三菱自動車工業は７月２６日、フルモデルチェンジした1トンピックアップトラック「トライトン 」（＊1）をタイ・バンコクで世界初披露し、同国での販売を同日より開始すると発表した。

トライトンは、今後、アセアンやオセアニアから順次グローバル展開され、日本市場にも約12年ぶりに投入。日本では、来年初頭の販売が予定されていると云う。

＊1：トライトンは一部の国・地域では「L200」として販売。

三菱自動車では、ピックアップトラックを、1978年の発売から45年・5世代に亘って約560万台生産し、世界戦略車として世界約150ヵ国で販売してきた。

約9年ぶりのフルモデルチェンジで6代目となった新型トライトンは、商品コンセプト“Power for Adventure（パワー・フォー・アドベンチャー）”の下、開発が進められ、内外装デザインからシャシー、ラダーフレーム、エンジンなどを一新。以下の特長があると云う。

［主な特長］

（1）従来モデルよりも一回り大型化したボディ、耐久性と信頼性を極限まで磨いた新開発のラダーフレームを採用し、高出力化と環境性能向上を両立した新開発のエンジンを搭載。

（2）新開発のサスペンションによる良好な乗り心地や優れた操縦安定性、スーパーセレクト4WD-II、バージョンアップしたドライブモードによる高い走行性能を実現。

（3）頼もしく存在感のあるフロントフェイスとワイドで厚みのあるスタイリング、機能的で操作性に優れ、上質感を持ったインテリアを実現。

（4）ビジネスユースからパーソナルユースまで幅広く対応する安全性と快適性を大幅に向上。

三菱自動車の加藤隆雄社長は、新型トライトンについて以下のように述べている。

「新型トライトンは、三菱自動車独自開発の堅牢なラダーフレームやボディ、強靭な足回り、力強く扱いやすいエンジン、優れた走破性と安定性を実現する4WDシステムなど、従来からもつ三菱自動車らしさに磨きをかけ、新時代に相応しいピックアップトラックへと大幅に進化させました。最終的には100カ国以上で年間20万台規模となる見通しで、まさに当社の屋台骨を支える最重要モデルであり、成長フェーズの幕開けに投入する、第一弾となる世界戦略車です。ここからはじまる当社の挑戦にどうぞご期待ください」。

［商品概要］

新型トライトンは、大型化したボディに、環境性能と動力性能を大幅向上した新開発の2.4Lクリーンディーゼルターボエンジン、独自開発した新たなラダーフレームやサスペンションといった主要コンポーネントを採用。スーパーセレクト4WD-IIシステムに、電子制御のアクティブヨーコントロール[AYC]（*2）を組み合わせ、ドライブモードをアップデートするなど、走行性能を大幅強化。

また新たにレーダークルーズコントロールシステム[ACC]（*3）をはじめとした最新の安全装備や、コネクティッド技術を用いたエマージェンシーサービスなども投入。ハード面だけでなくソフト面でも安全性、快適性が大幅向上。

SUVの快適性とトラックの実用性を兼ね備えた2列シートのダブルキャブ、1列シートのベーシックなシングルキャブ、そしてフロントシート後ろに荷室スペースを設けることでリクライニングも可能なクラブキャブと、用途に応じた3タイプのボディが設定されている。

*2：Active Yaw Control。
*3：Adaptive Cruise Control。

左から、ダブルキャブ、クラブキャブ、シングルキャブ。

（1）ラダーフレームとクリーンディーゼルエンジン

・新開発のラダーフレームは、従来型から断面積を65%拡大することで、曲げ剛性を60%、ねじり剛性を40%強化。一方でハイテン鋼の採用比率を大幅に高め、重量増を最小限に抑えた。これにより走行性能や乗り心地に加えて、積載時の耐久性や衝突時のエネルギー分散性も向上させるなど堅牢性を高めた。

　また、ボディにも新たに1180MPaのハイテン鋼を採用するなど、従来車に比べ軽量化を図った。

・搭載する新開発の4N16型クリーンディーゼルエンジンに、用途に応じた3種類の出力の異なる仕様を用意。

　新型ターボチャージャーと新燃焼システムを採用した高出力仕様のエンジンでは、150kWの最高出力と470 N･mの最大トルクを約1,500rpmからフラットに発生し、実用域での応答性に優れたトルクフルな走行を可能に。また、標準仕様として、タービン容量を可変制御するVGターボチャージャーを採用した最高出力135kW/最大トルク430N･mと最高出力110kW /最大トルク330N･mの2仕様のエンジンを設定。

・トランスミッションには、従来車で好評のスポーツモード付き6速オートマチックトランスミッションと、シフトレバーをワイヤー式とすることでエンジンから直接伝わる振動を低減して快適性を向上した6速マニュアルトランスミッションを採用した。

（2）新開発のサスペンションと熟成した4WDシステム

・4WDシステムに、前40%、後60%に駆動力を配分し、トラクション性能とコーナリング性能を両立するトルク感応式LSD（*4）を備えた三菱独自のスーパーセレクト4WD-IIと、イージーセレクト4WDを引き続き採用。システムでは、走行中にダイヤル式のセレクターで簡単にモード変更が可能。

*4：Limited Slip Differential。

・スーパーセレクト4WD-II搭載車では、後輪駆動の「2H」、フルタイム4WDの「4H」、センターディファレンシャル直結の「4HLc」、更によりローギヤの「4LLc」の4種類が選択可能。

　また、ドライブモードを従来車のオフロード4モードから、全ての4WDモードに設定されている「NORMAL」モードをはじめ、2Hには経済性を重視した「ECO」、4Hに「GRAVEL（未舗装路）」と「SNOW（氷雪路）」、4HLcにトラクション性能を引き出す「MUD（泥濘）」と「SAND（砂地）」、4LLcには「ROCK（岩場）」モードと、オンロードも含めた7モードに拡張し、あらゆる路面で最適なドライブモードが選択できるように。

　一方、イージーセレクト4WD搭載車の4WDモードでは、後輪駆動の「2H」、センターディファレンシャル直結の「4H」、よりローギヤの「4L」の選択が可能。

・スーパーセレクト4WD-II搭載車に、コーナー内側の前輪に弱くブレーキをかける事で旋回性を向上させるアクティブヨーコントロール[AYC]を、新規採用。

　また、2WD/4WDモデル共に、空転している車輪にブレーキをかけて路面をグリップしている車輪に駆動トルクを分配するアクティブLSD（ブレーキ制御タイプ）を採用。滑りやすい路面での安全性向上とスポーティなドライビングを楽しめるようにした。

・カーブが連続するような道路で安定性を向上させるアクティブスタビリティ&トラクションコントロール[ASTC]（*5）を全車標準装備としたほか、下り坂で一定のスピードを保持して安心して走行することができるヒルディセントコントロール [HDC]（*6）、坂道発進でのずり落ちを防止するヒルスタートアシスト[HSA]（*7）などを引き続き採用。

*5：Active Stability & Traction Control。
*6：Hill Descent Control。
*7：Hill Start Assist。

・フロントサスペンションには、4WD/2WDのハイライダーのアッパーアーム取り付け部を上方に移動し、ストロークを20㎜増やして接地性・乗り心地を向上したハイマウントタイプの新開発ダブルウィッシュボーン式を採用。

　リヤに、強度を維持しつつ軽量化したリーフスプリング式を採用し、大径化されたショックアブソーバーと共に、快適な乗り心地を実現させている。

・ボディを大型化する一方で最小回転半径の増加は最低限に留め、ボンネットをフードラインの見える見切りの良い形状とすることで運転をしやすくした。また、高出力仕様エンジン搭載車には、低速域でアシスト量を増やすことでコントロールしやすさを、また高速域で手応えを増やすことでドライバーに安心感を与えるほか、路面からのキックバックを減らし、オフロードや牽引時を考慮してチューニングするなど、安全・快適性に配慮した電動パワーステアリングを新たに採用。

（3）デザインコンセプト「BEAST MODE」（勇猛果敢）

・ピックアップトラックに求められるタフさや力強さに加え、三菱自動車らしい堅牢さを持ちながら俊敏さも併せ持つ堂々とした佇まいを表現。

・力強いパフォーマンスと、人とクルマを守る安心感を表現した「ダイナミックシールド」フロントデザインコンセプトを、力強く立体的なフロントグリルやフェンダーから繋がる力強い造形、それを強調するプロテクターで、ピックアップトラックに最適化。3連のL字型LEDランプを配したデイタイムランニングランプには、猛禽類を思わせる眼光鋭い造形と、その下に立体的な3眼プロジェクター式のヘッドライトを組み合わせ、存在感と逞しさをより感じさせるデザインとした。

・ボディサイドを、水平基調のドアの厚みを演出する張りのある大きな面で構成しつつ、シャープに張り出したフェンダー造形とのコントラストで引き締め、より幅広く見せることで安定感と強靭さを強調。

・リヤ周りは、十分な荷台サイズを確保しながら、サイドから続く張りのある面を後端まで回し込み、その両端に配したT字型のテールランプでワイド感を強調すると共に厚みを持たせることで、逞しさを演出している。

・エアロダイナミクスを向上させたキャビン形状やリヤスポイラー、大型化して握りやすく耐久性を高めたドアハンドル、幅を広げて水はけを良くしたサイドステップなど、各所に機能的なデザインを採り入れ、実用性を大幅に向上。

・インテリアには、走行時の車体姿勢の変化をつかみやすい水平基調で力強い造形の「HORIZONTAL AXIS（ホリゾンタル・アクシス）」コンセプトを進化させたインストルメントパネルを採用。また、プロフェッショナルユースを意識し、乗員を保護するためのソフトパットを要所に採用し、実用性の高さを確保したほか、デザイン面では、幾何学的な造形とメタリックを多用したハイコントラストでモダンな空間とした。

・視認性にこだわったモニターやメーター、スイッチ類、また、手袋をしたままでも確実に操作ができるよう程よい節度感を与えたセレクター、ダイヤル、スイッチ類のほか、握り心地にこだわったステアリングホイール、グリップ、ドアハンドル類などを「MITSUBISHI TOUCH（三菱タッチ）」の考え方に基づいてデザイン。

・ユーティリティとしては、6A/T車および6M/T車に、フロアコンソールに大型カップが2つ収まるカップホルダーに加え、600mlのペットボトル4本が収納できる大容量のコンソールボックスを採用。また5M/T車では、形状を工夫し、カップホルダーとしてだけでなく、タブレットやファイルが置けるように工夫するなどプロユースを意識した作りとした他、グローブボックスやスマートフォンホルダーなどの小物入れは手袋をしたままでも操作しやすいよう余裕のあるサイズとし、電子機器の充電用としてインストルメントパネルとセンターコンソールにタイプAとタイプCのUSBを用意、インストルメントパネルセンター下部にはスマートフォンのワイヤレスチャージャーも装備している。

・ボディカラーには、鮮やかさとメタリック感を強めたヤマブキオレンジメタリックと、輝度感を向上させたブレイドシルバーメタリックを新設定。その他、高品質なベーシックカラーとしてホワイトダイヤモンド、ホワイトソリッド、グラファイトグレーメタリック、ジェットブラックマイカをラインナップ。

上段左：ヤマブキオレンジメタリック、中央：ブレイドシルバーメタリック、右：ホワイトダイヤモンド。下段左：ホワイトソリッド、中央：グラファイトグレーメタリック、右：ジェットブラックマイカ。

・最上級グレードでは、フロントグリルをボディ同色に、ドアミラーとダイナミックシールドガーニッシュ、ドアハンドル、バンパーなどをブラックに、フロント、サイド、リヤの各アンダーガードをダークチタニウムとし、ブラックのルーフレールやオーバーフェンダー、荷台にスタイリングバーを装着し、より一層精悍さを強調。また、インテリアもメタリック加飾部分をブラック基調とすることで引き締め、オレンジのアクセントカラーを配置する事で上質感と精悍さを加えている。

（4）ピックアップトラックとしての基本性能向上

・カーゴベッドを大型化することで、ベッドライナー装着状態でもユーロパレット積載に対応したほか、従来モデルに比べて荷台高を45㎜低い820㎜とし、バンパーコーナー上面の面積拡大や、フレーム補強により、足を掛けるスペースとして使用可能とするなど、実用性を向上。

・腰回りをしっかりサポートし、肩付近は動きやすく開放的な形状としたフロントシートでドライバーの疲労を軽減。ヒップポイントを従来車に比べて20㎜アップし、アップライトな乗車姿勢とすることで、室内からの視認性を向上した。他にもAピラーを立ててドア開口部を広げ、さらにサイドステップの幅を広げると共に滑りにくい形状とすることで、乗降性を向上している。

・三菱自動車セーフティセンシング[MMSS]（*8）には、新たに、先行車の加速・減速・停止に追従走行し、設定した車間距離を保ちながら走行するレーダークルーズコントロールシステム[ACC]を搭載。また、衝突被害軽減ブレーキシステム[FCM]（*9）、後側方車両検知警報システム（レーンチェンジアシスト機能付）[BSW / LCA]（*10）、後退時交差車両検知警報システム[RCTA]（*11）などを引き続き採用し、先進安全装備の強化を図った。

*8：MITSUBISHI MOTORS SAFETY SENSING。
*9：Forward Collision Mitigation system。
*10：Blind Spot Warning with Lane Change Assist。
*11：Rear Cross Traffic Alert。

・カーライフをより快適・安心に楽しむための通信サービスである「三菱コネクト」では、事故や故障時にボタンひとつでコールセンターに救助依頼をしたり、エアバッグが展開した際に自動通報することで迅速な対処が可能（SOSエマージェンシーサービス）。また、自車位置の確認ができるカーファインダーをはじめ、燃料の量やオイルの状態、ドライブ履歴など車両の状態や、エアコンの作動など、スマートフォンとの連携により、クルマの遠隔操作も可能。電話回線を利用した電波受信できる範囲であれば遠く離れていても通信できる。

・アンダーカバーの脱着なしにエンジンオイルの交換ができるよう、ドレーンボルトの位置を変更したほか、アタッチメントなしでガレージジャッキが使用できるようサービスホールを拡大（4WD/2WDハイライダー）するなど、メンテナンス性を向上。6M/T車に於いては、ギヤオイルの交換を不要にするなどメンテナンスフリー化も進めている。

・プロテクター類からドレスアップ用まで、アクセサリーを幅広く設定。プロテクション機能を持たせながらスタイリッシュさを演出するスポーツバーをはじめ、三菱自動車らしさを主張し、強固なイメージを強調するグリルエンブレム、フェンダーアーチモールディング、サイドドアガーニッシュや、ピックアップトラックには欠かせないベッドライナーも用意した。

［駆動系諸元］（*12）

*12：国により投入されない組み合わせもある。