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2024年1月30日【IoT】

NTTの「IOWN」、国立法人NEDOの開発事業に採択

坂上 賢治

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オール光ネットワーク+光電融合デバイスへの参画でIOWN事業が加速化

 

日本電信電話(NTT)のIOWN事業(アイオン/Innovative Optical and Wireless Network)が1月30日、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「ポスト5G 情報通信システム基盤強化研究開発事業」の実施企業に採択された。なお同事業は、光電融合デバイス(半導体の光デバイス化)を開発する取り組みにあたる。

 

加えて以前からNTT は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT) の 「Beyond5G 研究開発促進事業」と「革新的情報通信技術(Beyond 5G<6G>)基金事業」に参画しており、今回の採択によって〝ネットワーク分野〟と〝先端半導体分野〟双方の研究開発プログラムに採択されることとなった。

 

この複数の事業参画を受けてNTT は、「共同提案者並びにIOWN Global Forum参加のパートナーと共に、IOWNの研究開発を加速させ、IOWNの事業化に取り組んでまいります」と語っている。

 

そもそもNTTは、既存の電子計算機を含むIoTインフラの限界を超えるべく、電力によって動く端末と光通信との融合を目指すIOWN構想を打ち出してきた。対して日本政府も、近年の〝半導体・デジタル産業戦略〟の中で「光電融合等ゲームチェンジとなる将来技術」の可能性に期待を寄せていた経緯がある。

 

つまり今回のNEDOの決定により、NTTが既存のネットワーク技術に加えて、先端半導体の分野でも政府開発事業を支援する枠組みとなり、その結果、長年NTTが温めていた次世代ネットワーク構想IOWNの実用化に向けた動きが本格加速されることになった。

 

ちなみにそんなIOWNとは、電気と光を融合する次世代の情報通信基盤を指すもの。2019年にNTTが同構想を打ち出した。その鍵は、既存の半導体デバイス環境下で、膨らみ続ける消費電力量の増大がある。

 

例えば昨今のAI研究に於ける飛躍的な電算能力の伸びに関して、来たる2045年に〝AIが人間の能力を超えるシンギュラリティが到来する〟という説が、まことしやかに語られる時代となっている。しかしその真意を語る以前に、そもそも電算機の能力が、人間を超えるには膨大な電力が必要だ。

 

またそれ以前に、既存の電算機は電気は発熱し易い構造であるため、電算処理がより高速になれば消費電力増加による遅延も発生しかねない。

 

一方でIOWNは、現時点で既に通信領域で実用化されている光技術であるが、それを電算処理にも取り入れること(電気信号から光信号に変える)で、デバイスの消費電力を100分の1に抑えるだけでなく遅延自体を抑制。通信容量も125倍にになるという。

 

つまり日本政府はNTTを支援していくこで、今後、電算処理に光技術が入っていくことを推し進めて、AIを含む電算処理の世界でゲームチェンジを起こす可能性に賭けている。

 

なお上記の採択によるNTTと共同提案者(NTT イノベーティブデバイス、 古河電気工業、 NTTデバイスクロステクノロジ、新光電気工業、キオクシア、日本電気、富士通)の研究開発の概略は以下の通り。

 

「ポスト 5G 情報通信システム基盤強化研究開発事業」公表日:2024年1月30日

 

加えて先の通り、Beyond5Gに向けた情報通信技術戦略 情報通信審議会 中間答申で「オール光ネットワーク技術」が研究開発戦略の重点分野となっており、こちらも共同提案者(富士通、古河電気工業、三菱電機、日本電気、NTTドコモ、NTTイノベーティブデバイス、住友電気工業)と共に以下の研究開発に取り組んでいる。

 

「Beyond5G 研究開発促進事業(一般型)」公表日:2022年7月8日

 

「革新的情報通信技術(Beyond 5G<6G>)基金事業」公表日:2023年11月6日

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。