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2017年12月11日【特集】

トヨタ自動車、友山茂樹氏に訊くモビリティの未来とコネクティッド戦略(後編)

佃 義夫

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——最近のEV転換はやや過熱気味だが、これをどう見る。

友山 欧州メーカーのディーゼル問題が拍車を掛けた格好となったEV転換だが、必ずしも全てがEV(電気自動車)だけに切り替わるということではないと考えている。

それは欧州勢も同様であり、ベンツやポルシェなどもEV一辺倒ということではなく、いかに内燃機関の熱効率を上げるかの手綱を緩めている訳ではない。

 

日本国内市場に於いてもマツダさんは内燃機関の進化に心血を注いでいる。これに対してトヨタも、電動化戦略の一環としてEVの商品化に取組んでいるなかで、他方いかに内燃機関の燃焼効率を上げていくかという目標についても、高い指標を掲げて精力的に取組んでいる。

 

EV化に関しては、英仏政府の国策や中国の国策は承知している。実際、フランスのように地震などの影響が比較的少ない地域性を踏まえ、安定した原子力発電に依存していける環境があるのなら別だが、国土や国家の事情で火力発電に依存しているような地域に於いては、全部EVで行くということになるとエネルギーコストと環境負荷という両面で無理が出てくるケースもある。

 

エネルギー転換への道は永い視点で「環境負荷低減策」と「電動ユニット搭載車拡大」を両輪に据え、より環境に優しく進めていく道筋を辿っていく必要がある。

 

——いずれにしてもこの電動化、情報化、知能化の技術革新の中で自動車メーカーはどうあるべきなのか。

友山 クルマ自体の大変革期が到来しているのは確かだ。このクルマへの変革の波をしっかりキャッチアップしていくことで、目指す事業形態の姿も大きく変わっていく。

例えばトヨタもクルマを作って売ることから、グローバルでお客様とどのように接点を増やしていくのかが重要になってくるだろう。端的にいえば「製造業からサービス業へ」ということにもなろう。

 

 

電動化や自動運転の進化で、クルマの空間活用や移動の愉しさは無限の可能性を持つようになる

 

——最後にモビリティの未来をどう創造していくのか。

友山 モビリティの魅力は、移動する価値をどこに見いだすかということだ。電動化や自動運転の進化で、クルマの空間の活用や移動の楽しさは、さらに広がることになる。

 

以前、豊田社長からコネクティビティカンパニーとガズーレーシングカンパニーのプレジデントを兼務する内示を受けた際に「これからのクルマは絶対にITが必要だ。ITとレースの両方をカンパニーのプレジデントとして担うことでバランスを取れ」と言われた。

それは、技術の粋を追求しつつも「楽しく移動するモビリティ」の新たな形をトヨタが創造していくということだ。

 

今後はマニュファクチャラーとしての存在のみが注目されてきたトヨタからの脱皮も目指し、IoTの進化に合わせて「つながるトヨタ」の魅力創造へと飛躍していきたい。

 

 

*同コンテンツは、12月4日より一般書店で発売中の隔月刊誌「NEXT MOBILITY」からの転載記事となります。現発行号では「2027年の自動車」をテーマに、事業の枠組みを超えた多彩なキーマンを抽出。インタビューを中心とした構成で、未来を乗り越え、解決していくための方程式を読み解いていく展開としています。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。