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2020年10月21日【テクノロジー】

ボッシュ、商用車向け駆動ソリューション展開へ

NEXT MOBILITY編集部

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ボッシュはドイツ・シュトゥットガルト現地時間の10月8日、クライメートニュートラルな道路輸送の実現に向け、商用車のすべての車両クラスにおいて、内燃機関やバッテリーEV、燃料電池など、さまざまな種類の効率的なパワートレインを開発していくと発表した。

 

 

道路輸送における気候変動対策には、幅広い積極的な技術開発が必要となるが、商用車の場合は、CO2排出量が運転特性、積載量、走行距離によって大きく異なるため、パワートレインへの要求はかなり多岐にわたる。たとえば小型商用車は市街地の配達ルートのような短い距離を走行し、大型トラックは、物資や商品を長距離輸送する傾向がある。

 

小型商用車向け電動パワートレイン「eシティ・トラック(eCity Truck)」

 

 

 

物資やサービスに対する需要が着実に増加していることを考えると、今日配送車両や小売業者およびその他中小企業が存在しない市街地を想像するのは困難である。そのため、騒音に配慮した走行ができる、住民と環境にできる限り負荷をかけない先進的なパワートレインは社会からの要請といってよい。

 

 

ボッシュの電動パワートレインソリューション「eシティ・トラック」は、ゼロローカルエミッション(地域内における排気ガスゼロ)の低騒音走行を実現する。

 

eシティ・トラック」には、電気モーター、パワーエレクトロニクス、トランスミッションをコンパクトに一体化したeAxleで構成されるコンパクトモジュールと、トランスミッションを含まない電気駆動モジュールの、2つのバージョンを用意。

 

いずれのソリューションも簡単に組み込むことができ、重量が最大7.5トンまでの小型商用車に対応する。バッテリーの設計次第で、最大200kmの走行が可能であり、1日あたりの配送ルートの多くが80km未満であることを考慮すると、1回の充電で十分に走行可能と考えられる。

 

ボッシュのパワートレイン ソリューション事業部長Uwe Gackstatter氏は「ボッシュは、モジュラー式のeシティ・トラックにより、経済的でコンパクト、そして効率的な電動化パワートレインを実現します」と延べている。

 

7.5~26トンの地域配送トラックの経済的な電動化「eレギオ・トラック(eRegio Truck)」

 

 

 

ボッシュでは、郊外における商用車の電動化も推進しており、中型トラックと大型トラックに加え、市内バス、長距離バス、その他特殊用途向けに電動パワートレインソリューション「eレギオ・トラック」を提供している。

 

半径約250km圏内の地域交通を可能な限り経済的かつ効率的にするうえで重要な役割を果たすとともに、低騒音とゼロローカルエミッションも同時に実現。同システムソリューションは、電気モーター、インバーター、および車両制御ユニットで構成されている。

コンパクトな電気モーターは、トポロジーに応じて別体の電気ユニットとしてトランスミッションと組み合わせる、またはアクティブコンポーネントとしてリジッドアクスルに組み込むことも可能だ。

 

■長距離ルートと重量物運搬向けのパワートレインソリューション「eディスタンス・トラック(eDistance Truck)

 

 

長距離輸送ルートを走る車両は、その長い走行距離と運搬する重量ゆえに、CO2排出量の削減の可能性がとりわけ大きくなってしまう。

 

ボッシュでは、あらゆるニーズに合わせ、動力源がディーゼル、天然ガス、バッテリー、あるいは燃料電池でも、最適なパワートレインソリューションを提供していく考えだ。現在、内燃機関における水素利用の技術課題を調査中だが、今日使われているエンジン技術と既存の車両アーキテクチャは、すでにこの取り組みを発展させるための確固たる土台となっている。

 

重量物運搬向けの電動パワートレインソリューション「eディスタンス・トラック」は、燃料電池とハイブリッド駆動を含む。燃料電池システムは、長い走行距離と短い充填時間を兼ね備えるという点で有利。

 

再生可能エネルギーから生成される水素を使用すれば、燃料電池の運用はクライメートニュートラルとなる。ボッシュは設計の中核となるスタックやサブモジュール内の個々のコンポーネント、または商用車向け総合システムも取り揃えている。

 

eディスタンス・トラック」は簡単に既存の車両プラットフォームに組み込むことができるのが特徴。ボッシュは現在、スタートアップ企業であるPowercell社と協働してスタックを開発し、 市場に出す準備中だ。

 

計画では、まず2022年に燃料電池スタックの大量生産を開始し、2023年には完全な燃料電池システムとなるボッシュの燃料電池パワーモジュールを発売予定だ。すでにボッシュは、EUが出資するH2Haulプロジェクトの一環として、協働により燃料電池トラックの小規模フリートを製造し、公道に送り出している。

 

【天然ガスパワートレイン向けコンポーネント】

天然ガススタンドのインフラが十分に整備されている地域では、ボッシュの天然ガス駆動システムは、長距離ルート向けの従来の燃料に代わる実現可能な代替案だ。天然ガスは液体燃料と比べてCO2と粒子状物質(PM)の排出量が少なく、現地の燃料価格によっては費用面でも多くの国において利点をもたらす。ボッシュは、さまざまな車両タイプ向けに、実証済みの天然ガス技術の包括的な製品ポートフォリオを揃えている。

 

【ディーゼル技術】

ディーゼルエンジンは、商用車の主要なパワートレインであり、近い将来においても優先的に選択されるだろう。その利点には、高い効率性とそれに伴う経済的メリット、ならびに強力なエンジン性能が含まれる。ボッシュはディーゼル製品として、燃料噴射と燃料供給、エンジンおよびマネジメント、そして排出ガス後処理用のコンポーネントを取り揃えている。

 

ボッシュと中国のエンジンメーカーWeichai Power(濰柴動力)は、協働を通じて大型商用車向けディーゼルエンジンの熱効率を最大で50%まで高めることに成功した。

 

これまでのトラックの最大値が46%であったことを考えると、まさに画期的と言えるだろう。「これは、ボッシュがオンハイウェイ/オフハイウェイ用途のディーゼル駆動システムを体系的に改善していることを実証しています」と、先に登場したGackstatter氏は述べている。

 

新しいエンジンの特徴のひとつが、最大噴射圧2,500 barのボッシュのモジュラーシステムCRSN(商用車向けコモンレールシステム)。効率的な燃料供給と燃料噴射を確保するこのシステムは、拡張性が高く、最大8気筒までのエンジンに対応できるように設計されており、耐用年数は要件によって、最大160万km、オフハイウェイ用途では15,000時間におよぶ。

 

加えて、ボッシュのダブルインジェクション付きSCR(選択型還元触媒)システムに用いられる尿素噴射による排出ガス後処理は、ディーゼル車の排出ガスをさらに削減し、より経済的な資源利用に貢献するもの。

 

このシステムでは、エンジンの近くに配置された触媒コンバーター内、および離れて配置されたもうひとつの触媒コンバーター内に尿素が噴射される。システムは、高負荷/低負荷サイクルやコールド スタートといった走行条件に柔軟に対応し、窒素酸化物(NOx)の排出量を効果的かつ効率的に削減することができる。しかも、低燃費にも配慮して設計されている。

 

■駆動システムでのモノのインターネット化(IoT)による開発時間短縮とトラブルシューティングの迅速化

 

ボッシュは、駆動システムをネットワーク化し、車両ライフサイクル全体を通じてクラウドベースのサービスを提供する。IoTアプリケーションの一例として、大規模開発におけるインターネットベースの検証が挙げられる。

 

このプロセスにより、コネクテッドカーからパワートレインのデータが転送される。リモート解析により、異なるアプリケーションを同時にモニターして評価することが可能となり、駆動システム内の欠陥を早期に検出することができる。量産車向けの追加IoTアプリケーションは、特別に開発されたアルゴリズムを用いて各コンポーネントの差し迫った障害を取り除くことができ、ダウンタイムを効果的に防止する。

■ボッシュ:corporate.bosch.co.jp

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。