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2023年12月8日【ESG】

北米トヨタ、車載蓄電池のリサイクル網を全米に拡大

坂上 賢治

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成長するBEV市場を支えるべく蓄電池リサイクル大手のサーバ社と協業

 

トヨタ自動車傘下のトヨタモーターノースアメリカ( TMNA/Toyota Motor North America, Inc )は12月7日(米国・東部時間の7:00)、自社として炭素中立を目指していくべく、全米規模で電動車向け蓄電池の循環システム構築へと乗り出す。( 坂上 賢治 )

 

より具体的にTMNAは、北米最大の廃電池リサイクル事業者のサーバ社(Cirba Solutions, LLC/サーバ・ソリューションズ)との連携契約を同日に発表し、使用済み車載蓄電池のリサイクル網を全米に拡大していくことを明らかにした。

 

上記を踏まえTMNAとサーバ社は、双方の協力体制の下、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、バッテリー搭載電気自動車(BEV)の使用済み電池を回収するための物流網を構築。今後、時間を掛けて全米規模で車載蓄電池のリサイクル網を拡張させていく構えだ。

 

同協業で使用済み蓄電池の流通コストとCO2排出量が大幅に削減される

 

ちなみに現在TMNAは、世界規模での炭素中立を目指すべく、当初ハイブリッド車に初搭載したニッケル水素電池を皮切りにリチウムイオン電池の搭載車からBEVに至るまで多様車両を市場へ送り出しており、北米に於いても年間2万5千個の使用済み車載蓄電池を地域の販売店網から回収しているという。

 

加えてTMNAは北米に於いて、去る2000年以降、PHEVとHEVを合わせて620万台以上の電動車を販売してきた。従って今後はBEVの販売増に伴い、使用済みリチウムイオン蓄電池の回収数が着実に増加すると見込んでいる(TMNAによると、来たる2030年までに使用済みバッテリーの総量が2倍に達するという試算もある)。

 

更にTMNAは、約140億ドルを投じた新たな車載バッテリー工場のトヨタ・バッテリー・マニュファクチャリング・ノースカロライナ(TBMNC)を、2025年の本格稼動を目処に建設・拡張中であり、同拠点では最終的に5,000人以上の新たな雇用創出を生み出す構えでもある。

 

これを前提に、今回の新たな協業体制についてTMNA事業開発担当グループのバイス・プレジデントを務めるクリス・ヤング氏は、「サーバ社が持つ大規模な蓄電池リサイクルのネットワークの力を借りて、当社は、使用済み電池の回収とリサイクルの仕組みを全米規模へ拡大でき、その結果、車載蓄電池の流通コスと共に運用上のCO2排出量も削減することが可能になります。

 

この協業を通じて当社は、持続可能な車載用電池の循環型エコシステムを構築するという最終目標に近づきました」と述べた。

 

使用済み蓄電池から最大95%にのぼる重要鉱物の抽出も視野に据えている

 

なお同協業は、中西部及び東海岸地域からの使用済みの車載リチウムイオン電池の 収集・輸送・解体・処理事業全域を対象としており、収集されたこれらの使用済み電池は、オハイオ州ランカスターにあるサーバ社の施設で処理される。

 

同施設は、米国超党派によるインフラ法成立の一環として米政府のエネルギー省から8,200万ドル以上の助成金を受け、持ち前の先端技術を駆使して使用済み蓄電池などから最大95%の重要鉱物を抽出・再利用していくことができる能力を有する。

 

そこでTMNAでは、昨年2022年時に算出した使用済み蓄電池の回収・リサイクルに係る平均輸送距離を1,251マイルから582マイルにまで削減させ、物流コストを70%にまで削減できると試算している。

 

なかでも特に、昨年度では課題となっていたシンシナティのように、同協業の開始によって輸送に係る総走行距離を約94%まで大幅に削減できる場合もあるという。

 

今回、TMNAと共に使用済み車載蓄電池リサイクルの協業体制を発表したサーバ社チーフ・コマーシャル・オフィサーのジェイ・ワゴ氏は、「今回の協業は、持続可能な循環型バッテリー・サプライチェーンを構築するというTMNAの長期ビジョンに共感したことで実現したものです。

 

今日に於いて様々なタイプの電動車で幅広いラインナ ップを有するTMNAと共に大きなビジョン達成に向けて歩んでいけることを心から誇りに思っています」と語っている。

 

サーバ社概要
会社名 :Cirba Solutions, LLC 
所在地(本社) :米国・インディアナ州
代表者(CEO) :David Klanecky
設立 :1991年
事業内容 :廃電池のリサイクル(回収、選別、診断、交換、破砕・分離処理)、廃電池由来の再生材の販売

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。