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2021年6月11日【エレクトロニクス器機】

東芝、世界最小サイズ・最高画質のLiDARを開発

NEXT MOBILITY編集部

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図1: インフラ監視に活かされるLiDARの特長

 

 

東芝は6月11日、自動運転や社会インフラ監視に不可欠な「目」の役割を担う距離センシング技術「LiDAR」 において、「ソリッドステート式LiDAR」向けに、最長測定距離200mを保ったまま、世界最小のサイズと世界最高の解像度を実現する受光技術および実装技術を開発したと発表した。

 

図5:試作したLiDARモジュール(350cc以下)

 

 

概要
この技術の採用により同社従来比で1/3のサイズとなる約350cc、および、4倍の解像度となる1200×80画素を実現した。さらに独自のデバイス温度補正技術を組み合わせることにより、振動・風圧・気温変化などが厳しい環境においても高い性能を維持できることを確認した。集中豪雨時の斜面崩壊や道路等への土砂流入、突風による道路等への落下物、大雪による積雪等の迅速な検知など、屋外への常時設置が必要となるインフラ監視への適用も可能となるとしている。

 

開発の背景
LiDARは、レーザ光を物体に反射させ、戻ってくるまでの時間を計測して距離を測る技術。物体までの距離を直接測るため、周辺環境の立体構造を瞬時に高精度に観測することができ、自動運転システムにおける活用のみならず、高精度なインフラ監視を実現する技術としても期待が寄せられている。例えば、LiDARを用いることで、道路や建物内等様々な場所における落下物を監視することができ、災害発生時等における迅速な状況把握や通行可否の判断につなげることができる。LiDARはレーザ光を用いることから、一般的なカメラと異なり、暗闇、霧、雪など視界不良の状況にも強く、長距離の監視が可能。LiDARの市場規模は急速に拡大しており、2030年には車載用のみで4,200万台/年の市場規模が予想されている。

 

東芝は、2020年7月、従来の機械式LiDARと比べて小型化・低コスト化が期待できるソリッドステート式LiDARにおいて、課題とされていた長距離測定・高解像度の両立を可能にする2次元受光デバイスSiPMを開発。しかし、高度な自動運転と高精度な社会インフラの監視を実現するには、画角・解像度・サイズにおいて、さらなる進化が必要だった。広画角・高解像度なLiDARは、死角が少なく小さな危険物まで検知することができる。また、インフラ監視への適用時は振動や風圧の影響が大きい場所や、急斜面の近くなど厳しい環境下の常時設置・稼働が必要となるため、耐震・耐風補強等が容易な小型・軽量化が求められる。加えて、温度変化が大きい環境下でも性能が低下しないことも重要となる。

 

図2: インフラ監視におけるLiDARの広画角化・高解像化(上)、小型化(下)の重要性

 

 

技術の特徴
そこで東芝は、ソリッドステート式LiDARの性能のさらなる向上に向け、受光デバイスSiPMの感度の向上と小型化の両立を実現する受光技術を開発した。

 

SiPMは、受光セルとその受光セルを制御する複数のトランジスタ回路から構成される。搭載するトランジスタ回路のうち、コア部分を微細化したトランジスタ回路に変更することで小型化した。また、受光セルとコア回路の間に高耐圧トランジスタによる高耐圧部を設け、SiPMの感度向上に重要な受光セルへ高電圧(VEX)を供給することで、受光デバイスSiPMの感度の向上と小型化の両立に成功した。さらに、新たに開発した絶縁トレンチをトランジスタと受光セルの境界面に挟むことで、これまでトランジスタの保護に必要だった幅の広いバッファ層が不要となり、さらなる小型化を実現した。新規開発したSiPMは、2020年の開発時から、サイズを1/4に縮小しつつ、感度を1.5倍に高めた。東芝は、このSiPMを採用し、さらに、長年培った基板設計とモジュール実装の技術でLiDARモジュールの高密度実装を実現し、従来に比べ、LiDARの解像度を4倍に高めるとともに、LiDAR全体の容積を世界最小の350cc以下に抑えることに成功した。

 

また、SiPMの温度にあわせて受光セルに供給する電圧を適切に調整する自動温度補正技術により、外部の温度変化によらず高い性能を維持することが可能。振動・風圧にさらされるLiDARを小型・軽量化することで、LiDARの設置条件を緩和し、アプリケーションの拡大に貢献するとしている。

 

図3:今回開発したトランジスタ混載SiPM

図4: 絶縁トレンチ導入による従来のSiPMの小型化

図6:試作したLiDARによる日中での障害物検知(*6)

 

 

今後の展望
東芝では、今後も、LiDARの更なる高性能化(長距離測距性能、高解像度、小型化)を進め、高度な自動運転と高精度なインフラ監視の実現を目指し、また、ロボティクス・ドローンやセキュリティ等の他分野にも横展開できるよう、ソリッドステートLiDARの開発を進め、より安心・安全な社会の構築に貢献するとしている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域の取材活動を経て同社出版局へ。コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に環境&リサイクル紙、車両ケア&整備ビジネス専門誌等の創刊誌編集長を歴任。独立後は一般誌、Web媒体上でジャーナリスト活動を重ね30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。