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2019年4月4日【エネルギー】

国内2輪4社、EV用交換式バッテリーの共同事業体創設へ

坂上 賢治

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 もとより二輪車というカテゴリは、エンジンフィーリングの魅力が四輪車より圧倒的に大きいため、これまではガソリンエンジンの開発能力に秀でた国内大手4社の独断場が続いた。

 

しかし今回、会見の登壇者が「電動化が進むと我々4社の優位性が脅かされる」と話すように旧来のガソリンエンジンから、持ち前のパワフル感が際立ち、製造コストも安い電動モーターへとパワーユニットが入れ替わる過程で、世界の勢力図が大きく塗り変わる可能性すらある。

 

 

実際、東アジア圏の新興国企業の台頭は特に目覚ましく、かつて本田技研工業傘下だった台湾メーカーのキムコは、電動スーパースポーツの二輪車「SuperNEX」を早くも商用化段階へと移しつつある。

 

 加えて、今回とは直に比較の対象とはならないものの、かつての2009年、横浜で米・ベタープレイス社は「日産デュアリス」ベースの電気自動車を用いて大型バッテリーの着脱・交換システムを試行。

この試みは、大手企業や投資家から大規模な資金援助を受けて華々しくスタートしたものの成功せず、2013年5月に敢えなく会社を閉じている。

 

 

これを踏まえると大手企業の場合、一介のスクーターベンチャー企業としてスタートしたGogoroのように、まずは他社の力を借りるなりして小さく起業し、会社とサービスをじっくり育てていくという手段が取り難く、既に世界を制する存在となっている国内二輪4社の立場では、バッテリー着脱インフラへの挑戦はリスクが大きくなる。

 

 つまり国内の大手4社による同じような取り組みであっても、既に4社が大規模量産車メーカーであるゆえに車両普及段階のインフラ整備で、地方の自動販売機並みの信頼感を保持する必要があるなど、コストの掛かる環境整備を求められる可能性が否定できないからだ。

投資規模が拡大すると、幾ら大手企業と云えども企業体力を奪う。そうした意味で、充電インフラ環境の整備コストで4社が協業するスケールメリットは活かせるだろう。

 

 最後に代表幹事である本田技研工業・常務執行役員二輪事業本部長 の安部典明氏は「電動二輪車の普及には、航続距離や充電時間等の課題解決が必要であり、交換式バッテリーは有効な解決策と言えます。

 

お客様の使い勝手を考慮すると、交換式バッテリーの標準化や交換システムの普及が不可欠と考えています。

 

このコンソーシアムにおいて、まずは国内二輪4社で協働検討をすすめるとともに、この考えにより多くの方々に共感いただくことで、電動二輪車の利用環境が改善され、お客様の利便性を向上させる一助となればと思っています」とのコメントを残している。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。