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2020年10月16日【アフター市場】

日本初の電動キックボード公道実証「新事業特例制度」で認定

NEXT MOBILITY編集部

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 マイクロモビリティ推進協議会の参画会社3社による電動キックボードの公道(特定エリアの車道+自転車レーンのみ)実証実験計画が10月16日、産業競争力強化法に基づく〝新事業特例制度〟として認定された。

 

このマイクロモビリティ推進協議会とは、電動キックボードの事業者が中核となってマイクロモビリティの社会実装を推し進めるべく2019年5月に設立された団体だ。主な参画法人は、先の通り実証に参画する株式会社EXx(以下、EXx)、株式会社mobby ride(以下、mobby ride)、株式会社Luup(以下、Luup)の3社の他、Rird Rides、Lime、長谷川工業などでLuupの岡井大輝氏が会長を務める。

 

 

 ちなみに電動キックボード自体は同推進協議会の参画会社に於いて、安全を確保した上で既に国内でも試行し始めている。

 

ここでは、敢えてそうした推進協議会外の取り組みも含めると、その形態は以下の3つに分類できると考えられる。(1)原付車両化させて車道を走行しているもの。(2)原付車両化せずに車道や歩道などを走行しているもの。(3)今回の特例制度下などで原付化された電動キックボードの一部要件を緩和した形で、車道と自転車レーンを走行するもの(このうち3は、あくまで10月中旬以降に実施されるもの)。

 

それらのうち「(1)原付車両化し、車道を走行しているもの」については、現行の法規制上の問題はないものの、マイクロモビリティ推進協議会としては、車道のみを走行することへの危険性を懸念して原付車両としての走行はあえて推し進めてこなかった。また「(2)の原付車両化せず、車道や歩道などを走行するもの」については法令上の措置を充足しておらず、不適切な走行利用を憂慮してきた。

 

 

 これらの現況を踏まえてマイクロモビリティ推進協議会では、広く社会に於ける〝ラストワンマイルの移動手段が不充分である〟こと、〝超少子・高齢化社会が浸透している〟こと、〝買い物難民が増加している〟こと、〝高齢者の自動車事故が増加傾向にある〟こと等の社会変化を鑑み、マイクロモビリティの社会実装が街の活力を発展させる鍵となると考えている。

 

そこで同推進協議会は、規制官庁や街づくり関係者と慎重に対話を重ねた上で電動キックボード規制適正化の実現に乗り出した。今実証実験は安全性の確認、利便性の検証を丁寧に行っていく構えだ。

 

 翻(ひるがえ)ってみると今日、新型コロナ感染症拡大の影響を受けて、小型・一人乗りモビリティである電動キックボードは、世界各国の都市で導入時の不協和音を伴いながらも、走行レーン整備の方策が進められている。

 

 

もちろん日本でも、公共交通機関を補完できる移動手段が求められていることから、同推進協議会は、その役割を担え日本社会に受け入れられる新たなモビリティ手段の姿を目指している。実際、今回は全国各地域のまちづくり関係者や規制官庁と対話を重ねた結果、まずはその第一歩となる実証認可を得ることができている。

 

今特例措置上で、電動キックボードは法令上原動機付自転車に該当するものの、特定エリアでは普通自転車専用通行帯(歩道ではない一般的な「自転車レーン」を指す)の走行が可能になる。またあくまでもこれは特例措置であり、認定を受けていない事業者や個人の電動キックボードの走行には適用されないものとなっている。

 

 具体的な実施期間は、2020年10月中旬以降に開始され、終了時期は2021年3月末とした。実施エリアはEXxが東京都世田谷区の全域、渋谷区の全域、神奈川県藤沢市の全域、千葉県柏市の一部エリア。mobby rideが、福岡県福岡市、広島県尾道市、愛媛県今治市、兵庫県神戸市(いずれも一部のエリア)。Luupが東京都千代田区の一部エリア、新宿区の一部エリア、世田谷区の全域、渋谷区の全域となる。

 

マイクロモビリティ推進協議会は今回実証を通して、来る2021年前半目処に検討がなされる「国家戦略特別区域法に基づく運転者の要件等の特例措置」を視野に電動キックボードの適切な走行条件の検証を通して自らの立ち位置を模索。未来を切り拓いていく姿勢だ。

 

参考資料:成長戦略フォローアップ :https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/fu2020.pdf

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。