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2020年10月16日【カーリース】

消費行動に巻き戻しの動き?JCB、9月後半の国内消費指数を発表

NEXT MOBILITY編集部

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 ジェーシービー(JCB)とパートナ―企業のナウキャストは10月16日 、国内消費指数「JCB消費NOW」の9月後半(9月16日~9月30日)の速報値を更新した。同指数は、プライバシーを保護した形で加工したJCBカードの取引データを活用しており、現金も含むすべての消費動向を捉えているのが特徴だ。

 

 

今回の指数について、ビッグデータ分析を担当したナウキャストでは、「これまで低調だった「旅行」「宿泊」「外食」「娯楽」などのサービス消費に回復の兆しが見える一方で、これまで好調だった「家電」「家具」「EC」「コンテンツ配信」の成長率が鈍化傾向にあり、コロナ禍以降加速した『巣ごもり消費』等への消費行動のシフトに巻き戻しの兆しがあるのではないか」と分析している。

 

ナウキャスト分析による概要については以下の通りだが、9月後半については、以下2点の特殊要因があることに留意したい。

 

①2019年消費増税前駆け込み要因

2019年消費増税前の9月は小売・サービス業ともに駆け込み需要があったため、2020年9月後半の数値が実体よりも弱く見える可能性がある。そのため以下項目については、2018年・2019年・2020年の3ヵ年での指数比較を参考に実体経済を分析していく必要がある。

 

▼特に駆け込みがあった業種
【マクロ】各種商品小売業、織物・衣服・身の回り品小売業(アパレル)、自動車小売業、機械器具小売業、医薬品・化粧品小売業、その他小売業、EC、旅行、医療、交通、娯楽
【ミクロ】百貨店、家具、医薬品、貴金属、スポーツ用品、カー用具、ディスカウントショップ、航空旅客、鉄道旅客

 

② 連休(カレンダー)要因

2018年は9月15日からと22日からそれぞれ3日間、2019年は9月14日からと21日からそれぞれ3日間の連休があり、9月前半と後半に連休が分散した。対して2020年の9月は、前半は土日を除き連休がなく、後半に連休(4連休)が集中した。

 

 

【9月後半・参考系列(注)ハイライト】

 

 

1)昨年の増税の影響などあり「小売総合」が下落する一方、回復で足踏みが続いていた「サービス総合」が大きく下げ幅を縮小し回復の兆し。

 

 

新型コロナウイルス新規感染者数(陽性確認者数)の増加ペースが落ち着いたことで、「サービス総合」は前年比-11.2%となり、9月前半(前年比-16.4%)から減少幅を5ポイント以上大きく縮小し、サービス消費回復の兆しをみせた。一方で、「小売総合」は、上述した①増税前駆け込み要因によって実体よりも大幅に下落しているように見える可能性が考えられるため、今後その動向は注視していく必要がある。(参照:指数3ヵ年比較)

 

 

※新規感染者数は、各期間中の日次合計値(全国)
参照元:厚生労働省・オープンデータ「陽性者数」 www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/open-data.html

 

 

(参考)▼指数3ヵ年比較

 

 

 

 

2)「旅行」は前回から20ポイント以上下げ幅を縮小、「宿泊」「外食」「娯楽」も約10ポイント下げ幅を縮小し、大幅に回復。「交通」「航空旅客」「鉄道旅客」は回復傾向にあるが足踏み続く。

 

4連休を含む9月後半は、「Go To トラベル」キャンペーンの影響か、「旅行」は前年比-22.0%と、前回(前年比-43.0%)から20ポイント以上大きく下げ幅を縮小した。また、「宿泊」「外食」「娯楽」も約10ポイント下げ幅を縮小し、これまで回復で足踏みが続いてきたサービス消費に回復の兆しが見えた。「外食」は、酒を提供する飲食店などに対する東京都の営業時間短縮の要請が終了した影響を受けてか「居酒屋」中心に回復がみられ、「娯楽」では、イベントの開催制限の緩和で、一部の映画館で全席販売が開始されたことにより「映画館」も20ポイント以上下げ幅を縮小し、大きく回復した。

 

 

一方で、「交通」は、回復傾向にあるものの、同じく外出に絡む「旅行」や「宿泊」に比べ、回復ペースは緩やかな状態が続いており、「航空旅客」や「鉄道旅客」の回復は鈍い状態となっている。これは、消費者が外出抑制を緩和しつつあるものの、飛行機や鉄道での移動を伴う「遠出」ではなく、感染リスクを避けるため自動車等で近場への移動にとどめる傾向があることが考えられる。

 

 

※5月前半「映画館」は取引データ少なく計算不可。

 

 

 

 

3)「EC」「コンテンツ配信」のデジタル消費は伸び幅が縮小。

 

「EC」、「コンテンツ配信」は、新規感染者数の増加が落ち着いた8月後半以降いずれも上昇幅の縮小が続いている。年齢別で見ると、レジャー消費が回復してきた9月後半、25歳以上の全ての年齢で「コンテンツ配信」が減少傾向にあり、特に70代後半以上の高齢層は前年並みに戻ったことが見て取れる。

 

 

 

 

(参考)▼指数3ヵ年比較

 

 

 

 

4)「家電」や「家具」の耐久財消費は、2019年消費増税前の駆け込み影響で前年比下落。

 

 

家電などを含む「機械器具小売業」や「家具」などの耐久財消費は、昨年が増税前の駆け込み需要の影響を大きく受け強い数値が出ているため、今回の数値は実体よりも弱く見えている。ただ、増税がなかった2018年と比較してみても、9月の前半以降、成長は低調となっている様子が見えるため、今後も動向を注視する必要がある。

 

 

 

 

(参考)▼指数3ヵ年比較

 

 

 

 

 

 

※記事内グラフ出所:JCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」

 

 

■「JCB消費NOW」:www.jcbconsumptionnow.com/member/register

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。