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2020年12月19日【アフター市場】

横浜ゴム、新中期経営計画を策定

NEXT MOBILITY編集部

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横浜ゴムは2月19日、2018年度から取り組んできた中期経営計画「グランドデザイン2020(GD2020)」の終了を受け、2021年度から2023年度までの新中期経営計画「Yokohama Transformation 2023(YX2023)」(ヨコハマ・トランスフォーメーション・ニーゼロニーサン)を発表した。

 

 

自動車産業を取り巻く環境はCASE、MaaS、DX(デジタルトランスフォーメーション)など大変革の時代を迎えている。こうした中、横浜ゴムでは「YX2023」の下、既存事業における強みの「深化」と、大変革時代のニーズに応える新しい価値の「探索」を同時に推進し、次世代の成長に向けた「変革」を図るとしている。これにより、2023年度には過去最高の売上収益7,000億円、事業利益700億円の達成を目指す。さらに2025年度には2006年度から2017年度の中期経営計画「グランドデザイン100(GD100)」で掲げた売上収益7,700億円、事業利益800億円を達成し、過去100年の集大成にするとのことだ。

 

 

◾️「GD2020」の総括

 

タイヤ事業ではタイヤ消費財において「プレミアムタイヤ市場における存在感の更なる向上」、タイヤ生産財において「OHT(オフハイウェイタイヤ)を成長ドライバーとして次の100年の収益の柱へ」、MB事業では「得意分野への資源集中」を掲げ、商品力とブランド力の強化、商品ラインアップの充実や生産・販売体制の拡充など、各事業の強みを再定義した成長戦略に取り組んだ。2020年度の新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う経済減速により売上収益、事業利益は目標を達成できなかったが、財務体質は確実に改善し、2016年度のATG買収時に3,359億円だった有利子負債を2020年度には2,078億円と大幅に削減した結果、D/Eレシオは目標の0.6倍を上回る0.5倍となった。また、営業キャッシュフローは目標の3年間累計2,000億円を上回る2,365億円、配当性向は目標の30%以上を維持し、当初の財務目標を達成した。

 


 

 

◾️「Yokohama Transformation 2023(YX2023)」の概要

 

1. タイヤ事業

現在のタイヤ市場は乗用車用などの「タイヤ消費財」とTBR(トラック・バス用タイヤ)、農業機械用などの「タイヤ生産財」に大別され、市場規模はほぼ同等と見込んでいる。しかし、今後CASE、MaaS、などの普及により個人消費の車が減少し、人や物の移動を支えるインフラ車両が増えることでタイヤ消費財が「生産財化」していくと予想。こうした考えの下、タイヤ消費財事業では高付加価値商品の販売拡大に向けた取り組みの「深化」を、タイヤ生産財事業では4つのテーマに沿った市場変化の取り込みを「探索」する。

 

 

2. タイヤ消費財:高付加価値品の比率を最大化

高付加価値商品の主力であるグローバルフラッグシップタイヤブランド「ADVAN(アドバン)」、SUV・ピックアップトラック用タイヤブランド「GEOLANDAR(ジオランダー)」、そして「ウィンタータイヤ」の販売比率の最大化をテーマに掲げ、①ADVANとGEOLANDARの新車装着の拡大、②補修市場でのリターン販売強化とウィンタータイヤを含む商品のサイズラインアップ拡充、③各地域の市場動向に沿った商品の販売を強化する「商品・地域事業戦略」に取り組む。これにより2023年度には2019年度比で「ADVAN」は150%、「GEOLANDAR」は115%、「ウィンタータイヤ」は120%の販売伸長を計画し、3ブランド合計の販売比率を現在の40%から50%に引き上げる。

 

 

3. タイヤ生産財:市場変化を取り込み、事業をさらに強化

CASE、MaaSなど大きな市場変化の取り込みとして新たな提供価値を「探索」し、4つのテーマに取り組む。またOHT(オフハイウェイタイヤ)事業、TBR事業の強化に取り組む。

 

<コスト>
市場の変化に伴うコスト低減への要求の高まりを見越し、インドの乗用車用タイヤ工場を「横浜ゴムグループで最も安くタイヤを作る工場」と位置づけ、低コストモデルの確立を目指す。またタイのTBR工場においても低コストモデルでの増産を検討していく。

 

<サービス>
車両保有の法人化の進展を見越し、タイヤ単体だけではなくサービスのセット提供を推進するため、全国の販売・物流ネットワークを活用しサービスカーの導入を拡大することによりサービス体制の強化を進める。

 

<DX>
先進タイヤセンサー開発を加速化し、機能の追加に従い段階的にサービスや顧客を拡大していくことで、新たな付加価値サービスを創出する。

 

<商品ラインアップ>
運輸・物流業界では車両の電動化・無人運転に伴い、運行距離や使用状況に応じて多様な品種のタイヤが求められることが予想される。この物流の変革に向け、当社の強みである幅広い商品ラインアップをさらに拡充し、市場での優位性を確立する。

 

 

4.OHT事業:「さらなる成長ドライバー」として強化

2021年度から開始した横浜ゴム、ATG、愛知タイヤ工業の事業統合により、成長をさらに加速化させる。そしてマルチブランドによる市場展開と顧客対応力を強みに事業の強化を進める。また積極的な増産投資を行い、2025年度には売上収益1,400億円、全社利益の3割を占める事業に育てる。

 

5.TBR事業:成長に向けた事業基盤の強化

引き続き米国ミシシッピ工場の安定供給の確保に努めるとともに、旺盛な需要に応えるために増産投資を計画し、2025年度には1,000億円までの売上拡大を目指す。

 

6.MB事業

MB事業では「成長性・安定性の高いポートフォリオへの変革」をテーマに掲げ、強みであるホース配管事業と工業資材事業にリソースを集中してMB事業の成長を牽引し、安定収益を確保できる体制を構築する。一方、ハマタイト事業は、得意分野への集中による事業体質の改善を、航空部品事業は構造改革を断行し、時代に見合った事業展開を目指す。

 

7.経営基盤:「人事戦略」「ESG経営」

「人事戦略」は人事制度の変革による経営・管理職層のレベル強化や環境変化に迅速に対応できる強い組織作り、従業員の働き方改革などを推進する。「ESG経営」はCSRスローガン「未来への思いやり」の下、今後も環境に配慮した製品の提供に努めるとともに、カーボンニュートラルを達成する取り組みや地域社会に根差した支援活動を推進する。また、コーポレートガバナンスのさらなる強化と安心・安全で働きやすい職場作りを目指す。

 

財務目標(2023年度目標)
売上収益:7,000億円
事業利益:700億円
事業利益率:10%
D/Eレシオ:0.4倍
ROE:10%
ROIC:7%
営業CF:2,500億円(3年間累計)
設備投資:減価償却費以内 (除く戦略投資)

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。