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2020年12月2日【テクノロジー】

AWSとブラックベリー、車載データプラットフォームを発表

NEXT MOBILITY編集部

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Amazon Web Services,Inc.(AWS)と、BlackBerry Limited(本社:カナダ オンタリオ州、CEO:ジョン・チェン、以下BlackBerry)は12月2日、BlackBerryのインテリジェント車載データプラットフォーム「BlackBerry IVY」の開発・販売を目的とした、複数年のグローバル契約を発表した。

 

このBlackBerry IVYは、クラウド接続型の高拡張性ソフトウェア・プラットフォームであり、自動車メーカーは、一貫性とセキュリティを維持した形で、車載センサーのデータを読み取り、データを正規化することができる。車内のローカルデータとクラウドデータ、両方の情報を活用し、臨機応変な車載サービスを創造することで、ドライバーと同乗者には魅力的な経験を提供することが可能だ。

 

 

 

BlackBerry IVYは、自動車業界のデータのアクセス、収集、管理に関する問題を解決する。最先端の自動車には、多数のサプライヤーから供給された数千個もの部品が使用され、それぞれ独自仕様のハードウェア/ソフトウェア・コンポーネントを組み合わせられている。こうしたコンポーネントに含まれる車載センサーは多様化が進んでおり、独自の専門的な形式でデータを生成する。データの取り扱いには高度な専門的スキルが必要であるうえ、車載サブシステムからそれらのデータにアクセスすることも難しく、開発者にとっては、革新的な最新ソリューションをいち早く開発し、市場に投入するのは困難であった。BlackBerry IVYは、車載データに機械学習を導入し、予測的な見通しと推論を導き出すことで、こうした課題を解決する。自動車メーカーは、こうしたデータをもとに、ユーザーの嗜好に合わせた乗車体験を提供することができる。

 

また、異なる自動車モデル/ブランド間で互換性を保証するため、BlackBerry IVYは、複数の車載OSとマルチクラウド環境をサポートする。車載データを表面化・正規化するBlackBerry QNXの各種機能と、IoTや機械学習向けの機能を含む、AWSの広範なサービス・ポートフォリオが基礎となる。BlackBerry IVYは、自動車の組み込みシステム内で実行されるが、管理や構成は、クラウドからリモートで行うことができる。その結果、自動車メーカーは、車載データをより深く把握し、ユーザーのアクセス権をコントロールしつつ、エッジコンピューティング機能により、データの迅速・効率的な処理を最適化できる。BlackBerry IVYの統合機能により、メーカーはクラウド接続型の自動車の製品寿命を通じ、新たな特長や機能、パフォーマンスをユーザーに提供しつつ、車載データを活用することで、新たな収益源やビジネスモデルを開拓可能となる。

 

一例として、BlackBerry IVYは車載データを活用することで、ドライバーの行動とともに、路面凍結や渋滞などの危険な状況を認識し、トラクションコントロール、車線逸脱防止支援、アダプティブクルーズコントロールなど、関連する安全機能の起動をドライバーに促すことができる。BlackBerry IVYはその後、安全機能の使用時期・状況に関するフィードバックを自動車メーカーに送信する。これによってメーカーは、車両性能を向上させるための、ターゲットを絞った投資が可能となる。さらに、電気自動車のドライバーの場合、自動車のバッテリー情報と、サードパーティの充電ネットワークとの共有を選択することで、充電コネクターを事前予約し、ドライバーの現在地や旅行プランに合わせて充電時間を調整できる。
また、BlackBerry IVYは、10代のドライバーの保護者に、車載センサーから得られたデータに基づき、情報を提供することができる。これは車内の人数が変わった際や、ドライバーによる携帯電話の使用が疑われる状況、制限速度の無視、あるいは、自動車の人数が保護者の設定を超えた場合などに適用され、通知を受け取ることが可能だ。同様に、幼児の保護者であれば、後部座席の幼児の存在を検知した場合に、チャイルドセーフティロックの使用を促すリマインダーを受け取ることもできる。

 

 

 

BlackBerry IVYを使用すれば、複数の自動車ブランド/モデルを対象に、最新の車載アプリケーションやネットワークサービスの開発、導入、収益化に要する期間を短縮することができる。複数の自動車モデルに対応した新サービスの共通のビルディングブロックとして、多種多様なデータを活用可能で、今後は現行製品のように自動車のモデル単位で単発ソリューションへの投資を強いられることはなくなる。また、プラットフォームのアプリケーション・プログラミング・インターフェイス(API)を使用すれば、ソフトウェア開発チームとの間でデータや出力の共有が行え、車載/アプリデータへのアクセス権や情報レベルをコントロールすることで、イノベーションを実現しつつ、ユーザーのプライバシーやセキュリティも保護することができる。

 

さらに、BlackBerry IVYでは、より幅広い開発者とのコラボレーションを、より簡単に行うことができ、車両性能の向上、保守・修理コストの削減、利便性の拡大につながる新たな製品・サービスを短期間で開発できる。具体的には、性能データをリアルタイムで分析することで、欠陥の可能性がある部品の初期兆候を確認し、対象車両を特定するコードを展開し、対象ドライバーに通知を行い、ターゲットを絞ったリコールを実施できる。プラットフォームのクラウドコンソール(BlackBerry IVYの管理用のWebインターフェイス)から、ソフトウェアの導入とアップデートをリモートで行うことで、自動車メーカーはシステムの機能性を継続的に向上させることが可能だ。

 

 

 

BlackBerryの執行会長兼CEOであるJohn Chenは、このソフトウェア・プラットフォームは、車内で提供する経験のこれまでの概念をくつがえし、安全性、セキュリティ、ユーザーのプライバシーを犠牲にすることなく、新たな用途、サービス、機会の創造に役立つことを約束すると述べている。

 

Amazon Web Services, Inc.のCEOであるAndy Jassy氏は、AWSとBlackBerryのコラボレーションによって、すべての自動車メーカーは、カスタマーエクスペリエンスを刷新し続け、自動車は固定されたテクノロジーの集合体から、ユーザーのニーズや嗜好に応じて成長・適応可能なシステムへと生まれ変わると述べる。メーカー各社がデジタルトランスフォーメーションでしのぎを削る中、BlackBerry IVYによって、自社のブランドを構築できると同時に、自動車業界全体でコネクテッドカー向けサービスの基準を確立できるとしている。

 

 

 

■アマゾン ウェブ サービス(AWS)
https://aws.amazon.com/

 

■BlackBerryについて
BlackBerry.com

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。