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2022年9月21日【テクノロジー】

ABボルボ、2025年からFCトラックの顧客実証を開始

坂上 賢治

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現在、スウェーデン・イエテボリを拠点に燃料電池トラックの試走テストを消化中

 

ABボルボ傘下のボルボトラックスは9月20日現在、スウェーデン・イエテボリを拠点に燃料電池トラックの試走テストを行っており、来たる2025年からのセカンドフェーズでは、北欧エリアの特定顧客間による商用輸送を想定した公道実証テストを行う予定であると発表した。( 坂上 賢治 )

 

水素が動力源となる燃料電池電気トラックは、最大1,000キロメートルを走破するディーゼルトラックと比肩する程の航続性能を持つため、隣国に跨がり、または時に超えていくような長距離輸送に適している。

 

 

そこで2025年からのセカンドフェーズでは、先の通り、北欧の特定顧客間輸送を想定して実施され、その後、数年間を掛けて追加の燃料電池トラックが順次導入されていく予定という。

 

初期テストでは動力源に対して厳しい要求を突きつける過酷な条件下で実施

 

現在、初期のパイロットフェーズを管理しているボルボ トラックス・グローバルプロダクトマネジメント担当SvPのジェシカ・サンドストロム氏( Jessica Sandström )は、「初期テストで燃料電池電気トラックの秘めた可能性を浮き彫りに出来ると信じています。

 

この期間のテストは、パワーユニットに対して厳しい要求を突きつける過酷な条件下で実施・消化され、最大65トンの重い積み荷を載せて運転する機会もあります。

 

初期テストの目標は、積載作業時などでの課題発見、走行性能の確認、ハンドリングなど、トラック輸送上で起こり得る様々な事例を調べることです。

 

 

電気を生成するスタックは300kWの発電能力を持つ2つの燃料電池によるもの

 

そもそも燃料電池はBEVとは異なり外部電源から充電する代わりに、車体に充填したタンクのグリーン水素( 再生可能資源由来の水素/風、水、太陽などの再生可能エネルギー源を使用して生成される )から独自で電気を生成します。

 

電気を生成するスタックは300kWの発電能力を持つ2つの燃料電池によるもので、この際、放出される唯一の副産物は水蒸気のみ。水素燃料の充填時間は15分未満です。

 

但し燃料電池技術は現段階に於いて開発の初期段階にあり、多くの利点があると思われる一方で、幾つかの課題も残っています。なかでも特に解決すべきものはグリーン水素をどのような形で大規模生産するのか。燃料インフラなどの供給インフラをどのように敷いていくのかなどです。

 

 

燃料電池はボルボとダイムラーの合弁、セルセントリックから供給される

 

なお現段階のパイロットフェーズでは、走行途中で充填水素が不足する事態を起こさないために、グリーン水素の満充填が発着点となるイエテボリ拠点のホームデポで満充填されています。

 

次のセカンドフェーズでは、水素充填の拠点が限られる可能性がありますが、その段階に到達する頃には、多くの産業がCO2削減のためにグリーン水素に依存する流れが定着していく事になると考えられており、今後数年間あれば、グリーン水素の供給が大幅に増加すると予想しています。

 

ですから燃料電池トラックは、これから数年の内に、より長く、より重い貨物を積載する大型輸送手段として重要になものになるでしょう」と話している。

 

 

なおテスト車両に搭載される燃料電池は、ABボルボグループとダイムラートラックAGの合弁会社であるセルセントリック( cellcentric )によって供給される。セルセントリックは今後、大型燃料電池車向けにヨーロッパ最大の水素生産施設の 1つの建設計画の実施に入る予定だ。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。