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2021年9月15日【SDGs】

川重ら日豪6社、グリーン液化水素サプライチェーン構築へ

NEXT MOBILITY編集部

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岩谷産業、川崎重工業(以下「川崎重工」)、丸紅の日本企業4社は9月15日、豪州を拠点としたエネルギー・インフラ企業であるStanwell Corporation Limited(以下「Stanwell」)、APT Management Services Pty Ltd.,(以下「APA」)の2社とともに、豪州クイーンズランド州グラッドストン地区において再生可能エネルギー由来の水素を大規模に製造・液化して日本へ輸出するプロジェクト(Central Queensland Hydrogen Project)について、事業化調査を共同で実施することに合意し、6社で覚書を締結したと発表した。

 

ゼロカーボン社会の実現に向けて、水素は必要不可欠なエネルギー資源と期待されているため、海外からの輸送も視野に入れた水素サプライチェーンを構築する必要があると考えられている。しかし、化石燃料を原料として確立している現在の水素製造技術では、製造過程でCO2が排出されるため、ゼロカーボン社会の実現を見据えると、将来的にはCO2回収・貯留技術との組合せや再生可能エネルギー等を活用したCO2フリー水素の製造が求められる。CO2フリー水素源の獲得競争は世界的に激しさを増しており、日本のエネルギーセキュリティーの観点からも、安価な再生可能エネルギー電源と輸出港の確保が重要となる。

 

また、豪州クイーンズランド州は、年間300日以上晴天が続く気候で再生可能エネルギーのポテンシャルが非常に高い地域であることから、州政府の指針として化石燃料から再生可能エネルギー・水素へのエネルギートランジションを打ち出している。同州政府が所有する電力公社であるStanwell社も、この目標を達成する重要な役割を担っている。

 

このような背景から、岩谷産業およびStanwell社は 2019年から大規模なグリーン液化水素の製造および日本への輸出に向けた調査を行ってきたが、この調査結果を踏まえ、事業化に向けた検討を本格的に実施すべく、今回日豪6社で事業化調査を進めることにした。

 

この事業は、長期安定的かつ安価な水素製造および供給を行うことを目指しており、2026年頃に100t/日規模以上、2031年以降に800t/日以上の水素生産規模を想定している。

 

なお、現在の日本の液化水素生産量は最大30t/日であり、2031年以降、800t/日以上の生産規模は現在の日本における約26倍の生産規模となる。

 

 

■事業化検討における各社役割

 

 

Stanwell社が先立ってグラッドストン地区のアルドガ地域に水素製造拠点として確保している土地(約235ヘクタール)や、水素液化・積荷拠点として確保予定のフィッシャーマンズランディングの土地(約100ヘクタール)を活用することも検討。また、日本への輸出用だけではなく豪州国内の需要先に向けてもグリーン水素の供給を検討する予定だという。

 

事業化調査では、主にグリーン水素の製造技術や、水素を液化するプラントの建設、運搬船建造、それに伴うファイナンスおよび環境アセスメントの検討ならびに商用化モデルの検討を進めていく。各社は本事業の活動を通じて日豪両国政府が掲げる2国間の大規模水素サプライチェーンの構築に向けて尽力するとともに、ゼロカーボン社会の実現に貢献するとしている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。