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2021年6月25日【テクノロジー】

ミシュランと群馬企業、金属積層造形で量産体制を目指す

NEXT MOBILITY編集部

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ミシュランタイヤ・ロゴ

日本ミシュランタイヤ(以下、ミシュラン)と群馬県の製造企業を中心とするグループは、6月25日 、日本貿易振興機構(JETRO/以下、ジェトロ)群馬貿易情報センター、群馬県および前橋市や太田市、群馬大学などと連携し、次世代イノベーションを担うオープンプラットフォーム「群馬積層造形プラットフォーム(※1)」を設立し、2021年7月下旬に一般社団法人として稼働を開始すると発表した。

 

積層造形は、立体物を輪切りにした断面データを元に、樹脂・粉体などの薄い層を積み重ねて立体物を製作する技術で、3Dプリンティング、付加製造、AM(アディティブ・マニュファクチャリング)とも呼ばれ、複雑な形状が自由に成形可能となることから、航空宇宙産業・自動車・医療分野等に幅広く適用され、金属材料を用いた部品への期待も高まっている。ミシュラングループは、タイヤ性能を向上させるため、この技術を金型製造に使用し、10年以上にわたる量産でのノウハウと知見を保有している。

 

 

 

 

世界遺産である富岡製糸場をはじめ、地域資源を活かした多種多様な地場産業を有する群馬県は、近代ものづくりの重要な拠点として発展。現在は、自動車を中心とした製造業が盛んであることから、自動車業界に大きな変革をもたらしつつあるCASE(※2)やVUCA(※3)等への迅速かつ柔軟な対応も求められている。

 

このような状況から、群馬県では県下の意欲ある製造業企業を中心に産官学が集結し、高付加価値産業基盤への転換を図るため、「群馬積層造形プラットフォーム準備委員会」を発足。参加企業を増やしながら準備を続けてきた。

 

そして今回、組織の名称を「群馬積層造形プラットフォーム」に変更し、2021年7月下旬に一般社団法人としての稼働を開始、本格的に金属積層造形技術をベースにした教育プログラムなどを提供することとした。

 

ミシュランは、金属積層造形技術に関して、合弁企業のAddUp(アダップ)社の機器をミシュランの太田サイト(群馬県太田市)内に設置するほか、教育プログラムと運用ノウハウを所属企業に開放。今後は、フランスにおいて展開している金属積層造形の人材育成トレーニングを、群馬県にも導入し、積層造形のノウハウを持つ人材を増やしていくほか、地域企業と共に、新たに培った知識を基盤として、将来的な地域の新産業創出拠点を目指す。

 

 

 

 

<今後の展開>

 

 

※1)群馬積層造形プラットフォーム:「産業界のニーズに基づいて、金属積層造形技術とその関連先端技術の普及・人材育成、研究開発、および実用化を推進することで地域に貢献するとともに、新たな時代のものづくり産業の礎として、新しいプロセス・新産業の創出に寄与する」ことをミッションとして掲げ、2020年8月からジェトロや群馬県の自治体、公共団体、大学、企業と協力して法人設立を準備。この設立準備には、県内企業を支援するため、群馬県、前橋市、太田市をはじめ、群馬大学や群馬銀行が参加した。
2021年7月には法人登記を行ない、8社(2021年6月現在の参加企業(株):秋葉ダイカスト工業所、関東精機(株)、共和産業(株)、しげる工業(株)、東亜工業(株)、日本ミシュランタイヤ(株)、富士部品工業(株)、矢島工業(株))での活動を開始し、また群馬大学との交流も展開する予定。今後は、参加企業を広く募集すると共に、地元の大学や自治体、公共団体と連携した具体的なプログラムの検討を開始する。

※2)CASE:「C=コネクテッド」、「A=自動運転」、「S=シェアリングサービス」、「E=電動化」の頭文字からなる造語で、次世代自動車業界のトレンドのこと。

※3)VUCA:「V=変動性」、「U=不確実性」、「C=複雑性」、「A=曖昧性」からなる造語で、この4つの要素のため、将来の予測が困難な現代の状況を表す。

 

 

 

 

[関係各者のコメント]

 

■ジェトロ群馬所長・柴原友範 氏

 

ジェトロ群馬は、2019年7月にミシュラングループからこの構想を聞いて以来、この2年間で、県内企業、大学、自治体との橋渡しを行い、設置検討委員会、準備委員会を先導してきました。
 世界の製造業を取り巻く環境変化に対応して高付加価値産業へ転換するためには、3D金属プリンターなどの最新デジタルものづくり技術と、その技術に精通したデジタルものづくり人材が鍵を握る一方、そうした設備は高額で、また教育できる指導者もいないため、1企業では手が出せないというのが現状です。
 ミシュラングループと地域中核企業が連携する本プラットフォームにより、最新技術と教育プログラムへのアクセスが容易となり、デジタルものづくり人材が生み出されることで、イノベーションの創出と地域経済の活性化にも繋がると期待しています。そして、この「群馬モデル」が、日本の新たなものづくりの礎となることを願っています。

 

■日本ミシュランタイヤ・代表取締役社長 須藤元 氏

 

現在ミシュラングループは、過去130年間積み上げてきた高品質で持続可能なタイヤをお届けするミッションを主におきつつ、「タイヤを超越した」サービスやソリューションの展開を推進しています。
 今回の積層造形技術を軸とした産官学連携はその一環であり、業界の境界を越えて社会の発展に貢献したいという我々の明確な意思表示でもあります。
 弊社太田サイトから技術を提供する形で携わることができて大変光栄です。地元企業、自治体、大学の皆様と密に協業し、群馬県そして日本の産業発展に寄与するため、新たな価値創造に尽力して参ります。

 

■群馬県 産業経済部長・鬼形尚道 氏

 

群馬県の新たな「産業振興基本計画」では、既存産業の強みを生かしながら、時代の変化に合わせた新しい成長機会を探求する「両利き(ハイブリッド)の産業構造」を目指していくこととしています。
 ミシュラングループの強力なバックアップの下に進められる本プラットフォームの構想は、その実現に欠かせないプロジェクトであり、大いに期待しています。
 本プラットフォームは、ジェトロ群馬による力強いリードはもちろん、前橋市や太田市などの自治体や大学の支援、地元企業の積極的な関与など、県内の多くの産学官関係者の協力によって設立に至ったものであり、県としても、県内のものづくり産業が今後とも継続的に発展していけるよう、積極的にバックアップしてまいります。

 

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。