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2023年4月28日【IoT】

パナソニックが大阪駅前に空調関連の新拠点を開設した狙い

山田清志

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ソリューションズ ゲート オオサカ ウメダ

 

パナソニックは4月28日、人工知能(AI)やクラウド技術を活用した空調関連サービスを開発する新拠点を大阪・梅田に開設すると発表し、報道陣に公開した。空調機器をインターネットに繋げ、さまざまなデータを収集することで、運転状況の可視化や遠隔操作などの管理効率化はもちろん、使用環境に応じた自動制御を行い、省エネルギーをサポートする。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

フロアをカフェエリアなど5つのエリアに分割

 

「ソリューションズ ゲート オオサカ ウメダ」と名付けられた新拠点は、JR大阪駅前のヒルトンプラザウエストオフィスタワーの9階にある。5月8日からの稼働で、室内には天井埋込型ジアイーノを設置して安心・安全な業務空間を演出する。

 

これまで大阪市門真市と滋賀県草津市にあった開発拠点を集約した。リモートワークなどの多様な働き方に対応する一方で、チームメンバーがリアルに集まり、事業アイデアの議論やコミュニケーションを促進する協業エリアなどを設け、ウィズコロナに即した質の高い対話と個人の集中を引き出す環境を整備したそうだ。

 

ソリューションズ ゲート オオサカ ウメダ

 

フロア(477平方メートル)はハリケーン・カフェ(カフェエリア)、カンバセーション・ストーム(ミーティングエリア)、ゲイル・ワークショップ(コミュニケーションエリア)、フリーズ・ガーデン(リラックスエリア)、カーム・ラボ(集中エリア)の5つのエリアに分けられている。

 

カフェエリアは、エントランスに近く、入り口から新しい風が吹き込む場所をイメージし、社外の人や社員が集い、ハリケーンのうねる風のように活発なコミュニケーションを促すエリアとのことだ。中央に大きなテーブルを配置し、コーヒーメーカーなどがあるキッチンスペースを設けている。さらに、天井はスケルトン仕様になっていて、パナソニックの空質空調関連機器が設置してある。

 

ミーティングエリアは、机や椅子を組み合わせることによって、少人数から大人数の会議ができるようになっている。66インチのディスプレイを活用して、全員での情報共有やオフィス運営上の共有情報の発信などができる。

 

パナソニック空質空調社の右近貞治常務

 

コミュニケーションエリアは、ハイテーブルや上下可動式テーブルなどで会話がしやすい環境を整えた。リラックスエリアは、9階からの眺望が見られるように座席を配置し、床の素材やライティングによって他のエリアと切り分け、気分転換やアイデアの熟考をしやすいようにした。集中エリアは、効率的な開発ができるように全席にマルチディスプレイ環境を整備した。

 

30年までに有償契約数3万5000件を目指す

 

この新拠点の開設に合わせて、4月に「カスタマーサクセス部」を立ち上げた。これまで培ってきたデータ分析やAI技術を活かし、機器の最適化やAIによる自動制御の提案を行うほか、保守メンテナンス、機器の更新まで顧客と長期的な関係を構築し、ソリューション事業拡大を目指すための組織だという。

 

パナソニック空質空調社ソリューション事業開発センターの高崎真一センター長によると、国内外でクラウド接続されたパナソニックの空調機器は2017年の4000台から2023年には100万台と250倍に増加しているとのことだ。

 

パナソニック空質空調社ソリューション事業開発センターの高崎真一センター長

 

これまで遠隔点検や空質の見える化などのサービスを提供してきたが、さらにそのサービスを拡大しようというわけだ。そして、ゆくゆくはプレミアムプランと称して、有償のサービスを提供しようと考えている。法人を中心に2030年までに国内の有償契約数3万5000件を目指すという。

 

そのために、AI・クラウド人材を2025年までに100人規模で増員を行う。現在、新拠点には89人が所属しているが、それを189人にするわけだ。「パナソニック空質空調社で働くことに興味を持ってもらうために各種発信を行って認知度を高めていく。フルリモートで全国どこからでも勤務できる環境を整備して、募集の裾野を広げていく」と高崎センター長。今回、大阪駅前のビルに新拠点を設置した最大の狙いは、IT人材の確保と言っていいだろう。

 

「空質空調社は、社会からの要請に対し、新たな価値とサービスの提供を続けていく。カーボンニュートラル、省エネ、BCP貢献、安心・安全、活力の創出といった価値を機器とサービス、具体的には換気空調機器に加えて、エネルギーマネジメント、遠隔監視、空質のマネジメントなどのソリューションでお客様への提供価値の最大化を目指していく」と空質空調社の右近貞治常務は話していた。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。