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2021年10月13日【イベント】

VAIO、頑丈・軽量なノートPCで再び世界に挑戦

山田清志

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VAIOの山野正樹社長

 

ソニーから7年前に不採算事業として見捨てられたVAIOが復活し、PCで攻勢をかけようとしている。10月13日にはモバイルPC「VAIO SX12」「VAIO SX14」の2機種の新モデルを発表。これらは同社にとって中間のメインストリームモデルに位置するPCで、2月に発表した50万円台のフラッグシップモデル「VAIO Z」、9月末に発表した7万円台のエントリーモデル「VAIO FL15」と合わせてすべてのカテゴリーで新製品が揃った。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

「VAIO SX12」と「VAIO SX14」

 

堅牢性など機能と性能を飛躍的に向上

 

「VAIOは2014年にソニーから独立し、この7月で満7年を迎えた。設立以来、国内市場、法人向けPCに選択と集中を行ってきた。その法人向けビジネスは弊社の成長の基盤となり、売り上げの約4分の3が法人ビジネスになるまで成長した。今後は個人向けPCも再強化していく。グローバルにも通用する製品、サービスをより多くの世界のお客に届けていきたい。それがVAIOの持続的な成長につながっていくと思う。今回発表した新製品はその序章となる」と、今年6月に社長に就任した山野正樹氏は冒頭の挨拶で力強く話した。

 

新製品はフラッグシップモデルであるVAIO Zで培った機能とデザインを継承し、サイズ、重量、堅牢性はそのままに、機能と性能を前モデルから飛躍的に向上させている。新たに採用した立体成型カーボン天板は、127cm落下試験をもクリアする堅牢性を誇る。そのほか、液晶をひねったり、ペンを挟んだりといった数十項目の独自試験に加え、アメリカ国防総省制定MIL規格に準拠した品質試験も実施し、クリアしている。

 

また、バッテリー駆動時間の長さもウリの一つになっており、内蔵するバッテリーは薄型軽量だが、最大約30時間の利用が可能だという。さらに、業界最小クラスのUSB PowerDerivery対応ACアダプターを採用しているので、持ち歩く際にもかさばらないとのことだ。重量については、SX12が約887g、SX14が約999gとなっている。

 

そのほか、コロナ禍でオンライン会議が増えたことを踏まえ、AIノイズキャンセリング機能を初搭載した。これは、AIの力で騒音などの環境ノイズだけを除去する機能で、在宅時のさまざまな生活音や屋外での雑音もカットする。しかも、マイクの集音性能を向上したステレオアレイマイクや本体前面に配置された大口径スピーカーにより、オンラインでも距離を感じることなくクリアな音声で会話ができるようになっている。

 

立体成型カーボン天板

 

キーボードについても、ストロークが1.2mmから1.5mmに深くなり、静粛で吸い付くような心地よい打鍵感を追求したという。配列については、かな文字あり・なし2シュル値の日本語配列、英語配列から選択可能で、プレミアムエディションでは黒色キートップに黒文字で刻印した「隠し刻印」を選ぶことができる。

 

もちろんOSは最新のWindows11がプリインストールされ、定番USB端子が左右に1つずつ、2系統のUSB Type-C端子、HDMI端子、そして有線LAN端子も搭載されている。価格についてはオープン価格だが、量販店向けモデルの想定価格はSX12が17万9700円から、SX14が19万9800円からとなる。

 

売上高が設立時の約3倍で6年連続の黒字

 

1997年に薄型でマグネシウム合金を用いたバイオレットカラーで登場したPCのVAIOは、圧倒的な存在感も示し、一世を風靡した。ソニーらしく、デジタルカメラとの通信機能など、エンターテイメント要素をふんだんに盛り込んだ。

 

その結果、VAIOシリーズの出荷台数は、1999年度約140万台から2004年度330万台、2010年度には870万台と過去最高を記録した。しかし、個性よりも出荷ボリュームを優先する戦略に打って出たため、ブランドを失墜させる結果となってしまった。おまけにスマートフォンにも押され、2013年度には出荷台数が3分の2の約560万台に減少し、917億円もの営業赤字に陥った。

 

「VAIO」の個人向けPCラインナップ

 

そこで2014年2月、ソニーの平井一夫社長(当時)が記者会見で、「苦渋の決断をした」と投資ファンドの「日本産業パートナーズ」に売却すると発表した。山野社長はその日本産業パートナーズ出身で、その前は三菱商事でITサービス本部長やシンガポール支店長を歴任している。

 

その山野社長は話すように、VAIOは国内市場、法人向けに的を絞り、その結果、2年目から6年連続で黒字決算を達成し、売上高は独立直後に比べて約3倍になった。そして、次は個人向け、海外市場というわけだ。コロナ禍で2020年度はノートPC需要が大きく増えたものの、スマートフォンやタブレットに押されている状況には変わりがない。そのなかで、具体的にどのような戦略に打って出るのか、山野社長の言動が注目される。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。