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2017年12月11日【特集】

トヨタ自動車、友山茂樹氏に訊くモビリティの未来とコネクティッド戦略(後編)

佃 義夫

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白物家電にはならない、トヨタは背景に時代に見合うモビリティサービス事業に移転していく。

——自動車の大変革の波は、クルマのコモディテイ(汎用)化を促す懸念も出ているが。

友山 我々の製品やサービスが白物家電のようにはならないし、またそうしたことであってはならないことだ。クルマは移動するものであって、ヒトは何世紀も前から自らの意志で移動したいという夢や欲求を持ち、その動機を意欲に代えて新たな時代を切り拓いてきた。

 

また数ある工業製品の中でも、「愛」がつくのはクルマだけと永らく言われてきた。クルマは誰もが愛着を持てる存在であり、そこから「愛車」という言葉が生まれた。

 

他方で、クルマもコモディテイ化するのでは、との見方があるのは判っている。今後は、ある意味で公共としての役割担う様な特定のカテゴリーに於いては、これまでとは異なる全く新しいクルマの利用方法が育まれ、新たな価値観とクルマの付き合い方が社会全体で共存される時代がやってくるのかも知れない。

しかし今後、未来に向けてコネクティッド化の進展により、クルマがより高度になればなるほど、その複雑化するメカニズムと信頼性を担保するためにメンテナンス(整備)はしていかねばならない。

むしろ、新しいクルマとの付き合い方が育まれれ、稼働が大きく上昇する様なことがあれば、それに見合う点検整備網を欠くことは絶対にできない。

 

先の通り、我々はマニュファクチャラーとしての役割を持ちながらも、現代の流通にも応えていかなければならないディストリビューターであるのだから、これを背景に時代に見合うモビリティサービス事業に移転していく。従って未来のクルマは、またトヨタのビジネスは白物家電にはならない。

 

——コネクティッド戦略に於けるサイバーセキュリティの問題については。

友山 これは未来を見据えた時、非常に重要な問題である。未来のクルマは確実に電子部品とソフトウェアの塊となってくる。それゆえに小さなウイルスが入り込む事自体が許される余地は微塵もなく、モビリティサービス事業を目指す我々企業の存続そのものに結びつくことになる。

 

外部からのアクセスは100%セキュアでなければならない。具体的に今後は極めて厳重かつ何重にもシステムをセキュリティ化していくことになる。この問題は、MSPF戦略上でプラットフォーマーとしてのビジネスを拡大させていくための最重要テーマとして捉えている。

 

——最近、地図メーカーであるヒアーとパイオニアが提携してテレマティックス保険を導入したが、トヨタとしては地図会社との連携は。

友山 地図情報による危機管理保険が、テレマティックス保険として米国では商品化され、日本でも地図会社ヒアーとパイオニアが提携したようだが、トヨタはオープンに世界各地域の地図メーカーと連動している。米国では2025年までに車両保険のうち、45%がこのテレマティックス保険になると言われている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。