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2021年5月26日【企業・経営】

オンキヨー、シャープらにホームAV事業を譲渡

NEXT MOBILITY編集部

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オンキヨーホームエンターテイメント(以下、オンキヨー)は5月26日、同日開催の取締役会で、定時株主総会(6月25日開催予定)での承認等を条件に、米国の家電企業であるヴォックス社(VOXX International)の子会社である「プレミアムオーディオ社(PREMIUM AUDIO COMPANY)」と「シャープ」が合弁で設立する新会社に、ホームAV事業の全てを譲渡することを決議したことを発表した。

 

 

事業譲渡に至る経緯

 

オンキヨーは、2013年度から継続して経常損失が生じ、取引先に対する営業債務の支払遅延が生じていることから、この状況解消のため、2019年5月21日、DENON/Marantz/Polk Audio等のオーディオブランドを持つ米国のSound Unitedのグループと、ホームAV事業の譲渡契約を締結。その資金で支払遅延解消や借入金返済を進めて財務状態の改善を図る計画を準備していたが、必要な契約の締結や、資金調達の確保など、事業譲渡の実行に必要な条件達成が両社間で難航し、中止となった。

 

その後、大規模な資金調達(エクイティファイナンス)により、上記遅延状況の解消を目指すも、株価の低迷により、調達金額は計画を大きく下回ることとなった。

 

また、新型コロナウイルス感染症の影響から、生産・販売活動が限定されて経常収入も大きく減少、さらに米国の旧販売代理店の業績悪化に伴い、債権回収も困難となったため、昨年3月期の決算で、33億5,500万円の債務超過に。これにより、昨年9月25日に上場廃止に係る猶予期間に入ることとなった。

 

オンキヨーは、今年3月期にも、継続的にエクイティファイナンスを実施し、財務状況の健全化を目指してきたが、営業債務の支払遅延の解消の遅れや部品の供給状況の逼迫などによる売上・利益の減少に加え、旧米国販売代理店の経営状況悪化による貸倒引当金の計上により、業績は引き続き低迷。

 

また、第11回新株予約権及び第12回新株予約権の行使による増資も最終的に行われないこととなり、結果として、23億6,900万円の債務超過に陥り、東京証券取引所ジャスダック市場の上場廃止基準に抵触する見込みとなった(オンキヨーニュースリリース「上場廃止基準抵触の見込みに関するお知らせ(2021年3月31日公表)」:https://onkyo.com/ir/ir_news/date/2020/20210331_joujouhaisi.pdf)。

 

オンキヨーは、これを受けて事業継続のためにあらゆる選択肢の検討を開始。その中で、昨年同社の米国販売代理店となった11 Trading Companyの親会社である「ヴォックス社」及びオンキヨーとの合弁工場であるS&O Electronics(Malaysia)を通じて以前から取引のあった「シャープ」と、事業譲渡に関しての協議を実施。既に協力関係にあるヴォックス社およびシャープは、事業譲渡のパートナーとして適任と判断し、両社が合弁で設立する新会社に、ホームAV事業を譲渡することとした。

 

 

事業譲渡とその後

 

オンキヨーは、今回の事業譲渡について、協力関係にあるパートナーとの取引であることから、ホームAV事業の将来的な発展も見込まれ、その対価も、同社の事業評価から見れば公正なものであるとしつつも、厳しい契約条件を伴うことに違いはないとしている。

 

しかし、もはや自力で事業運営を続けていくことは困難であり、このまま法的整理手続等に移行、債権者の債権がカットされるような状況に陥ることは避けなければならないとして、今回、ホームAV事業譲渡を決断。

 

事業譲渡による対価は、その大半がホームAV事業に関連する債権者の弁済に充てられるため、厳しい経営状況や資金繰り、現在生じている営業債務の支払遅延の全てを解消できるものではないが、今後、残存する事業においても協業先やスポンサーを継続して探しつつ、構造改革やスリム化によるコスト削減を早期に実現し、小規模でも確実に収入を確保できる体制を整備。遅延している営業債務の弁済を継続して行い、一刻も早い債務の完済及び企業としての正常な事業運営のために、最大限の努力を尽くしていくとしている。

 

 

[事業譲渡の内容]

 

<譲渡する事業>

 

・ホームAV製品の製造及び販売事業。

 

<事業譲渡契約の相手先の概要>

 

1)プレミアムオーディオ社

 

– 名称:PREMIUM AUDIO COMPANY LLC
– 本店所在地:

3502 Woodview Trace, Suite 200 Indianapolis, Indiana 46268 United States of America

– 代表者の役職・氏名:President and Chief Executive Officer Paul Jacobs
– 事業内容:家電製品・アクセサリー、および音響機器の設計、製造、販売。
– 設立年月日:2011年
– 大株主及び持株比率:VOXX International Corporation 100%

 

2)シャープ

 

– 名称:シャープ株式会社
– 本店所在地:大阪府堺市堺区匠町 1 番地
– 代表者の役職・氏名:

・代表取締役 会長執行役員 兼 CEO 戴正呉
・代表取締役 社長執行役員 兼 COO 野村勝明

– 事業内容:電気通信機器・電気機器及び電子応用機器全般並びに電子部品の製造・販売等
– 設立年月日:1935年5月
– 大株主及び持株比率:

・HON HAI PRECISION INDUSTRY CO.,LTD. 24.47%
・FOXCONN (FAR EAST) LIMITED 17.23%
・FOXCONN TECHNOLOGY PTE.LTD. 12.17%

 

<事業譲渡契約における重要な前提条件>

 

事業譲渡契約においては、事業譲渡の実行までに、大要、以下の各号に記載する条件等が充足される必要がある。

 

① プレミアムオーディオ社、シャープ社及び譲渡先新会社のそれぞれの取締役会等により同契約により企図される取引を実行することの承認が得られること。

 

② 事業譲渡を実行するために必要な競争当局等からのクリアランスが取得できること。

 

③ プレミアムオーディオ社及びシャープ社によるデュー・デリジェンスが完了すること。

 

④ ヴォックス社及びシャープ社間で譲渡先新会社の運営に関する合弁契約書等が締結されること。

 

⑤ ヴォックス社及びシャープ社又は譲渡先新会社とオンキヨーとの間でライセンス契約及びトランジション・サービス契約が締結されること。

 

⑥ プレミアムオーディオ社及びシャープ社並びに特定の取引先との間でのライセンス契約が締結されること。

 

⑦ 譲渡対象事業に係る従業員の一定割合以上が譲渡新会社により雇用されること。

 

<事業譲渡契約におけるその他の重要な規定>

 

事業譲渡契約においては、以下の規定が含まれる。

 

① 譲渡先新会社又はそれらのグループ会社に対して、オンキヨーの子会社である「Onkyo China PRC」及び「Pioneer & Onkyo Marketing Asia Ltd.」の資産を、事業譲渡の実行後6か月以内に限り、無償で購入できる権利を付与する旨の規定。

 

② オンキヨーが、譲渡先新会社又はそれらのグループ会社から、事業譲渡の実行後、「S&O Electronics(Malaysia)Sdn. Bhd」その他のホームAV製品の製造を行う会社によって出荷された製品に対してプレミアムオーディオ社等が支払った金額の2%をコミッションとして受領することができる旨の規定。

 

③ 事業譲渡の対価の一部は、ヴォックス社からの借入金と対当額で相殺処理される旨の規定。

 

④ 事業譲渡の対価につき、S&O Electronics(Malaysia)Sdn. Bhd を含む、オンキヨーのホームAV事業に関する取引債権者に対する未払債務の弁済を使途とする旨の規定。

 

<譲渡価額及び決済方法>

 

– 譲渡価額:33億2,300万円(契約条件に従い、変更となる可能性がある。)
– 決済方法:事前の一部の債務と相殺の後、現金による決済(予定)。

 

<日程>

 

– 取締役会決議:2021年5月26日
– 事業譲渡契約締結:2021年5月26日
– 株主総会決議:2021年6月25日(予定)
– 事業譲渡実行:2021年7月1日(予定)

 

※事業譲渡は、6月25日に開催予定の定時株主総会における承認を受けた上で実行される予定。

 

 

■(オンキヨー)(開示事項の経過)事業譲渡にかかる契約締結に関するお知らせ(PDF):https://onkyo.com/ir/ir_news/date/2020/20210526_HAVjotosaishu.pdf
■VOXX International:https://www.voxxintl.com/

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。