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2022年4月21日【特集・解説】

ジェイテクト佐藤和弘社長に訊く、CASE時代を生き抜く道

NEXT MOBILITY編集部

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ジェイテクトとしての強みを生かすため一体化を決断

 

 

――事業領域が異なる部分で、ジェイテクトとしての一体感を得ることが難しい状況だったのですね。

 

 

 

 佐藤 顧問時代の客観的な視点でジェイテクトを俯瞰(ふかん)すると、豊田工機の工作機械というのは、トヨタ自動車向けの工作機械。特にエンジン部品を加工するための工作機械を作ってきた。

 

つまりトヨタ自動車お抱えの工作機械メーカーだった。従って一般の市販向け工作機械や研削盤で、我々は独自の強みについて意識する事がなかった。

 

 翻(ひるがえ)って自社の周辺環境を長い目で見ると、いずれエンジン製造は縮小していく状況であるから、未来を視野に一般向けの工作機械にも真摯に取り組まねばならない。しかし実際には、こちらにもあまり力を注いでこなかった。

 

 旧光洋の軸受にしても、赤字すれすれの状況下でありながら十分に攻め切れておらず、今後必要なソフト開発に係る領域が活性化していない。 加えて代理店を筆頭に、外部からの声に耳を傾けると、ライバルメーカーと比較して様々な弱点も認められた。

 

 そういう事が半年間の顧問時代に見えてきたものですから、社長になった時に〝早い段階で自らのブランドを統一したい〟と思っていました。

 

 ただ去年が光洋ブランドの100周年だったので、100年の節目をまずは迎えた翌年の101年目にジェイテクトブランドへ一本化する決断をした。

 

 その理由は、そもそも会社が合併したら最初にやるべき事が、ブランドの統一だと確信していたからです。

 

 しかし実際には、会社の複雑な事情があり、なかなかそれが出来なかった。 既に合併してから15年も経つ訳ですから、これからのジェイテクトとしての発展を考えると、いつまでも光洋(精工)と豊田(工機)のブランドを残していても仕方がない。

 

 また折角、ブランド統一を行うのだから、豊田工機の工作機械とは違い、新たにジェイテクトとなって「変わったね」と言われる工作機械を提供したい。

 

軸受にしても、光洋精工の時代を経て、ジェイテクトになったら悪いところが刷新され「良くなったね」と言って頂けるように、ブランド統一と併せて、我々のやっている仕事が見直されるようなところへ持って行きたいと考えています。

 

 

ワン・ジェイテクトから自然に〝ワン〟が取れる事が最終目標

 

 

――全く違う事業領域の光洋精工と豊田工機の統合ですから、ジェイテクトは逆に、これを生かして生き残る道を求めて行くという事ですね。

 

 

 佐藤 そうなんです。実のところジェイテクトはトヨタグループの中にあっても、未来を切り拓く〝種〟を無限と言って良い程、膨大に持つ組織です。

 

 例えば祖業であるベアリング分野でも、また工作機械の分野も、加えて子会社群にも最先端の熱処理を手掛けているところを筆頭に、多様な技術を保有しています。

 

そうした技術資産を、各々が独自で抱え込んでしまわず、互いにコラボし合ってシナジー効果を生み出せれば、もっと新しい事業が立ち上がり、そこから更に良い製品が出来ると思っています。

 

ですから組織の壁を出来るだけ早く取り除いて〝One JTEKT〟を旗頭に未来を目指したい。

 

 但し、このOne JTEKTは我々にとつての通過点でしかなく、早くこの〝One〟が取れるのが本当の目標です。 つまり最初はOne JTEKTと言っていますが、このOneが取れて自然な流れで自身を〝ジェイテクト〟と言えるようになるのが最終目標だと思っています。

 

 

駆動系・操舵とベアリング、工作機械の3本柱にアフター体制を追加

 

 

――ジェイテクトは、光洋精工と豊田工機という全く違った分野の組織が一緒になり、広範な事業領域がある訳ですが、佐藤体制になって以降、事業本部を4事業本部を備えた本部制に移行されましたね。

 

 

 

 佐藤 そうですね。アフター事業を入れると4つですね。

 

 

――基本的には駆動系・ステアリングの自動車事業本部に、ベアリング主体の産機・軸受事業本部。 それに工作機械・システム事業本部。この3つの分野に壁はあるのでしょうが、それをうまくコラボし、これらのフローをブランド統一で新たな方向へと動かして行きたいという事ですね。

 

 

 

 佐藤 はい。そういう事です。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。