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2015年7月5日【オピニオン】

イタリア・アレーゼのアルファロメオ歴史博物館探訪

坂上 賢治

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105年の歴史を綴るアルファ ロメオ歴史博物館が一般公開

 

アルファ ロメオ(本社:イタリア・ミラノ<Italia・Milan>、CEO<Maserati/Alfa Romeo CEO>:ハラルド·ウェスター<Harald Wester>)は、2015年6月25日、イタリア ミラノ・アレーゼで、同社105年の歴史を綴るアルファ ロメオ歴史博物館「La macchina del tempo – Museo storico Alfa Romeo 」を、一般に向けて公開した。( 坂上 賢治 / MOTOR CARS の2015-07-05掲載記事を転載 )

 

 

並記名として、La macchina del tempo(タイムマシン)とも名付けられたこの博物館「Museo storico Alfa Romeo」は、アルファ ロメオのブランド発信の中核的存在として、資料センター、ブックショップ、カフェ、イベント会場、ショールームのほか、テストコースも備え、アルファロメオの過去・現在・未来を、今日につなぐ施設となっている。

 

同館の歴史は旧く、その初開館は1976年にまでさかのぼる

 

同館の開館式は2015年6月24日、「Alfa Romeo Giulia」のワールドプレビューと共に行われ、6月30日から一般に公開されている。開館時間は火曜を除く、毎日午前10時から午後6時まで(木曜は午後10時まで)となっている。

 

 

実は同施設の最初の開館は旧く1976年、当時は、予約客に限り入館することが出来る施設だった。

 

 

しかしアレーゼの製造工場がやがて閉鎖され、それに伴って、同施設が、運営指示機能を持つ母体を失ったことにより、2009年に一旦閉鎖された。

 

2014年夏に改築工事が開始され、2015年に再開館へ

 

しかし、2012年を迎えた頃、アルファロメオのグローバルな再興計画の一環として、同ブランドの歴史を語る上で象徴的な場所にあるこの博物館を、新たに同ブランドを生まれ変わらせるための原点として位置付けられた。

 

 

この経緯から2013年末には、建築家のベネデット・カメラナ(Benedetto Camerana)氏を招聘して、ブランド再興と建物保存とを共存させる新たな設計の提示を依頼。

建物の改築作業は、2014年夏に開始され、12か月未満のうちに施設全体を対象とした大規模な復元計画が完成し、FCA Partecipazioniによる承認を受けた。

 

沿線の自動車道路からアルファ レッドのアクセントが目立つ建物

 

この新たな建築プロジェクトでは、施設全体の機能が、見直され、新たなブランドの活動や、予想される一般見学者の訪問導線に対応している。

そうした設計指針を、最も特徴付ける要素としては、突出した屋根から館の入口まで。また入口から展示ルートの開始点まで、新設のエスカレーターなど各部に、施設全体を貫く赤いアクセントがある。

 

 

このアクセントは「アルファ レッド」であることから、外部に突出した構造物は、近隣の自動車道からもよく目にとまり、1970年代の建築に置かれた近代的な設備として過去と現在とを繋く、博物館の再生の象徴となっている。

 

 

また建物全体のレイアウトは、空間中心部に代表されるように、アルファ ロメオのDNAを表すものとして、照明、言葉、サインが、下降するらせんに沿って浮かび上がり、時を超えたスタイルの継続と、技術的な一貫性を象徴するものとなっている。

 

アルファロメオブランドと施設は共通テーマで貫かれている

 

Museo storico Alfa Romeoに置かれた展示物は、アルファ ロメオの歴史を裏付ける重要な展示物というだけではなく、自動車の歴史そのものにおいても重要な、初期の24馬力の「A.L.F.A.」。

 


RL SUPER SPORT

 

さらにタツィオ・ヌヴォラーリ(Tazio Nuvolari)のドライビングにより伝説のレースであるミッレミリアで優勝した「6C 1750 Gran Sport」、Touring社によりコーチビルドされた「8C」、ファン・マヌエル・ファンジオ(Juan Manuel Fangio)のDドライブによりF1で優勝したGran Premio 159「Alfetta 159」、1950年代を象徴する「ジュリエッタ」から「Championship 33 TT 12」など、69の車種が展示されている。

 


A.L.F.A 15-HP-CORSA

 

ちなみに同施設の設計指針にもなっているテーマで、アルファ ロメオブランドにとって欠くことの出来ない3つの原則(真髄)ある。

そのひとつは「産業としての継続性を表すTimeline(時系列)」、ふたつめは「スタイルとデザインを合わせたBeauty(美しさ)」、そして3つめは「テクノロジーと軽さの結実であるSpeed(スピード)」、この3要素がアルファロメオブランドの核心とも云えるものだ。

 

2階全体は、ひとつめの神髄であるTimeline(時系列)で構成

 

そこで同館では、これらのテーマに沿って、それぞれクルマたちがフロアに分かれて展示されている。

ひとつめの神髄であるTimeline(時系列)は、2階全体を占め、アルファ ロメオの発展を最も良く表す19の車種が展示されている。

 

 

ここの展示には、それぞれの車種の歴史をさらに詳しく知ることのできる、双方向システム「interactive memory」も備えられている。

 


1900 C52 DISCO VOLANTE

GIULIA SPRINT GTA

 

加えて「Quelli dell’Alfa Romeo」と名付けられた展示には、工場の作業員からメカニックまで、テストドライバーからデザイナーまで、エンジニアからオフィスワーカーまで、会社の成長に貢献した多数の人々のネットワークにより100年以上にわたってどのように伝説が作られてきたかが示される。

 

1階全体は、ふたつめの神髄であるBeauty(美しさ)で構成

 

続くふたつめの神髄、Beauty(美しさ)の展示は1階にある。その中でテーマエリアが幾つかに分かれており、レイアウトはそれぞれの時代から9つの重要なサンプルを集めた「I maestri dello stile(スタイルの匠)」から、1930年代と1940年代にSuperleggeraブランドの下でTouring社により製造された車種を展示する「La scuola italiana(イタリア派)」まで、イタリアの大手コーチビルダーによるスタイルを思い起こさせるクルマたちが集う。

 

 

特に中央には、「Alfa Romeo nel cinema(映画に登場したアルファ ロメオ)」が配置されており、その横には1950年代と1960年代の経済成長と当時のイタリアのテイストを表した「Il Fenomeno Giulietta(ジュリエッタ現象)」と、「Giulia: disegnata dal vento(風がデザインしたジュリア)」が展示された。

 

半地下階は、3つめの神髄であるSpeed(スピード)の展示

 

最後の神髄、Speed(スピード)の展示は、半地下のフロア全体に拡がる。

 


TIPO 33/3

TIPO 179F “TEST CAR”

 

2つの世界大戦の間に行われたレースのスターたちを集めたマルチメディア空間の「Nasce la leggenda(伝説の誕生)」、F1レースへのデビューを記念する「Progetto 33」、あるいは「Le corse nel DNA(レースはアルファ ロメオのDNAに刻み込まれている)」など、アルファ ロメオのエンスージアストが、その主な勝利を支えたスターたちに会うことができる空間で、モータースポーツファンにとっては最もエキサイティングなエリアと云えるだろう。

 

 

そして来場者は最後に、「Tempio delle vittorie(勝利の殿堂)」を訪れることになる。

ここは、アルファ ロメオの歴史に残る10回の優勝の模様を画像、サウンド、ムービークリップで展示する空間である。360度の仮想現実フィルムによるアルファ ロメオの世界や、双方向機能を備えたアームチェアに座り、アルファ ロメオの伝説的優勝を4Dフィルムで体験することのできる部屋などが備えられている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。