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2022年1月31日【企業・経営】

パナソニック、空質空調事業で2025年度売上高1兆円を目指す

山田清志

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パナソニック空質空調社の道浦正治社長

 

新型コロナウイルスの感染拡大以降、空気質や空調への関心が高まり、世界的に空調機器などの市場が拡大している。2025年には20年よりも4兆円も増え、15兆円超の市場になると見られているほど。そんななか、パナソニックは1月31日、社内カンパニー、空質空調社の事業戦略を発表した。これは21年10月の新体制発足を受けたもので、25年度に21年度比4割増の1兆円の売上高を目指すという。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

2つの事業統合で独自の価値提供を

 

「これまで空質事業と空調事業は分かれて運営してきたが、これらに関するすべての機能を集結した。開製版の方向性を一つにすることで、これまで以上にお客さまとの接点を強化でき、お客さまへのお役立ちをさらに高めていけるようになる。昨今はお客さまが上質な空気を求められており、その要望に応え、新たな価値を提供するには2つの事業が融合することが重要だと判断した」とパナソニック空質空調社の道浦正治社長は話す。

 

パナソニックの強みのコア技術

 

2つに分かれていたのは、両事業の歴史によるところが大きい。空調事業は1969年に滋賀県の草津拠点で発足した。その後、製造開発拠点をマレーシアや中国へ展開し、グローバルに空調事業を専鋭化してきた。一方、空質事業は松下電器よりも歴史が古く、1909年創業の川北電気企業社が母体。1956年に松下グループ傘下になり、62年に社名を松下精工に変更し、さらに2003年に松下エコシステムズに変更した。

 

また、主力製品も空調事業がエアコンやヒートポンプ、エコキュートなどに対し、空質事業は換気扇、レンジフード、空気清浄器、扇風機、トンネル換気浄化システムなどだった。それが21年10月、空気という切り口で融合したわけだ。その裏には、別々に事業を行っていたのではグローバル競争に勝てないということがあったと言っていいだろう。

 

空質空調社の目指す3つの価値

 

「空質空調社の事業領域は今までにない広い事業領域をカバーする。換気送風機器から環境エンジニアリング事業、そして電気・ガスの空調機器から温水システムに至るまで空気と水に纏わる領域だ。コア技術も空質空調の全領域の基盤技術に加え、水浄化など数多くの技術を保有している」と道浦社長。

 

例えば、アクティブ型の浄化技術であるナノイーとジアイーノだ。成分が機器から飛び出して空間を浄化するもので、空間を浮遊する菌だけでなく、壁などに付着した菌にまで効果があり、空間全体の浄化が可能だという。そのほか、温度制御と衛生面で圧倒的な強みを持つ遠心破砕加湿技術、コンプレッサーやモーターなどの高い省エネを実現するデバイス技術、そして独自のセンシング技術だ。空質空調社では、これらの強みを生かしながら革新と融合を進め、独自の価値を提供していく方針だ。

 

その価値とは3つだ。まず独自のクリーンテクノロジーとセンシング技術で、菌やウイルス、アレルギー物質などさまざまな有害物質を抑制し、気持ちよく呼吸できる暮らしを実現する。2つ目が一人ひとりの暮らしや仕事に合わせたストレスを軽減する空気で、人と社会に活力を提供する。3つ目が省エネやCO2削減により、地球温暖化防止に貢献する。

 

業務用空質空調連携システム

 

最大52%エネルギー削減した空質空調システムを発売

 

ユーザーターゲットも、B2Cである一般ユーザーをはじめ、不動産オーナーや施工業者、設計事務所、デベロッパーなどB2Bも見据える。特にB2Bのお客には入居者へのより良い空気環境とそれによる不動産価値の向上をアピールしていくそうだ。

 

「今後はお客さまと深くつながった循環型ビジネスの構築を目指していく。機器購入前には現場図面を短時間でデジタル化するなど省力化の支援をし、契約から施行に向けてはサブスクの試算や現場確認など手間のかかるポイントへの支援を行っていく。機器導入後には使用状況データを分析し、空気質の状況を見える化と空気質改善などの提案などをしていく」と道浦社長は新たなビジネスモデルについて説明する。

 

事業目標

 

また、同日に新たな価値提案を行っていく技術として、業務用空質空調連携システムを発売する発表した。同システムは、空調機の温度調節機能、熱交換気扇による換気機能、独自技術の次亜塩素酸と新「ナノイーX」による除菌、脱臭、加湿機能を連携させたもの。天井埋込型ジアイーノで、空気中を浮遊する菌・ニオイを吸引し、本体内部で生成する次亜塩素酸の力で除菌・脱臭。きれいになった空気とともに、気体状の次亜塩素酸を放出する。業界トップクラスの省エネ空調機と換気機器で、最大52%のエネルギー削減を実現したという。

 

「事業成長向け積極的に投資を行い、主要市場、主要拠点において研究、開発、製造力強化を進めていく。市場にできる限り近いところに投資をしていくことで、新たな商品・システムの研究開発のスピードアップを図ると同時に、リードタイム短縮による供給力強化も実現していく」と道浦社長は話し、2025年までに1000億円規模の投資をすることを明らかにした。そして、2025年には売上高1兆円の事業規模を実現し、グローバルトップクラスの仲間入りを果たすそうだ。

 

しかし、世界の空調市場の競争は激しく、世界最大手のダイキンは3年間で生産能力拡大などに8000億円を投資する方針だ。三菱電機も製造設備の増強などに1800億円を投じ、2025年度の事業売上高を20年度比50%増の1兆2600億円にする目標を掲げている。そんなライバルに対し、パナソニックはどのように統合の相乗効果を生かし、強みを発揮していくのか要注目だ。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。