中東バーレーン・インターナショナル・サーキットで１１月１２日、２０２２年シーズンのＦＩＡ世界耐久選手権（ ＷＥＣ ）最終戦・バーレーン８時間の決勝レースが行われた。

同最終戦で、TOYOTA GAZOO Racing（ ＴＧＲ ）のGR010 HYBRID ７号車（ 小林可夢偉選手、マイク・コンウェイ選手、ホセ・マリア・ロペス選手 ）が優勝。

続く２位にアルピーヌと同点首位で今大会を迎えた８号車（ セバスチャン・ブエミ選手、ブレンドン・ハートレー選手、平川亮選手 ）がフィニッシュし、ハイパーカーのマニュファクチャラー部門とドライバーズ部門の世界チャンピオンを獲得した。

ブエミ選手とハートレー選手はこのチャンピオン獲得により、世界耐久選手権及びその前身である世界スポーツカー選手権のトップカテゴリーを含めた歴史の中で、初めて３回のチャンピオンを獲得したドライバーとして記録に名を残す事となった。

また、ブエミ選手、ハートレー選手と共に６月のル・マン２４時間を制した平川選手は、トップカテゴリー参戦初年度にして、日本人としては３人目となるＷＥＣのチャンピオンに輝いた。

結果、ＴＧＲは現行ＷＥＣシリーズに参戦して１０シーズンで５度目のダブルタイトル獲得。今年はル・マン２４時間レースの５連覇、また富士スピードウェイでの８勝目も達成した。

併せてＴＧＲは、ＦＩＡの８つある世界選手権のうち世界耐久選手権（ ＷＥＣ ）、世界ラリー選手権（ ＷＲＣ ）、今季より新たに行われているダカールラリーを第１戦とした世界ラリーレイド選手権（ Ｗ２ＲＣ ）の３つの選手権でチャンピオンを獲得した。

さて肝心の８時間の決勝レースは、現地時間午後２時に強い日差しに照らされ、気温３５度という暑さの中で開始され、８号車のスタートを担当したブエミ選手がポールポジションから序盤戦をリード。

３番手からスタートしたロペス選手の７号車は、アルピーヌに一旦ポジションを奪われたが３周目には抜き返して３位のポジションを取り戻した。

一方８号車のブエミ選手がプジョー９３号車からの追撃を凌いでいる間に、３位に上がった７号車のロペス選手もトップ２から離されることなく追走。３台は、６秒ほどの差で１時間経過後の給油ピットへ。このピット作業でプジョー９３号車をかわしたロペス選手の７号車は、首位の８号車に続く事に成功した。

その後の２時間を経過時点で、３位で追っていたプジョー９３号車がトラブルに見舞われ、レースはフルコースイエローに。このタイミングで２台のGR010 HYBRIDはピットへ向かい、８号車はハートレー選手へ、７号車はコンウェイ選手へとドライバー交代を実施。

コースに戻った２台は、１秒以内の差で首位争いを展開。日没を迎えてコースが闇に包まれてもテール・トゥ・ノーズでのバトルが続いたが、３時間経過時点で７号車のコンウェイ選手が８号車をかわして首位に立つ。

ドライバーチェンジ後、首位を行く小林選手の７号車は徐々に後続との差を広げ、５時間が経過した時点で２位との差は１５秒まで拡大。次の１時間ではその差を倍増させていく。

レースが残り４５分程というタイミングで、７号車はコンウェイ選手、８号車はハートレー選手がチェッカーを受ける最後のドライバー役を担い。７号車が２４５周目にトップでチェッカーを潜り、８号車は４５.４７１秒遅れの２位でフィニッシュした。

小林可夢偉選手（ チーム代表 兼７号車 ドライバー ）「レースでは１-２フィニッシュを果たし、セブ、ブレンドンと亮がドライバーズチャンピオンを獲得、チームもマニュファクチャラーズタイトル獲得と、このレースでの目標全てを達成出来ました。この結果には本当に満足しています。

今日も、シーズン中もずっと、チームとドライバー全員が素晴らしい仕事をしてくれました。日本の仲間や、シーズンを通して応援してくれたパートナーの皆様にも感謝いたします。

今年は激戦が繰り広げられたシーズンでしたが、最高の結果で締め括る事が出来ました。７号車のドライバーとしても、最終戦を勝利で終えられて最高の気分です。マイクとホセは力強くレースを戦い、チームクルーも今年１年同じように、良く戦ってくれました。

７号車としてはドライバーズタイトルを逃したのは残念ですが、８号車はチャンピオンに相応しい戦い振りでしたし、彼らのためにも良かったです。シーズン中はいつも、チームとドライバー共に素晴らしいチームスピリットで本当によく動いてくれました。この瞬間を全員で祝いたいと思います」。

マイク・コンウェイ選手（ ７号車 ドライバー ）「レースで勝ち、１-２フィニッシュの一翼を担えて最高の気分です。素晴らしい仕事をしてくれた可夢偉、ホセと7号車のチームクルー全員，そしてもちろん、ドライバーズチャンピオンを決めた８号車にも祝福を贈ります。

８号車は本当に安定していて、シーズンを通して強かったので、今年のチャンピオンは間違いなく彼らです。今日のレースはとても順調で、８時間の大半をチームメイト同士で接近戦を繰り広げる事になりました。８号車はしぶとく追い縋って来ましたが、可夢偉が引き離してギャップを広げてくれたので、その後は快適でした。

我々７号車は今日、全てが上手く行きました。クリーンなレースを戦い、ピットストップも速く、戦略も適切でした。マニュファクチャラーズタイトルを獲得出来た事は素晴らしいですし、日本とドイツ・ケルンの仲間たち、そして、支えてくれた全てのみんなのお陰で勝ち取る事が出来たタイトルです」。

ホセ・マリア・ロペス選手（ ７号車 ドライバー ）「８号車の３人は本当にシーズンを通して強く、チャンピオンに値する戦い振りでした。日本とドイツ・ケルンのチームメンバー、そして、この成功のために支えてくれた全ての人たちとパートナーの皆様へも祝福を贈ります。

競争の激しいシーズンでしたが、目標を達成する事が出来てとても満足しています。今日のレースは、スタートから本当に楽しかったです。GR010 HYBRIDはとても快調でプッシュ出来ましたし、他のハイパーカーとのバトルも楽しめました。

マイクと可夢偉も彼らのスティントで素晴らしい走りをしてくれて、最後に私が乗る時には、充分なマージンが出来ていました。我々は最高のチームで、その一員である事を誇りに思います。このチームで共にこの様な瞬間を祝えるというのは本当に幸せです」。

セバスチャン・ブエミ選手（ ８号車 ドライバー ）「今シーズンの世界チャンピオンになれた事が信じられない気分です。我々８号車は全てのチャンスを最大限に活かし、ル・マン２４時間の勝利とチャンピオンという２つを達成出来ました。

亮は今年ドライバーとして加わったばかりなのに、その初年度にチャンピオンを勝ち取ったのは特に称賛に値します。いきなりハイパーカーをドライブし、強力なライバルとのバトルを繰り広げるというのは容易な事ではないのですが、彼はチームメイトとして信じられないような能力を見せてくれました。

また７号車も常に手強いライバルであり、今日のレースで判るように、彼らとの戦いは大変でした。我々８号車も勝ってタイトルを決めたかったですが、スタートこそ良かったものの、その後は勝つには十分ではなかったと言う事です。今はチャンピオン獲得のこの瞬間を祝い、後は確実にエキサイティングなものになる来シーズンへ向け意識を切り替えます」。

ブレンドン・ハートレー選手（ ８号車 ドライバー ）「ここバーレーンでの目標を達成し、ダブルタイトルを勝ち取る事が出来て本当に嬉しいです。まだチャンピオン獲得の実感は湧きませんが、すぐにその瞬間は来るでしょう。

シーズンを通して最高のサポートで、チャンピオンを勝ち取り、ル・マンで勝てるGR010 HYBRIDを用意してくれたチームの皆に感謝しています。今日の我々の目標はシンプルで、アルピーヌよりも上位でフィニッシュしてタイトルを獲得する事であり、勝つためにリスクを冒す事は出来ませんでした。

７号車のレースペース良く、勝利に値する走りでした。彼らは素晴らしかったです。７号車はシーズンを通して最大のライバルであり、熾烈な戦いを続けて来ましたし、もちろんアルピーヌも手強い相手でした。我々は懸命に戦い、このタイトルを勝ち取りました。このタイトルはチーム全体で勝ち得たものです」。

平川亮選手（ ８号車 ドライバー ）「今日、我々の望んだ全てを達成する事が出来ました。とても嬉しいですし、この瞬間を、本当にその結果に値する働きをしたチームと共に祝いたいと思います。ただ、まだ実感はなく、慣れるのには時間が掛かりそうです。

ＷＥＣをハイパーカーで戦うというのは、全て私にとって初めての経験で、最初は大変な挑戦でした。私自身の参戦初年度となった今シーズン、ル・マンで勝ち、また世界チャンピオンになれるとは全く予想していませんでした。

それだけに、こんな私を支えてくれたチームとチームメイトに本当に感謝していますし、このシーズンを戦ったことで成長できたと思っています。

今日は、チャンピオン獲得の条件が判っていただけに、とにかくリスクを冒さない事が重要であり、我慢のレースでした。私の役割は、良いポジションで自分のスティントを走り抜く事であり、それは達成出来たので満足しています」。