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2020年6月23日【エネルギー】

自工会、自動車工業4団体による「助け合いプログラム」を始動

坂上 賢治

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 一般社団法人 日本自動車工業会(所在地:東京都港区、会長:豊田章男、以下、自工会)は、6月23日の15時からオンライン記者会見を開き、自動車産業界の中小企業を対象とした資金調達支援プログラムを実施すると発表した。(坂上 賢治)

 

これは新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、自動車関連企業に於いて高度な技術や、他では代え難い資質を持つ中小企業を対象に経営資金の調達を支援するもの。

 

そのスキームは、いわゆる〝信用保証〟の仕組みを利用したもので、総額20億円規模の資金を背景に該当企業が事業存続のための必要な経営体力を円滑に得られるよう資金繰り融資として支援する形だ。
結果、先の通り対象企業の重要技術や人材、ノウハウなどの流失・散失などを自工会を含む自動車工業4団体がバックアップすることで防いでいく。

 

 

 今プログラムが対象に据える企業は、設立主体となった自工会を含む「日本自動車部品工業会」「日本自動車車体工業会」「日本自動車機械器具工業会」の自動車工業4団体の会員企業。この自動車工業4団体が協力して会員企業への資金調達を支援する流れだが、当面は、自工会の会員企業である自動車メーカーが拠出する20億円の資金で運用が始まる。

 

支援にあたっては、参画企業から拠出された資金を自工会が三井住友銀行に預金。この20億円を担保に資金調達を希望する企業の〝資金繰りの状況〟や、〝保持している技術〟などを審査した上で信用保証を行い、実際の資金調達では該当企業の現取引先である馴染みの金融機関からスピード感を伴った融資を受けるという流れだ。

 

 なお、このような形で自動車産業団体が主体的に行う支援プログラムとしては初の試みだという。同日、4団体を代表してオンライン会見を行った自工会理事・事務局長の矢野義博氏によると、想定している対象企業は、自動車メーカーから直に支援を受け難い独立系の中小企業を想定し1案件あたりの融資保証限度は原則1億円としている。

 

またそもそもこの取り組みは、新型コロナウイルスに係る肺炎感染の拡大並びに日本政府の緊急事態宣言発令を受け、先の4月10日に自動車工業関連4団体が集い、オンラインによる共同メッセージを映像発信した ことが契機となった。

 

写真は先に実施されたコロナ禍に挑む自動車工業4団体による共同メッセージ発信の際の様子写真は先に実施されたコロナ禍に挑む自動車工業4団体による共同メッセージ発信の際の様子

 

その際、豊田章男自工会会長が共同メッセージの宣言上で語ったように「自動車関連工業団体が持つ目利きの力を活用して絶対に失ってはならない要素技術や人財を、資本をベースに未来に残していく互助的な取り組み」を具体構想として実現させた結果であるとしている。

 

 プログラム立ち上げの時期が、この6月末直前となったことについて矢野事務局長は、今後7月に入ってより資金繰りが深刻化する企業が出てくることを想定してのことだという。
ちなみに当初は相互連携の形としてファンドによる支援も検討していたとのことだが、ファンド構築していくためには、業界団体が主導していくというこに関する制約があること。立ち上げに相応の時間を要することなどがあり、枠組みが最も迅速に立ち上げられ、より迅速に融資資金が届くようにするため信用保証の形にしたと話していた。

 

 会見の壇上で矢野事務局長は「今後は非会員の自動車関連企業への支援も検討していく方針であること。さらにどれだけの規模の貸し出しが見込まれるのか。万一、債務不履行になった場合の対応など、考えていかなれけばならないことは多い。
しかしまずは我々独自の目利きの力を使い迅速な融資へと進められるよう政府とも連携し、自動車工業4団体がコロナ危機の克服と、日本経済復興の牽引役を果たしていけるよう、このプロジェクトを精力的に推し進めていく」と結んでいた。

 

 

問い合わせ先
一般社団法人日本自動車工業会:http://www.jama.or.jp/ 
一般社団法人日本自動車部品工業会:https://www.japia.or.jp/ 
一般社団法人日本自動車車体工業会:https://www.jabia.or.jp/ 
一般社団法人日本自動車機械器具工業会:http://www.jamta.com/ 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。