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2023年12月11日【イベント】

日本初、ドローンによるレベル4飛行で医薬品輸送を実証

坂上 賢治

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実証イメージ

 

ACSL、KDDI、KDDIスマートドローン、日本航空、東日本旅客鉄道、ウェザーニューズ、メディセオは12月14日から12月20日まで、東京都西多摩郡檜原村で日本で初めて医薬品をドローンのレベル4飛行(有人地帯における補助者なし目視外飛行)で輸送する実証を行う。

 

この実証は、東京都の「ドローン物流サービスの社会実装促進に係る実証プロジェクト」に基づき、都内に於けるドローン物流サービスの早期の社会実装を目指すもの。同輸送に日本初第一種型式認証を取得したACSLの「PF2-CAT3」が使われる。

 

 

今回の檜原村に限らず地域の診療所や病院では、オンライン診療を行った際の処方薬などの医薬品を郵送するケースがあるが、近年は物流分野の人手不足が社会課題となっており、ドローンの利活用に期待が高まっている。

 

そうした社会の要請を背景に、2022年12月に施行された改正航空法でドローンのレベル4飛行が解禁となり、制度上は民家の上空など有人地帯を飛行できるようになっている。

 

今後、仮にドローン輸送サービスが実現すると、輸送遅延が致命的となる医薬品にとって、道路の渋滞時や災害時でも交通状況に左右されずに輸送することができる。

 

実証では、1日限りではなく1週間の運用を行うことで、実運用に向けた技術面や制度面及び、運用面の課題を抽出し、ドローン輸送サービスの社会実装を目指す構えだ。

 

飛行ルート

 

今回は、12月の平日日中帯に医薬品輸送サービスを想定したドローンのレベル4飛行作業を行う。より具体的には、檜原診療所(東京都西多摩郡檜原村三都郷2717番地)と特別養護老人ホーム 桧原サナホーム(東京都西多摩郡檜原村3791番地4)を結ぶ、有人地帯の上空を含む飛行ルートを設定。物流用ドローン「PF2-CAT3」での自律飛行による医薬品輸送を行う。

 

「PF2-CAT3」を提供したACSLは、航空法等の一部を改正する法律が昨年12月5日より施行され、無人航空機(ドローン)の型式認証制度が開始されたこと受け、いち早くレベル4に対応したドローンの開発を行ってきた。

 

「PF2-CAT3」は、先の2023年3月13日に日本で初めて国土交通省より第一種型式認証を得て、3月15日には第一種機体認証を取得した。また3月24日には、PF2-CAT3による日本で初めてのレベル4飛行を。2023年11月には2事例目の飛行を成功させいる。従って同実証は、PF2-CAT3を用いたレベル4飛行での日本国内3事例目となる。

 

実施日時(予定)
2023年12月14日から12月20日までの平日
午前11時ごろから午後4時ごろまで、1日最大3往復
※実施日程および飛行時刻については、作業準備状況および当日の天候の状況を勘案して決定する。

 

飛行ルート
檜原診療所~桧原サナホーム(往復約4.8km)

 

実証イメージ

 

使用機体/検証項目
ACSL社製「PF2-CAT3」
PF2をベースとした機体で第一種型式認証を取得済の唯一の機体。
全長(プロペラ含む): 1,174mm x 1,068mm
高さ :601mm
最高飛行速度 :水平 10m/s
最大航続時間 :17.5分(最大離陸重量時)
最大ペイロード :1.0kg
最大離陸重量(ペイロード含む) :9.8kg

 

検証項目
・レベル4飛行許可取得に求められる体制および実運用上の課題抽出
・医薬品配送ガイドライン(該当項目へジャンプします注4)対応に求められる体制および実運用上の課題抽出

 

各社の役割は以下の通り

 

KDDI :プロジェクト全体取りまとめ
KDDIは2021年度に都内で初の有人地帯におけるドローンのフードデリバリーや医薬品配送を実施。2022年にはドローンによる永代橋など複数の大橋を横断する医薬品配送実験や実施。遠隔自律飛行による医療物資輸送も1カ月間行い、2023年には都内でレベル4飛行を見据えたドローンの長期実証を行っている。

 

KDDIスマートドローン :スマートドローンプラットフォームの提供/レベル4飛行における機体運航業務
KDDIスマートドローンは、4G LTEなどのモバイル通信を用いてドローンを制御することで、安全な遠隔飛行・長距離飛行を実現するサービスを構築・展開している。

 

日本航空:ドローン物流ビジネスの策定・評価検証
航空運送事業で培った知見と技術を活かし、飛行モビリティの社会実装を目指す。2023年度には奄美群島でドローン事業を開始、安全かつ円滑なオペレーションを支援するべくプラットフォーム構築を進めている。

 

東日本旅客鉄道 :ドローン物流ビジネスの将来的な実装場所にかかる検討支援
JR東日本は、オフィス、商業、MICE施設などを含む街中へのドローンの実装を目指し実証を進めている。

 

ウェザーニューズ :安全運航のための気象データ提供および助言
ウェザーニューズは、創業者が1970年の海難事故を経験し「船乗りの命を守りたい」という想いが切っ掛けとなった創業。空・海を問わず、これらの安全運航に気象情報は欠かせないため、累積38年間のノウハウを活かし運航を支援する。

 

メディセオ :ドローンを利用した医薬品配送手順の策定および検証
メディセオは「医療と健康、美」を事業領域とするメディパルグループで活動。サプライチェーン全体の最適化を目指すには、無駄なく、顧客満足度が高く、有事にも強い物流が不可欠であるためイノベーションに取り組んでいる。

 

協力:
檜原村
檜原診療所
桧原サナホーム
檜原森のおもちゃ美術館
FUREAI GLAMPING & BBQ
檜原村木材産業協同組合

 

今後の展開
本実証の終了後、2023年度中にドローンが自動で離着陸できるドローンポートを導入し、安全性や運航業務省人化の検証など、ドローン物流サービスの実装に向けてさらなる実証を行う予定。

 

その際は今回の実証によるサービス検証と併せて、恒常的なドローンの飛行に必要な安全運航体制やビジネスモデルの検討を重ねる。

 

また、2024年度には都心部でのレベル4飛行を見据えた長期的なドローンのサービス実証を行う予定。将来的には、ドローンを活用したまちづくりの実現に向け、物流をはじめとする多様なサービスの展開を目指し、実証を進めていく。

 

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。