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2023年7月18日【アフター市場】

ビッグモーター、保険金不正請求の調査結果・全文を公表

NEXT MOBILITY編集部

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ビッグモーター店舗外観

 

ビッグモーターは7月18日、板金部門による損害保険会社への保険金不正請求に関して、外部専門家から構成される特別調査委員会の調査結果全文 を公開。また、昨年11月から独自実施している自主調査により、現時点(7月16日時点)で判明している状況について公表した。

 

なお、公開された調査報告書は、“公表版”として特別調査委員会から受領したもので、個人名や一部の企業名が仮名になっていると云う。

ビッグモーター・ロゴ

1.不正請求の概要

 

1-1)特別調査委員会からの報告

特別調査委員会の調査により、損害保険会社に対する保険金請求に際して、ビッグモーター板金部門が以下の不正行為を行っていたことが認定された。

 

①入庫時の損傷確認段階

・損傷の作出。
・損傷の存在や範囲を誤認させる写真撮影。

②板金段階

・タワー牽引の偽装。
・不要なタワー牽引の実施。
・ダミーのサフ(下地処理)やパテ(補修処理)。
・不要な板金作業や部品交換の実施。

③塗装段階

・高機能塗装(耐スリ)施工の偽装。
・不要な塗装作業の実施。

④損保会社との協定段階

・実際に施工された修理と異なる内容での協定見積り作成。

 

1-2)自主調査により判明している状況

 

■調査状況
<7月16日現在:損保各社合計>
– 調査件数Ⓐ:8,427件
– 金額Ⓑ:2,112,363,979円

 

■再協定状況
<7月16日現在:損保各社合計>
– 再協定件数Ⓒ:1,275件
– 件数割合Ⓒ/Ⓐ:15.1%
– 総額Ⓓ:49,952,936円
– 1件あたり平均額Ⓓ/Ⓒ:39,179円
– 金額割合Ⓓ/Ⓑ:2.3%

 

■返金状況
<7月16日現在:損保各社合計>
– 返金件数Ⓔ:177件
– 件数割合Ⓔ/Ⓒ:13.9%
– 総額Ⓕ:6,617,865円
– 金額割合Ⓕ/Ⓓ:13.2%
– 残金額Ⓓ-Ⓕ:43,335,071円

 

※自主調査は継続して実施。調査人員を増やして早期全容解明に努め、調査結果を随時公表していく。

 

 

2.顧客への対応

不正認定された保険金請求については、引き続き速やかに連絡。再修理および返金を行う(返金状況については、上の表を参照)。

 

 

3.原因について

特別調査委員会の原因分析により、問題の原因として以下の事項の指摘を受けた。

 

①不合理な目標値設定
②コーポレートガバナンスの機能不全とコンプライアンス意識の鈍麻

・内部統制体制の不備。
・適正手続きを無視した降格処分の頻発。
・コンプライアンス意識の鈍麻。

③経営陣に盲従し、付度する歪な企業風土
④現場の声を拾い上げようとする意識の欠如
⑤人材の育成不足

 

 

4.再発防止策について

特別調査委員会からの提言を受けて、以下の再発防止策を策定。

 

①適正な営業目標の設定

・従来の実績100%の評価基準を改め、経営理念である「常にお客様のニーズに合ったクオリティの高い商品、サービス、情報を提供する」を体現すべく質を重視した目標を設定。
・業績評価、給与体系についても、工程管理、品質の項目を重視した内容へ見直し。

②リスクマネジメントを実行的に行うための内部統制体制の整備

・取締役会機能を十全化すべく、毎月1回、全役員参加の取締役会を開催。
・コーポレートガバナンス改善のために社外取締役を迎え入れる。
・内部統制体制を改善するため、作業や業務の監査を行うテクニカルサポート部員を増員して不正行為の防止・早期発見を行う。
・社内システムを改修して不正ができない環境を構築する。
・懲戒処分の運用の適正のために、賞罰委員会の実施と外部専門家の参加を行う。
・コンプライアンス担当取締役を任命し、かつ取締役会直轄のコンプライアンス委員会を設置する。
・外部専門家による経営陣に対するコンプライアンス研修を実施する。

③企業風土改革

・経営陣は「不条理な上命下服を強いる」と指摘を受けた企業風土を深く反省すると共に、現場との対話の機会を創出して、企業理念や適正な営業目標の理解や得心を通じて、顧客第一の企業風土の醸成に努める。

④現場の声を拾い上げる仕組みの構築

・現場と経営陣の円滑なコミュニケーションを促進するための現場巡回の際の個別面談を実施する。
・社内ホットラインを開設すると共に、外部通報窓口の設置を含めた内部通報制度を改善する。

⑤従業員教育の強化

・フロント業務、現場業務それぞれの優秀者または外部指導員による定期的なフロント、板金、塗装の全スタッフのスキルアップ研修を実施する。
今回発覚した不正行為の内容やその発生原因を活用した、実効的なコンプライアンス教育を実施する。

 

※再発防止策については、追加変更等がありましたら改めて報告する。

 

 

5.経営責任について

創業者の兼重宏行をはじめとする全取締役はコーポレートガンバナンスの機能不全や歪な企業風土醸成に重大な責任を負っているため、以下の通り報酬の自主返上を実施する。

 

・代表取締役社長:報酬100% 1年間返上
・取締役副社長:報酬50% 3カ月返上
・専務取締役:報酬30% 3カ月返上
・常務取締役:報酬20% 3カ月返上
・取締役:報酬10% 3カ月返上

 

 

ビッグモーターは、調査報告書の提言を真摯に受け止めると共に、顧客満足を第一に考えるという原点に立ち返り、全社を挙げて再発防止策を実践し、客および損害保険会社をはじめとしたすべてのステークホルダーの信頼回復に向けて不断の努力を行うことを約束するとしている。

 

 

[保険金の不正請求に関する問い合わせ先]

フリーダイアル:0120-733-500(受付時間:午前10時~午後5時)

※回答までに時間を要する場合がある。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。