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2017年12月14日【オピニオン】

トヨタ自動車とパナソニック、車載用角形電池で協業へ

坂上 賢治

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したがってパナソニックは、培ってまいりました強みを活かしながらも、「チャレンジャー」のマインドを持って、電動車の普及に少しでも貢献してまいりたいと思っております。

是非、ご期待いただければと思います。ご清聴ありがとうございました。

以上

 

 

今後、伸び代が大きい電気開発に取り組み、電池量産化で圧倒的優に経つ構え

 

ちなみに現在、パナソニックが米国の電気自動車メーカー「テスラ」に納入している18 × 65ミリの円筒形18650電池は、本来ノートパソコンなど汎用電子製品向けに開発されたもの。

 

 

従ってこの電池は、自動車利用のために専用で開発されたものとは異なる。このため、瞬間的な高出力を取り出す機会のある乗用車用としては、正極につながる電気の流れを充分に受け止められるだけの構造ではない。冷却が必要になる理由のひとつはここにある(11月4日から一般書店にては発行した自動車ビジネス雑誌「NEXT MOBILITY」にも関連記事を掲載中)。

 

 

今現在は特定の自動車メーカーに対して主流として流通しているが、未来永劫使えるものではないことは、電池関連の技術者であれば、誰もが知る事である。有り体に云ってしまえば、今後の「伸び代」は乏しいのが実情だ。

 

電池開発でも自前主義を貫くトヨタだが、遂に専業メーカーの手を借りる事に

 

そもそも両社は、初代プリウスの開発から車載用電池開発に取り組んでおり、当初の丸形・円筒形電池の搭載から、角形形状へと進化。

今はニッケル水素電池に関しては、当初パナソニックの技術移管を受けて、トヨタ自らがトヨタウエイ(自前主義)に則って、自社工場を建設。自らバッテリ生産に乗り出して長らく経っており、ニッケル水素電池に関しては、相応の技術的ノウハウの蓄積を果たしている。

 

今回は、これを受けて、冷却に課題がある円筒形18650電池ではなく、より運用が容易な角形リチウムイオン電池の開発・量産を進めていく構え。

 

 

リチウムイオン電池に付きまとう課題解決も当面の車両量産に欠かせない

 

なおリチウムイオン電池も課題があり、自動車の耐用年数全域に於いて高い容量を維持できるだけの充放電維持能力に課題がある。

 

 

これは日産自動車が永らく販売してきたLEAF(リーフ)で露呈している問題であり、先代リーフは現時点では、バッテリユニットの著しい劣化により、健全な中古車価格を維持することがマーケットで実現できずにいる。

 

 

これを踏まえると本来の現状技術では、今のガソリン燃料と同じく、リチウムイオン電池ユニット自体を車両本体と切り離し、リース供給するなどの方策が適していると考えられるが、こうした車両販売・ユニット供給の形を、少なくとも日本の消費者が受け入れられるかは、まだ未知数だ。

 

現段階では全固形電池の開発は文字通り「海図なき航海」に値する

 

もちろんこれに併せて、トヨタ自身が実用化を目指すと公言している現段階では「夢」の全固形電池の開発にも両社が関わっていく構えだ。

ただし全固体電池の開発は「イバラの道」というより、豊田章男社長が企業運営で比喩するいわゆる「海図なき航海」に近い状態だ。

 

その構造は、電解液とセパレータ機能に成り代わり固体電解質がその役割を担うというもの。個体になると現在の液体構造とは異なり、発火の危険性は低くなる事と、液体ゆえの温度変化の耐性に劣ることがなくなることから、理論的には安定電圧の維持という面では有利だ。

 

ただ固体ゆえに、現行の液体タイプとは異なり、電気抵抗が飛躍的に高まってしまう。この課題が目下、開発過程においての課題となっており、トヨタ社内の開発者にとっても、この抵抗値をとのように突破するかかが鍵のひとつとなっている。

実際には、全固体電池も未来永劫の技術とは云えないかも知れないが、ひとまずこのシステムが完了すれば、電気自動車の普及に際して大きな弾みが付く可能性は大きい。

 

 

実は、ニッケル水素・リチウムイオン・全固形、いずれも一長一短がある

 

また併せて、既存型のリチウムイオン電池やニッケル水素電池の進化もまだまだ目が離せない。トヨタは広く電動車を捉えると、ハイブリッド車両として数百万台単位で、車両量産を続けている世界でも希に見る電動車輩出メーカーであるからだ。

 

実際、瞬間的な高出力を取り出すという面では、今の所もリチウムイオン電池に歩があるが、細かな電力の出し入れを行う場面や、車両生涯に亘って安定的に電力の取り出しを維持し続けるしいう面では、実はニッケル水素電池の方が安定感が高く、歩がある。

 

つまり見方を換えると、リチウムイオン電池より、ニッケル水素電池の方が使い勝手で優れるケースもあるのだ。場合によっては、1台の車両にリチウムイオン電池とニッケル水素電池を併用するというやり方すら考えられる。

 

これが今もトヨタ自身が、自前の工場を建て、一部のプリウスにニッケル水素電池を搭載している大きな理由のひとつである。併せて蓄電池の調達コストも課題だ。欧州でフォルクスワーゲンAGも、この点で苦労をしており、内製できるエンジンとは異なり、外部調達ではスケールメリットが効きにくく、車両1台当たりの損益分岐点は大きく上昇する。

 

電池技術は日進月歩であり、明日の行方はまだ見通せないが、現在のハイブリッド車と電気自動車、燃料電池車の共存と同じく、当面はニッケル水素電池・リチウムイオン電池・全固形電池の共存が進むのだろう。

 

またこれに対して、目下、パナソニックが量産している円筒形電池の車両搭載については、長い時間を掛けて徐々に搭載率が下がっていくものと考えられる。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。