年後、2社で100億円を目指す計画です」

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。