NEXT MOBILITY

MENU

2024年3月7日【トピックス】

公取委、日産自動車に対して勧告

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

公正取引委員会( 公取委 )は、日産自動車( 神奈川県横浜市西区 )が「割戻金」の名目で下請け業者に代金の引き下げを迫っていたとして3月7日、下請法違反(減額の禁止)を認定。再発防止や順法体制の整備を求める勧告を出し、過去最高となる30億円の減額も認定した。なお日産自動車は、減額分を既に下請け業者へ支払い、割戻金の運用も廃止したという。

 

より具体的に公取委は、少なくとも2021年1月から2023年4月の期間、日産自動車が取引先企業36社に対して事前に決めた支払金額を一方的に減額した事柄に対して調査を行ってきたところ、下請代金支払遅延等防止法第4条第1項第3号(下請代金の減額の禁止)の規定に違反する行為が認められたことから、標記同日、下請法第7条第2項の規定に基づき同社に対し勧告を行った。公取委が記した、その違反概要は以下の通り。

 

1.違反行為者の概要
法 人 番 号:9020001031109
名   称:日産自動車株式会社
本店所在地:横浜市神奈川区宝町2番地
代 表 者:代表執行役 内田 誠
事業の概要:自動車等の製造販売
資 本 金:6058億1373万4035円

 

2.違反事実の概要
(2−1)日産自動車は、資本金の額が3億円以下の法人たる事業者(以下「下請事業者」)に対し、自社が販売する自動車の部品等の製造を委託している。
(2−2)日産自動車は、令和3年1月から令和5年4月までの間、自社の原価低減を目的に、下請代金の額から「割戻金」を差し引くことにより、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減じていた。減額した金額は、総額30億2367万6843円である(下請事業者36名)。
(2−3)日産自動車は、令和6年1月31日、下請事業者に対し、前記(2−2)の行為により減額した金額を支払っている。

 

3.勧告の概要
(3−1)日産自動車は、次の事項を取締役会の決議により確認すること。
ア.前記2(2−2)の行為が下請法第4条第1項第3号の規定に違反するものであること。
イ.今後、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減じないこと。
(3−2)日産自動車は、今後、下請法に違反することがないよう、次の行為を行うなど経営責任者を中心とする社内遵法管理体制の整備のために必要な措置を講ずること。
ア.法務担当者による下請法の遵守状況についての定期的な監査。
イ.役員及び発注担当者に対する下請法遵守のための定期的な研修。
(3−3)日産自動車は、次の事項を自社の役員及び従業員に周知徹底すること。
ア.減額した金額を下請事業者に支払ったこと。
イ.前記(3−1)及び(3−2)に基づいて採った措置。
(3−4)日産自動車は、次の事項を取引先下請事業者に通知すること。
ア.減額した金額を下請事業者に支払ったこと。
イ.前記(3−1)から(3−3)までに基づいて採った措置。
(3−5)日産自動車は、前記⑴から⑷までに基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告すること。

 

4.業界団体に対する周知・啓発活動
自動車製造業に於いては、近年、本件と類似の違反行為が生じ、公正取引委員会が下請法に基づく勧告を行っている。また、下請法に違反するおそれのある行為についても継続して生じており、指導等の対象ともなっている。

 

公正取引委員会としては、このような状況を踏まえ、引き続き、自動車製造業における下請法違反行為に対し、厳正に対処していくと共に、改めて業界団体への周知等を通じた啓発活動を行っていくこととしている。

 

なお上記の商習慣は、公取委によると今回認定した2年間を超えて長年、習慣的に行われていた懸念があり、日産自動車側は、本件の違法性を認識していなかった可能性がある。そのため先の通り、公取委は日産自動車に対して法律順守の管理体制を整備するよう強く求めた。

 

関連ファイル
( 公取委/令和6年3月7日 )日産自動車株式会社に対する勧告について pdf文書ダウンロード( 490 KB )

 

 

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。