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2022年10月17日【アフター市場】

ナルネット、新型コロナによる自動車整備業界への影響調査

坂上 賢治

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6万台超の整備データから探る、新型コロナが自動車整備業界に与えた影響

 

自動車メンテナンス受託管理のナルネットコミュニケーションズ (本社:愛知県春日井市、代表取締役社長:鈴木隆志)は10月17日、新型コロナウィルス感染症の流行が自動車整備業界に与えた影響を調査・公表した。( 坂上 賢治 )

 

 

同社は全国約10,000カ所以上の提携工場に管理車両のメンテナンスを委託。例えば、オートリース会社などが月々、定額で自動車の維持管理をアウトソーシングできる「自動車メンテナンス受託」事業の総管理台数は13万台を超える。

 

今回はこのような中から、自社が運営する点検・整備等を含めた包括的サービス「メンテナンスリース」の月平均6万台以上の点検・整備件数・費用を分析。

 

よ具体的には、新型コロナウィルス感染症流行前の2019年度(2019年4月~2020年3月)と、それ以降の2020年度(2020年4月~2021年3月)、2021年度(2021年4月~2022年3月)の点検・整備費用等を比較する事により、コロナ禍が自動車整備業界に与えたインパクトを公表した。

 

ナルネットコミュニケーションズの稼働台数および総点検・整備費用は純増

 

ちなみにナルネットコミュニケーションズが管理するリース車両の台数は、月毎の稼働台数(メンテナンス受託している車両数)を集計した年間稼働台数で約67万台(2019年度)から約69万台(2020年度)、そして約75万台(2021年度)で約12%増加した。

 

そんな年間稼働台数の増加率の推移をグラフで表したものが図1となる。なお、ナルネットコミュニケーションズによると、この間に日本の新車販売台数は15パーセント程度減少したとしている。

 

図1

 

「乗用車」「バン」「トラック」でコロナ禍で消耗品の交換件数が低下

 

そんなナルネットコミュニケーションズの調査をベースとした車種別の年間稼働台数を見ると、「乗用車」「軽自動車」「バン」は増加の一途を辿る一方で、「トラック」は漸減している。特に点検・整備費用については、2019~2021年度の各年度に於いて全車種で漸増。

 

またナルネットコミュニケーションズが更に点検・整備費用の細目を分析したところ、多くの項目で整備件数・費用(工賃+部品)が増加していたものの、新型コロナウィルス感染症が流行し始めた2020年度については、消耗品の代表格であるエンジンオイルおよびオイルフィルタの点検・整備費用が、「軽自動車」を除いて減少したという。

 

各車種に於ける増減の度合いを示したグラフが図2~図5となる。なお、2021年度に入ってからは減少に歯止めがかかり、点検・整備費用は増加に転じた。

 

図2

 

図3

 

図4

 

図5

 

同社では2020年度に於いて、新型コロナウィルス感染症の流行に伴う緊急事態宣言や外出自粛要請などの影響で、通勤や顧客・社内の対面による面談を目的とする自動車の使用が控えられた事により「乗用車」「バン」の交通量が顕著に減少した。

 

それがエンジンオイル等の消耗品の交換の頻度やスパンに影響を与えたとナルネットコミュニケーションズでは推察している。

 

そもそも交通量の減少は事故整備の減少に繫がるが、今回の同社による分析からは、それを示唆する結果は得られなかったとしている。

 

軽自動車は、コロナ禍による稼働台数の低下がみられず整備費用の伸びた

 

加えて軽自動車については、コロナ禍による販売台数の落ち込みが他車種より少なく、かつ回復も早かったためか、稼働台数の低下がみられず、そのことが整備費用の伸びた原因と推測しているという。

 

また軽自動車は一度に乗り合わせる人数が少ないと想像でき、感染リスクが低い点など、使用形態の差も作用したという読みであるとしている。

 

図6は「トラック」の総稼働台数と点検・整備費用の増減率の推移を示したグラフ。

 

トラックに関してナルネットコミュニケーションズでは、総稼働台数が減少しているにも関わらず、新型コロナウィルス感染症の流行が始まった2020年度以降、点検・整備費用は増加したという。

 

これは、いわゆる「巣ごもり需要」でインターネット通販等の宅配荷物が急増した事により、トラック輸送のニーズが増加したとつでは見ている。

 

実際、国土交通省の調査 では、2021年度のトラック輸送トン数は2019年度に比べ3.7パーセント増加、宅配便貨物個数は13.8パーセント増加している。これに比例して、「トラック」の一台あたりの走行距離が伸び、整備機会が増えたと推察した。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。