NEXT MOBILITY

MENU

2022年6月7日【テクノロジー】

鹿島、道路の床版取替工程を1/10に短縮する技術を開発

NEXT MOBILITY編集部

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

 

鹿島建設は6月7日、1車線規制で道路の床版取替が可能な“幅員方向分割(2車線道路の場合1車線規制)取替”を対象とした「幅員方向分割SDRシステム」を開発したと発表した。

鹿島・ロゴ

供用中の施設が対象となる道路橋の床版取替工事では、交通規制等によるソーシャルロス(社会的な機会損失)を最小限にする必要があるため、交通量の多い路線では床版を、幅員方向に分割して施工を行う「幅員方向分割取替」の適用が強く求められる。

 

しかし、幅員方向分割取替工事にあたっては、隣接する交通開放側の床版からの交通振動が接合部に与える影響への対策や、交通開放側の車両に対する安全対策、さらに、全断面取替よりもコンパクトな架設機が必要といった課題があったと云う。

 

鹿島建設では、道路橋床版更新工事に伴う交通規制等によるソーシャルロスを大幅低減を可能にする「スマート床版更新(SDR:Smart Deck Renewal)システム」の開発を進めており、2019年には“全断面(2車線道路の場合2車線規制)取替”を対象とした「全断面SDRシステム」を開発(来年以降、実工事に適用予定)。今回、そのさらなる低減を可能にする“幅員方向分割(2車線道路の場合1車線規制)取替”を対象とした「幅員方向分割SDRシステム」を開発した。

 

SDRシステムは、床版取替に係る4つの作業、[1]既設床版の撤去、[2]主桁ケレン、[3]高さ調整、[4]新設床版の搬入・架設を、同時に並行して行う「移動式工場」を実現した施工システム。クレーンでの旋回を伴う床版の揚重作業が不要な新型架設機の開発により、施工の高速化と交通規制の最小化、安全性の向上が図れるシステムとして2019年に開発・実用化した全断面対象のシステムを、さらなるソーシャルロスの最小化を目指し、幅員方向に床版を分割して取替可能なシステムとして発展させたもので、標準的な工法と比べ、工期の大幅な短縮ができると云う。

 

 

[幅員方向分割SDRシステムの主要技術]

 

(1)交通振動対応仮設プレート型継手

 

幅員方向分割取替に於ける交通開放側の床版(以下、一次床版)と規制側床版(以下、二次床版)の接合部(橋軸直角方向接合部)に充填する間詰材については、硬化中に一次床版からの交通振動によりひび割れが生じるなど、品質低下につながる事象が課題に。そこで、交通振動による影響を解消し、間詰材の品質を確保するため、一次床版と二次床版を2枚のプレートとPC鋼棒により仮接合し、両者を一体化することで振動の影響を回避する「交通振動対応仮設プレート型継手」を開発した。

 

 

(2)ワンタッチ型SB種(※)防護柵

 

車線規制下での床版撤去・架設作業に於いては、工事エリアのすぐ横を一般車両が走行するため、作業エリア内の誤進入に対する確実な防護対策が安全上の最も重要な課題に。また、防護柵設置・撤去作業時の安全性、ならびに規制範囲の最小化も求められることから、幅30㎝の占有でSB種の性能を担保し、ワンタッチで設置・撤去可能な「ワンタッチ型SB種防護柵」を開発した。

※SB種:設計速度80km/h以上の重大な被害が発生するおそれのある区間に用いられる車両用防護柵の種別。

 

 

(3)車載運搬型床版架設機・撤去機

 

車線規制下に於いて、床版架設機・撤去機の設置・撤去作業を行う際に最も留意が必要な、供用交通に対する安全性を確保するため、床版架設・撤去機を10tトラックおよび15tトレーラーで運搬し、クレーンを必要とせずに安全かつ高速に組立・撤去できる「車載運搬型床版架設機・撤去機」を開発した。

 

 

実物大実証実験

 

鹿島は、今年4月、「幅員方向分割SDRシステム」のサイクルタイムや、施工安全性の検証を目的とした実物大総合実証実験を実施。その結果、標準的な床版取替工程の施工方法に比べて、作業時間を約1/10に短縮できるなど、同システムの有用性を確認。また、同システムに加えて、工事現場の近傍に設置したプレキャスト工場で床版を製作することで、床版の製作経費や運搬費も削減できるなど、費用の約2割低減が見込めると云う。

 

今後は、実工事への適用に向け、同システムを積極的に提案。併せて、自動化を始めとした機能向上についても研究開発を進め、交通規制等によるソーシャルロスを最小限にとどめる道路橋床版更新工事の実現に寄与していくとしている。

 

 

 

■(鹿島 2019年12月17日付プレスリリース)安価で、高速施工を可能にする「スマート床版更新(SDR)システム」を開発:https://www.kajima.co.jp/news/press/201912/17c1-j.htm

■(鹿島)動画でみる鹿島の土木技術「リニューアル」:https://www.kajima.co.jp/tech/c_movies/index.html#anc_renewal

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。