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2019年7月17日【テクノロジー】

米フォードと独VW、自動運転と電動化で協力を拡大

NEXT MOBILITY編集部

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米国のフォード・モーターとドイツのフォルクスワーゲンは、7月12日、電気自動車を含む世界規模の提携をさらに拡大すると発表した。

 

提携では、自動運転車のプラットフォームを開発するフォード傘下の「アルゴAI(Argo AI)」と協力し、米国および欧州に自動運転技術を導入。両社の競争力や、コスト、投資の効率性を向上させ、より良いサービスの提供を目指すとしている。

今回の発表に際し、フォード社長兼CEOのジム=ハケット氏は、以下のように話している。

 

「フォードとフォルクスワーゲンは独立した企業としての立場を維持し、市場では競争しながらも、アルゴAIとチームを組んで協力することで、かつてない可能性、スケールメリット、市場規模を達成することが可能になるでしょう。

 様々な分野で相乗効果を発揮することで、インテリジェントな時代にインテリジェントなクルマを開発する、グローバルな提携力を示すことが可能になるでしょう」。

 

 

■フォルクスワーゲンとフォード、アルゴAIに共同出資

 

また、フォルクスワーゲン最高経営責任者(CEO)のヘルベルト=ディース氏、フォード社長兼CEOのジム=ハケット氏、アルゴAI・CEOのブライアン=サレスキー氏は、アルゴAIに対するフォルクスワーゲンとフォードの共同出資を発表した。

 

共同出資では、フォルクスワーゲンが、10億ドルをアルゴAIに資金提供し、また評価額16億ドルのフォルクスワーゲングループ子会社で、自動運転技術を開発する「Autonomous Intelligent Driving(AID)」をアルゴAIに統合させることで、同社に対して合計26億ドルを出資。さらに、今回の提携の一部として、今後3年間でフォードから5億ドル分のアルゴAIの株式を購入する。

 

一方フォードは、アルゴAIに対する10億ドルの現金投資のうち、残りの6億ドルの投資を今後実施する。

 

両社は、この投資により評価額70億ドル以上となるアルゴAIの株式の過半数を均等に所有することとなる。

 

なお、一連の手続きは、関連する行政当局の承認を得た上で、契約条項に従って実施される。

 

アルゴAIのCEOのブライアン=サレスキー氏は、以下のように話している。

 

「Argo AIは、弊社の明確な使命と、パートナー企業のコミットメントにより、世界有数の人材を集めることに成功しました。AIDの従業員と共に働くことにより、私たちのチームはさらに国際色豊かなものになり、さらに多くの才能溢れる人材を確保できると確信しています。

 フォードとフォルクスワーゲンの取り組みにより、Argo AIのテクノロジーは、将来的に北米および欧州のほとんどすべての市場に導入され、複数のブランドと数多くの車両アーキテクチャーに搭載されることになるでしょう」。

 

 

 

 

■フォード、フォルクスワーゲンのMEBを60万台の車両に採用

 

さらに、フォードとフォルクスワーゲンは、フォードがフォルクスワーゲン開発の電気自動車専用のMEB(モジュラー エレクトリック ツールキット)を使用し、2023年から欧州で量産電気自動車を販売することを、併せて発表。

 

フォードは、ドイツのケルン-メルケニヒでMEBを使用した新型電気自動車を欧州向けに開発し、今後6年で60万台以上販売するとしている。

 

一方フォルクスワーゲンは、このプラットフォームを使用し、今後10年間で同社グループのみで、約1,500万台の車両の生産を予定している。

 

これについて、フォルクスワーゲン最高経営責任者(CEO)のヘルベルト=ディース氏は、以下のように話している。

 

「業界をリードするフォルクスワーゲンのEVアーキテクチャーは、将来的に、より多くのお客様と環境に恩恵をもたらすことになるでしょう。私たちの世界規模の提携は、さらに大きな展望を示し始めており、他にも協力できる分野がないか、引き続き検討しています。

 MEBの規模を拡大することで、電気自動車の開発コストが削減され、電気自動車をより幅広く、そしてより素早く世界市場へ導入することが可能になります。これにより、より良い資本効率、さらなる成長、そして競争力の強化を実現し、世界における両社のポジショニングが向上します」。

 

 

なお、フォードとフォルクスワーゲンは、今回の提携について、アルゴAIへの出資とは独立したもので、両社間で株式を持ち合うものではないとし、その管理は、フォードのハケット氏とフォルクスワーゲンのディース氏が議長を務め、両社の役員が名を連ねる共同委員会によって行うとしている。

 

 

 

 

■商用バンとピックアップの共同開発

 

フォードとフォルクスワーゲンは今年1月15日に発表した両社提携に基づき、現在、世界の主要な市場におけるそれぞれの強みを活かすため、商用バンと中型ピックアップの共同開発計画を進めている。

 

フォードはこの計画において、欧州、アフリカ、中東、アジア太平洋、南アメリカ向けに、両社共用の中型ピックアップトラックの開発、製造を担当。同車両は、2022年から主要な市場に導入される予定となっているが、同社ではさらに、2022年以降、欧州市場において販売される、より大型の商用バンを開発・製造する計画をしていると云う。

 

一方、フォルクスワーゲンは、欧州およびその他の一部の市場で両社が販売するためのシティバンの開発・製造を予定している。

 

フォードとフォルクスワーゲンは、世界の商用バンとピックアップ市場で、競合の少ない補完的なポジショニングを確立。フォードは「Transit(トランジット)」と「Ranger(レンジャー)」、フォルクスワーゲンは「Transporter(トランスポーター)」、「Caddy(キャディ)」、「Amarok(アマロック)」といった、商用バンとピックアップトラックを擁している。

 

両社は、今後5年間で中型ピックアップトラックと商用バンの需要が世界的に高まると予想。これら領域での提携で、工場の稼働率を向上。革新的テクノロジーを、顧客に対し、より早く届けていきたいとしている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。