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2017年12月4日【特集】

トヨタ自動車、友山茂樹氏に訊くモビリティの未来とコネクティッド戦略(前編)

佃 義夫

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 日本に自動車が上陸して120年余り。産業としての歩みでも1世紀を超え、創業100年を迎える自動車系企業が相次いでいる。そうしたなか同産業では、「人と自動車との関わり」が大きく形を変えつつある。それは電動化であり、情報化であり、知能化という大きなうねりである。

 

クルマが変わる、自動車メーカーが変わる、サプライヤーが変わる、そしてバリューチェーンが変わる。そんな「自動車産業革命」とも云える大きな変革の波が押し寄せるなか、トヨタ自動車は2016年4月に『もっといいクルマづくり』と『人材育成』を主眼に、社内カンパニー制をスタートさせた。

 

 そのなかにあって特に注目されるのが「コネクティッドカンパニー」だ。「コネクティッドカー」つまり、つながるクルマはIT(情報技術)からAI(人工知能)へと進化。今後あらゆるモノがクラウドにつながるIoT(インターネット・オブ・シングス)へと向かう発展途上にある。

そこでトヨタの「コネクティッドカンパニー」プレジデントである友山茂樹専務に、トヨタのコネクティッド戦略、そしてそこから見えるモビリティの未来と課題について訊いた。(連載1回目・前半、聞き手:佃モビリティ総研<NEXT MOBILITY主筆>・佃義夫)

 

 

友山茂樹氏のプロフィール
– トヨタ自動車株式会社専務役員
– 事業開発本部本部長
– 渉外・広報本部統括
– 情報システム本部本部長
– コネクティッドカンパニープレジデント
– GAZOO Racing Companyプレジデント

友山茂樹氏は1958年生まれ。群馬大学機械工学科卒、1991年トヨタ自動車工業入社。豊田章男社長が係長時代に出会った後、トヨタ生産方式のトヨタディーラー版導入や「GAZOO」導入を手掛け、2004年e-TOYOTA部部長、中国出向を経て2010年・常務役員就任。事業開発、情報システム、IT・ITS本部、モータースポーツ本部など多様な部門を統括し、2015年専務役員に就任し現在に至る。(2018年1月1日付・副社長就任予定)

 

コネクティッドでクルマの新しい魅力、価値を創造する

 

——トヨタが社内カンパニー制をスタートさせて凡そ1年半を迎えた。現在、トヨタのコネクティッド戦略はKPIのどの立ち位置に居るのか。
 友山 従来の情報系・電子技術系・ITSなどが2016年4月のカンパニー発足で一本化を果たし、コネクティッドカンパニーの統一戦略として加速体制に入る時期にきている。当初、グローバルIT企業が自動車マーケットへ参入する動きをトヨタは「危機」と捉えていた。しかし逆に今はこれをチャンスと捉えている。

 

 例えば、トヨタが毎年数百万台のクルマを世界中に販売しているという事実。これによってトヨタは日々顧客とのリアルな接点を創出し続けている。

そしてこの接点を踏まえコネクティドカンパニーを発動したことを介して、新たなビジネスチャンスを創造していくとするコンセンサスが社内で確立した。トヨタは、この機運に乗ってビジネスに投資し、懸命に走っている段階だ。

 

——そもそも、「コネクティッドカーカンパニー」の使命とは。
 友山 その使命は3つある。まず「コネクティッドでクルマの新しい魅力、新しい価値を創造すること」、次に「お客様の期待を超えるスピードとフットワークでバリューチェーンを拡大し、モビリティ社会の発展に貢献すること」、そして「新たな事業を生み出し、自動車ビジネスを変革させること」だ。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。