昭和シェル石油は、海月研究所(※1)および丸和油脂(※2)と、クラゲの採取およびコラーゲンやムチンなどの化粧品・医療品・食料品の原料成分の生産・販売に関する共同事業化を合意し、また、海月研究所に対して出資(出資比率51.72%)を行った。
事業は、昭和シェル石油が昨年9月に発表した海月研究所とのクラゲコラーゲン・ムチン供給の事業化検討(※3)を踏まえ、今後、昭和シェル石油グループの発電所を原料となるクラゲの供給元として活用し、丸和油脂の工場内の製造設備で、海月研究所の所有する技術をもとに化粧品・医療品・食料品等の原料となるクラゲコラーゲンおよびムチンの生産を行うというもの。
クラゲから得られるコラーゲンは、他生物からのコラーゲンにはない(※4)特性を有し、化粧品や人工皮膚の材料として、世界中の化粧品原料メーカーや食品関連企業が注目。
また、クラゲ由来のムチン(※5)は、ムチンの中で唯一構造同定されたものであり、変形性関節症治療薬やドライアイ治療薬など医療品としての活用が期待されていると云う。
昭和シェル石油は、クラゲの大量発生は、海水を利用する工場を所有する事業者や漁業事業者の間でも課題となっており、今回の事業を通じ、迷惑なものとして扱われていたクラゲを有効利用することで、社会問題の解決に寄与するとともに新たな価値を創造していくとしている。
※1)海月研究所:理化学研究所発のベンチャー企業として2009年に設立され、エチゼンクラゲやミズクラゲなどの生物からコラーゲンやムチンといった生物に必要な有効成分を抽出する技術およびその特許を所有。クラゲコラーゲンを添加した美容液なども販売している。現在、国内の大学などと様々な分野での共同研究を進めている。
※2)丸和油脂:マーガリンメーカーとしてスタートし、永年培った技術をベースに、種々の開発やアイデアに加え、独創的な製品をつくりだす企業として発展。現在、マーガリン類の製造・販売に加えて、マヨネーズ類・ドレッシング類の製造・販売、および精製油脂の製造・販売を手がけている。
※3:http://www.showa-shell.co.jp/press_release/pr2018/0904.html
※4:クラゲから採取されたコラーゲンは、主にⅡ型、Ⅳ型、Ⅴ型と呼ばれており、現在大量に生産されているⅠ型とは違った特性を持ち、人獣共通感染症のリスクがないと言われている。また、他種由来コラーゲンよりも生体親和性や安全性が高く、上皮系細胞の増殖を活性化させる効果があることが確認されていることから、化粧品や人工皮膚の材料として注目されている。
※5:クラゲから採取されたムチンは、現行の変形性関節症治療薬に添加することにより軟骨の修復が促進されることが確認されており、その他にドライアイ治療薬としての効果が期待されている。
■海月研究所:https://www.jfish-lab.com
■丸和油脂:http://www.maruwayushi.com/index.html