NEXT MOBILITY

MENU

2022年6月22日【テクノロジー】

日本製鉄、マツダと共同開発の軽量BピラーがCX-60に採用

NEXT MOBILITY編集部

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

 

日本製鉄は6月22日、マツダと共同開発した1.8GPa級および1.3GPa級アルミめっきホットスタンプ鋼板(以下、AL-HS鋼板)を使用した「TWB(テーラードウェルドブランク/*1)構造の軽量Bピラー」が、マツダの新型ラージSUV(CX-60)に採用されたことを発表した。

日本製鉄では、先進的な素材開発をはじめ、素材性能を最大限に引き出すための部品構造やその構造を具現化する加工技術の開発を進め、自動車車体の軽量化や安全性能向上を実現するためのカーボンニュートラルの時代に向けた次世代鋼製自動車コンセプト“NSafe-AutoConcept(以下、NSAC)”を進化させてきた。

 

 

さらにマツダと共に、TWB構造の軽量Bピラーの実車適用を目指し、NSAC技術である「AL-HS鋼板のTWB接合技術(*2)」や「差厚パッチワーク技術(*3)」、「直水冷高生産ホットスタンプ技術(*4)」を活用し、「直水冷ホットスタンプの実機設備化に向けての流体解析等による最適化」や「衝突解析、多機能衝突試験(*5)等による板厚最適化」による量産化に取り組んできた。

 

自動車の軽量化に於いて、ホットスタンプは、熱間成形で高強度な部品を得る工法として、冷間プレス成形が難しい高強度領域に適しているが、冷却時間が長く生産性が低いといった課題が。また、AL-HS鋼板をTWB技術で接合すると、溶接部へアルミニウムが混入しホットスタンプ後の継手強度が低下してしまう課題や、異強度・異厚のTWBでは、部品の品質精度ばらつき(焼入れ性や寸法精度)が生じるといった課題もあり、TWB構造のAL-HS鋼板の自動車車体への適用は困難であったと云う。

 

今回日本製鉄は、高い継手強度により自動車車体への適用が可能なTWB接合技術を独自開発し、九州製鉄所八幡地区に於いて事業化。マツダと共同開発した軽量Bピラーでは、TWBと部分パッチワーク技術の適用により、従来の一体型Bピラーからレインフォース部品の省略も可能とすることで、34%軽量化および衝突安全性の向上を実現させた。

 

また、今回採用の直水冷ホットスタンプ工法では、金型表面と鋼板の隙間に冷却水を流入し、鋼板を直接水で冷却すると共に、金型内の流体解析から冷却水の流速最適化を実施。これにより焼入れ性、寸法精度ばらつき等の品質安定化、部品製造時の生産性も向上(従来の4倍)し、製造時、走行時の温室効果ガス排出量も削減されると云う。

 

 

日本製鉄は、NSAC技術の適用とその範囲拡大が、社会的共通課題である自動車安全性能の向上とカーボンニュートラル社会を実現する解決策のひとつであるとの考えの下、今後も自動車のより一層の軽量化、衝突安全性能向上、および温室効果ガス排出量の削減に貢献していくとしている。

 

 

*1:板厚や材質の異なる鋼板をレーザ溶接で接合して一枚の鋼板(ブランク材)にし、プレスする加工技術。車体の強度や板厚の最適化による性能向上、軽量化、およびコスト低減を図ることが可能。Bピラーなどの部品に適用され、客室空間保護のため、Bピラー上部(アッパー側)に高強度材を、側面衝突時の必要性能確保のため、下部(ロア側)に低強度材を使用。
*2:溶接金属へのアルミ混入に起因する継手強度低下課題に対し、独自開発技術による高い継手強度を実現。
*3:衝突変形時の曲げ強度向上のため、従来は主要骨格部品へ補強部品を後付け(二つの部品を接合)。今回技術は主要骨格部品の稜線部に補強材(最適板厚を検討)を事前接合し、その後ホットスタンプ実施。これにより、金型、工程数削減の他、最適板厚化による軽量化を実現。
*4:金型表面と鋼板の隙間に水を流入し、鋼板を直接水で冷却することにより焼き入れ所要時間を短縮する工法。
*5:部材単体から大型構造までの多様な形態での衝突評価が可能な油圧による水平打ち出し方式の衝突試験。最高衝突速度は100km/時で、現行のすべての自動車アセスメントの衝突試験の速度領域を網羅。種々の高精度計測装置を備えており、部材や構造の衝突変形時の挙動の詳細観察が可能で、衝撃吸収性能の評価と変形メカニズムの検討も可能。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。