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2019年3月6日【オピニオン】

グラブ、14億6000万ドルの資金をソフトバンクから調達

坂上 賢治

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現・資金調達Hラウンドで既に45億米ドル以上の資金を確保

 

 シンガポールを拠点に東南アジア全域で、自前インフラとアプリケーションを組み合わせ配車サービスを展開するグラブホールディングス・インク(Grab Holdings Inc.)は3月6日、日本のソフトバンクビジョンファンド(SVF/Softbank Vision Fund)から14億6000万ドル(記事出稿段階の換算でおよそ1631億円)の新たな資金調達を果たしたと発表した。(坂上 賢治)

 

ちなみにGrabは、2012年に設立されて以降、米Uberの東南アジア地域での事業を買収したことで、同事業地域で圧倒的なマーケットシェアを獲得。

同社は、既に2018年夏のシリーズHラウンドでトヨタ、ヒュンダイ、ヤマハ、マイクロソフトなどから29億ドル(およそ3242億円)を調達。この数値によりGrabは、東南アジアに於ける企業評価額で初めて100億ドルレベル(約1兆円)を超えた組織となっている。

 

 

さらに今回のSVFからの出資により、GrabのシリーズHラウンドの資金調達の合計額は45億ドル(およそ5030億円)を超えた。

結果、同ラウンドの出資企業はトヨタ自動車を筆頭にオッペンハイマーファンズ、現代自動車グループ、ブッキング・ホールディングス、マイクロソフト、平安保険、ヤマハ発動機などの名だたる国際企業が並ぶ。

 

 この成果に、Grabのアンソニー・タン共同創業者兼CEOは「ソフトバンクとソフトバンク・ビジョン・ファンドからは長期的かつ戦略的な投資をして頂いており、弊社はその継続的な支援に感謝しています。

 

また今回の出資は、特に東南アジアの配車サービス最大手として、同地域のテクノロジー経済圏を大きく発展させることを掲げる当社への信頼の証だと受け止めています。

 

今後も当社プラットフォームを通じて、地域経済へ一層の収入獲得の機会を提供し、ユーザーへの選択肢を増やしてさらに利便性を高めることで、数百万人の東南アジアの人々の生活の質向上を目指していきます」と話している。

 

ソフトバンク・ロゴ

 

 一方、ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズのパートナーのデイビッド・セベノン氏は「当社はGrabと数年間に亘って協働しており、Grabのユーザー志向を柱とする経営手法をサポートしていく栄誉を受け、大変嬉しく思います。

今回の出資でGrabは、今後も東南アジアでオフライン・ツー・オンラインのプラットフォームを大きく成長させ、オンデマンド・モビリティーや配送、金融サービスで新たな可能性を切り拓くことでしょう」とコメントした。

 

 Grabのミン・マー社長は「現在の資金調達ラウンドで、Grabの継続的成長への支援をして下さる投資機関の他、戦略的パートナーとして当社に高い関心を寄せて頂いている投資企業各位に対して感謝しています。

2019年になって以降も新たな投資機関から関心を示して頂き、我々はより多くのパートナー企業として迎え入れることん゛できていることを心から愉しんでいます」と語った。

 

Grabは、配車サービスを介して地域経済を活性化させるだけでなく、今後デリバリーや金融サービスを皮切りにフードデリバリー、配送サービス、コンテンツ、デジタルペイメントなどの事業領域を伸ばし、電子商取引に至る地域の経済活動のすべてを提供して同地域の「スーパーアプリ」になるというビジョンと、その行動計画の実行を着実に消化しつつある。

 

具体的には、同社がオープン・プラットフォームとして推し進めるグラブ・プラットフォーム(GrabPlatform)を基盤にストリーミングプラットフォームのHOOQとの提携を通じたオンデマンド・ビデオや、平安好医生とのデジタルヘルスケア、衆安国際との保険サービス、ブッキング・ホールディングスとのホテルのオンライン予約サービスなど、そのメニューは日々拡張を続けている。

 

 

 事業発祥のベースとなったオンデマンド交通サービスでは、2輪車市場の60%、4輪車市場で70%の市場シェアを占め、新たな進出先のインドネシアでは、昨年始めに事業展開都市13から178都市にまで拡大。GrabFoodはフードデリバリーサービスで国内第2位となるなど、精力的な積極投資を続けている。

 

その甲斐あってかGrabのインドネシア事業は急拡大しており、同国内企業オボ(OVO)及びトコペディアとの提携を通じ、インドネシアで最大のデジタルペイメント経済圏を形成することに成功。売上高も昨年比で2倍以上に達した。

グループの他の事業に目を向けると、ウーバーの東南アジア事業との合併以降、交通事業が大幅に成長。昨年3月~12月の期間で売上がほぼ2倍に。同時期に売上高が45倍に成長した。

 

Grabアプリは1億3,800万台のモバイルデバイスへダウンロードされ、ユーザーは900万以上の運転手や店、代理サービスを利用。唯一の東南アジア地域全域で展開するフードデリバリーサービスの「GrabFood」は、現在6カ国199都市でサービスを展開。

Grab Financial Groupは昨年、東南アジア主要6カ国で電子マネーのライセンスを利用できる唯一のプラットフォームとなっている。

 

 同社の経済圏は、タイのセントラル・グループやカシコン銀行、インドネシアのオボ(OVO)、バンク・タブンガン・ネガラ、マンディリ銀行、シンガポールのユナイテッド・オーバーシーズ銀行、フィリピンのSMインベストメンツ、ベトナムのMoca、マレーシアのメイバンクなどの各国の大手企業や東南アジアの大手企業とのパートナーシップ締結に至っている。

最後にGrabExpressの即時、及び同日配送量も同期間中に4倍近く増加し、150都市で利用できるようになっている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。