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2021年10月7日【モータースポーツ】

ホンダ、レッドブル・グループと来季F1の協力関係で合意

坂上 賢治

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写真はレッドブル・ホンダが第16戦F1トルコGPで使うF1日本GP用スペシャルカラーをまとったRB16B

 

ホンダ、2022年以降のレッドブル・グループへPUに関する知的財産権使用を許諾へ

 

 本田技研工業(本社:東京都港区、社長:三部敏宏、以下ホンダ)は10月7日、「Hondaモータースポーツ活動についての説明会」と題した記者会見を開催。その壇上で2022年以降もレッドブル・グループとモータースポーツ文化の更なる発展を目指し、同領域での協力関係を進めていく事で合意したと発表した。

 

 

 そんなホンダは、今から遡ることおよそ8年、2013年5月16日にエンジン本体及びエネルギー回生システム(ERS)の供給プライヤーとして、かつてF1参戦・第2期で互いに成功を収めたマクラーレンと2015年のF1シリーズから復帰を果たす事を宣言。これが1964年から続く、ホンダの第4回目となるF1再始動の号砲となった。

 

こうして最直近の第3期のフルワークス体制とは異なる形でF1再挑戦を開始したホンダだったが、フタを開けてみると一年間を通じて信頼性の確保や、パフォーマンス不足に悩まされ、マクラーレンもチーム創立以来最下位となるコンストラクターズランキング9位に沈んだ。

 

 

このパフォーマンス不足の原因は、マクラーレン側によるシャシー設計の誤りを発端に、それに沿って車体後部を絞り込んだ事によるエンジン冷却の問題。さらに長らくF1から遠ざかっていたホンダとしては、技術的に未成熟だったMGU-H(熱エネルギー回生)の発電量不足。エネルギーの使用配分に起因するパワー不足などに悩んだ。

 

ただ当時のレースレギュレーションは「シーズン開幕前にエンジンのホモロゲーションを行い、それをシーズン中使用する」という規定となっており、これが事実上、ホンダエンジンの改良対策での手詰まりとなっていた。以降、マクラーレンとのタッグは2017年まで続いたが双方の努力が実を結ぶことはなかった。

 

 

その2017年シリーズが消化される中に於いて、マクラーレンとの次年度以降の契約交渉も続けられていた。それは2015年契約当初の〝3年+2年オプション〟の取り決めを巡る契約交渉で、具体的にはマクラーレン側が要求したオプション年数の加算に対してホンダ側が難色を示した事で同交渉は遂に行き詰まる。この結果、2017年シーズンが繰り広げられていたF1パドック裏でホンダは、翌2018年のF1参戦が危ぶまれるところまで追い込まれる。

 

 しかし当時、新たなエンジンコンストラクターを求めていたレッドブル・グループとの水面下に於ける交渉が実を結び、2018年から現行のアルファタウリF1(スクーデリア トロ・ロッソ)へのパワーユニットの単独供給が実現。これを期にホンダの第2期の黄金時代を支えたIHIとテクニカルパートナーシップ契約 も締結。

 

この2018年シーズンは、第2戦バーレーンGPで4位。一方で最終戦アブダビGPでは12位など、一年を通じて好不調の波が激しく多くの課題を抱えたシーズンとなった。そして翌年の2019年にはレッドブルとトロ・ロッソの2チームへのパワーユニット供給が始まり以降、現在に至っている。

 

 

現段階で手厚いサポート体制は2022年2月のホモロゲ取得までとされるが、果たして、その真意は

 

 けれども昨年10月のホンダ撤退宣言 により、そんなレッドブル・グループとのF1挑戦も遂に2021年で終了。今季限りでホンダのF1活動は終わりを迎える事になっていた。しかし10月7日、ホンダは渡辺康治ブランドコミュニケーション本部長と、長井昌也モータースポーツ部長が記者会見場で今後のF1活動について語った。

 

このなかで渡辺ブランドコミュニケーション本部長は「2020年に発表した通り、ホンダは2021年シーズンを以てF1のパワーユニットサプライヤーとしての参戦を終了します。今後はF1で培った技術と人材を将来のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みにリソースの再配分を行います」と会見の口火を切った。

 

またそう語る中で「レースはホンダのDNAであることは変わらず、モータースポーツの魅力を発信しモータースポーツを盛り上げていく事は我々の使命だと思っており、今後も勝ちに拘って行きます」と述べ、その一環としてレッドブル・グループとは新たな協力関係について合意に達した事を明らかにした。

 

 より具体的には、レッドブル・グループからの要請を受け、彼らが2022年以降もF1参戦を続けられるように、ホンダのパワーユニット技術をレッドブル・グループが使用することを許諾。これによってレッドブル・グループ傘下のスクーデリア・アルファタウリ(Scuderia AlphaTauri)と、レッドブル・レーシング(Red Bull Racing)を支援していく。

 

なお上記のモータースポーツ活動を推進していくために、現在ホンダの二輪レース活動を運営している株式会社ホンダ・レーシング(以下、HRC)に四輪レース活動機能を追加。レッドブル・グループへのF1参戦活動に関する支援をHRCが行っていく。また併せて二輪・四輪の分野でそれぞれが持っている技術・ノウハウの相互連携と運営の効率化を図ることで、ホンダのモータースポーツ体制を強化していくとした。

 

 

同契約に係る個別の合意内容は以下の通り。

 

・パワーユニットに関する知的財産権の使用許諾。
・ホンダによるレッドブル・パワートレインズ(Red Bull Powertrains/レッドブル・グループ内でF1向けパワーユニットを製造する会社)への2022年シーズンに於けるPUの組立支援。またサーキット及び日本に於けるレース運営サポートの実施。
・現在の英国に於けるホンダのF1参戦活動の拠点であるホンダ・レーシング・ディベロップメント・ユーケー(Honda Racing Development UK)従業員のレッドブル・パワートレインズへの転籍。
・日本に於けるモータースポーツのプレゼンス向上に向けて、重要となる日本人ドライバーの育成への取り組みもレッドブル・グループと継続して行っていく。具体的にはホンダガ展開する育成プログラム「ホンダフォーミュラ・ドリーム・プロジェクト(HFDP)」と、レッドブル・グループが主催するプログラム「レッドブル・ジュニアチーム(Red Bull Junior Team)」で連携し、角田裕毅(つのだ ゆうき)選手 に続く世界のトップカテゴリーで活躍する日本人の若手ドライバーを共同で育成していく。

 

 

最後にレッドブル・レーシング・ホンダ 代表のクリスティアン・ホーナー氏、並びに本田技研工業 執行職ブランド・コミュニケーション渡辺康治本部長のコメントは以下の通り。

 

【クリスティアン・ホーナー氏】「レッドブルとホンダの現在の協力関係はとても素晴らしい成果を生んでおり、内容は変わりますが、ホンダとの関係が継続できる事を嬉しく思います。レッドブル・パワートレインズのチャレンジに対して2022年にホンダが行ってくれるサポートは、レッドブルが車体とPUの両方を手掛けるコンストラクターになっていく上で心強い存在です。また、ドライバー育成をはじめとする様々なモータースポーツ活動などに於いてホンダとの協力が継続して行くという事も楽しみにしています」

 

【渡辺康治ブランド・コミュニケーション本部長】
「予てから議論を重ねていた2022年以降のホンダのパワーユニット技術の取り扱いを含めた協力関係についてレッドブル・グループと合意できた事を嬉しく思います。このコラボレーションはホンダが今後もモータースポーツ界に貢献して行きたいという思いの表れです。また、体制を強化するHRCを通じて世界中のお客様にモータースポーツをさらに楽しんで頂けるよう、より一層努めて参ります」

 

 

 

 

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域の取材活動を経て同社出版局へ。コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に環境&リサイクル紙、車両ケア&整備ビジネス専門誌等の創刊誌編集長を歴任。独立後は一般誌、Web媒体上でジャーナリスト活動を重ね30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。