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2021年4月20日【経済・社会】

JIS、フロント有機ガラスの適用を可能とする改正

NEXT MOBILITY編集部

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帝人のPC樹脂製ピラーレス・フロントウィンドウを採用したGLM社製のスポーツEV「トミーカイラZZ」。

 

 

経済産業省は4月20日、「JIS R3211」及び「JIS R3212」を改正し、フロントガラスへの有機ガラスの適用ができるよう、品質及びその試験方法を規定したと発表した。

経産省・ロゴ

近年、自動車用安全ガラスは、その造形の容易さから多様なデザインが実現可能なことや軽量化による燃費向上などを目的として、有機ガラス(硬質プラスチックを主体とした材料のガラス)の採用が進展しつつあるが、これまで日本のJISでは、フロントガラスについては衝突時の安全性、光の透過性、耐摩耗性などの様々な要求基準があるため、その適用を認めてこなかった。

 

しかし今回、経産省は、「JIS R3211」及び「JIS R3212」を改正し、フロントガラスへの有機ガラスの適用ができるよう、品質及びその試験方法を規定した。これにより、有機ガラスの客観的な品質の評価及びコスト削減が可能となり、フロントガラスへの採用が進展、自動車の燃費向上が期待できるとしている。

 

 

 

 

※タイトル画像:帝人のPC樹脂製ピラーレス・フロントウィンドウを採用したGLM社製のスポーツEV「トミーカイラZZ」。

 

 

[改正について]

 

<目的>

 

自動車の窓に使用される安全ガラスは、品質及びガラスの種類ごとに使用できる箇所が道路運送車両法に基づく保安基準において定められており、この保安基準には、グローバル化の進展に伴い、国際連合の協定(※)に基づく規則(以下、協定規則)に定める技術基準が採用されている。

 

この技術基準への適合を示す表示としては、「JISマーク」や「FMVSS(米国連邦自動車安全基準への適合表示)」「Eマーク(欧州連合指令への適合表示)」があり、これら適合を受けた安全ガラスのみが自動車に使用することを許されている。

 

従来、自動車用安全ガラスの材料は、ケイ素を主体としたものであったが、近年、自動車のデザインの多様化や軽量化による燃費向上を目的として、硬質プラスチックを主体とした有機ガラスが普及しつつあることから、2017年、この協定規則にそれに関する技術基準が追加された。

 

しかし、JISにおいてはこれまで、改正前の技術基準に合わせ、安全上、高い品質が要求されるフロントガラスには、有機ガラスの適用を認めてこなかったため、メーカーは、「FMVSS」や「Eマーク」といった認証を取得する必要があった。

 

今回経産省は、有機ガラスのフロントガラスへの普及を促進するため、協定規則に基づき、より具体的に品質及び試験方法を定めるため、「JIS R3211(自動車用安全ガラス)」及び「JIS R3212(自動車用安全ガラス試験方法)」を改正した。

 

※車両並びに車両への取付け又は車両における使用が可能な装置及び部品に係る統一的な技術上の要件の採択。並びにこれらの要件に基づいて行われる認定の相互承認のための条件に関する協定。

 

<主なポイント>

 

① 耐衝撃性及びその試験方法

質量 227g±2g で直径約 38mm の鋼球を 8.5m の高さから自然落下させた場合に有機ガラスを貫通しないこと、また、有機ガラスが複数の破片とならない旨を規定。

 

②ヘッドフォーム(人頭模型)衝撃及びその試験方法

衝突時に頭がフロントガラスにぶつかった場合の安全性を確保するための品質として、人頭模型を3m の高さから落下させた場合に人頭模型が有機ガラスを貫通しないこと、また、有機ガラスが複数の破片とならない旨を規定。

 

③耐摩耗性及びその試験方法

合わせガラス(プラスチックを中間膜に用いて2枚以上のガラスを接着し、破損しても中間膜により破片が飛び散らない特長がある。)と同様の試験を行い、同じ品質となるよう規定。

 

④耐候性、弾力性及び付着性並びにこれらの試験方法

既存の安全ガラスと比較して、長時間太陽光及び雨にさらされた場合外観の変化があること(耐候性)、硬質であること(弾力性)及び表面に施された皮膜が長時間太陽光及び雨にさらされた場合に剥離がおこらないこと(付着性)の品質が劣後することから、有機ガラス固有の品質として定め、これらの試験方法について規定。

 

⑤耐燃焼性及びその試験方法

車両火災時の安全性を確保するため、既存の安全ガラスと同様の試験を実施したとき、燃焼速度が110mm/分を超えないことを規定。

 

⑥耐湿性、可視光線透過率、透視ひずみなどの品質及び試験方法は、既存の自動車用安全ガラスと同じとした。

 

 

[期待される効果]

 

このJISの改正により、フロントガラスに関して協定規則と整合化し、かつ、より具体的な品質及び試験方法を定めることで、有機ガラスの客観的な評価が可能となる。

 

また、JISマーク表示制度に基づく認証を取得することで、日本の法令に適合していることを示すことが可能となり、米国の「FVSS」等、他国の認証取得よりも手続や経費の面で優位となる。これにより、フロントガラスへの有機ガラスの採用が進展し、ひいては安全ガラスの軽量化により、自動車の燃費の向上に資することが期待できる。

 

※日本産業標準調査会(JISC)ホームページ<https://www.jisc.go.jp/のJIS検索で、「R3211」及び「R3212」で検索することで、本文の閲覧が可能。

 

 

[担当]

 

経済産業省 産業技術環境局 国際標準課
(課長) 黒田 (担当) 藤澤、堀坂、山田

メール: s-kijun-ISO@meti.go.jp/電話:03-3501-9277)

 

 

■日本産業標準調査会(JISC):https://www.jisc.go.jp/

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。