NEXT MOBILITY

MENU

2024年4月30日【CASE】

理研、富岳にIBMの次世代量子システムを連携

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

「富岳」と同じ建物に設置される量子システムが米国外で初稼働へ

 

IBMは4月30日、自社の次世代量子アーキテクチャーおよび最も高性能な量子プロセッサーを神戸市の理研計算科学研究センターに導入。専有利用権を提供する計画について理化学研究所(理研)と合意した。これはスーパーコンピュータ「富岳」と同じ建物に量子コンピュータが設置される初の事例となる。

 

この合意は、経済産業省傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)がファンディングする「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」の「量子・スパコンの統合利用技術の開発」プロジェクトにおいて締結されたもので、理研は当該プロジェクトの実施に於いて、IBM Quantum System Twoを専有利用する。

 

同プロジェクトでは、理研と共同提案者のソフトバンク、理化学研究所の共同実施者の東京大学、そして大阪大学は、日本の科学とビジネスを発展させるというビジョンのもと、最先端の量子コンピュータとスパコンを連携するためのシステムソフトウェア、プラットフォームを構築。ポスト5G時代で提供されるサービスとして展開する技術としての有効性を実証する。

 

また、当該プロジェクトとは別に、IBMは量子コンピュータとスーパーコンピュータというヘテロジニアスな統合コンピューティング環境でのワークフロー実行のための、ミドルウェアや最適な量子回路を生成・実行するソフトウェアの開発を行う予定。これらの新機能により、アルゴリズム品質や実行時間の改善が期待されることになる。

 

合意に基づき導入されて、「富岳」と連携するIBM Quantum System Twoには、IBMは「量子を中心としたスーパーコンピューティング」という次世代の量子コンピューティング・アーキテクチャーの導入を計画している。

 

これは、スケーラブルな極低温インフラストラクチャーやモジュール式の量子ビット制御機器、スケーラブルなクラシック・サーバー、先進的なシステムソフトウェアを組み合わせ、従来型のHPCサービスと並列する形で量子コンピューティング・サービスを提供するもので、量子を中心としたスーパーコンピューティングというIBMのビジョンの中核をなす構成要素になるという。

 

量子を中心としたスーパーコンピューティングは、量子コンピューティング・リソースと従来型コンピューティング・リソースが統合され、並列化されたワークロードの中で協働し、これまで不可能であった計算を実行することによって実現されるもの。

 

量子を中心としたスーパーコンピューティングは、量子コンピューティングがアーキテクチャーに於いて不可欠となる従来型HPCの未来に向けたIBMのビジョンであり、IBM Quantum System Twoはこのビジョンに向けた重要な構成要素となっている。

 

IBM Quantum System Twoには、これまでのIBM Quantumプロセッサーの中で最高の性能指標を実現するアーキテクチャーを備えた新しい商用量子プロセッサー・シリーズの第1号となる、133量子ビットのIBM Quantum Heronプロセッサーが搭載される予定です。IBM Quantum Heronプロセッサーは、IBM Quantumプロセッサーの中でエラー率が最も低く、これまで最も高性能であったIBM Eagleプロセッサーと比較して5倍の性能向上を実現したプロセッサーで、現在はクラウド上で利用が可能です。

 

こうした取り組みに計算科学研究センター量子 HPC 連携プラットフォーム部門 部門長の佐藤三久博士は、「最先端の NISQ の量子コンピュータは今、量子ビット数の増加と忠実度の向上に伴い、実用的な段階に踏み出しつつあります。

 

HPC (High Performance Computing) の観点から見ると、量子コンピュータは、従来スパコンで実行されてきた科学アプリケーションを高速化し、スパコンではまだ解くことのできない計算を可能にする装置です。

 

理研の科学の総合力と富岳をはじめとする最先端のスパコン開発及び運用の経験を生かして、量子・HPC 連携コンピューティングのためのシステムソフトウェアの開発に取り組んでいきます」と述べた。

 

対してIBMフェロー 兼 IBM Quantum バイス・プレジデントのジェイ・ガンベッタ氏(Jay Gambetta)は、「スーパーコンピュータ富岳に初めて量子システムを直接連携させるIBMと理研の合意は、量子を中心としたスーパーコンピューティングによって定義される未来に向けた行程において記念碑的なマイルストーンとなります。

 

この取り組みにより、従来型のコンピューティング・リソースを使用して量子計算と量子通信を組み合わせるモジュール式で柔軟なアーキテクチャーの推進に向けて業界を前進させ、両方のパラダイムが連携してますます複雑化する問題を解決できるようにします」と話している。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。