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2019年2月20日【経済・社会】

経産省、自動車騒音測定方法等、新制定のJISを紹介

NEXT MOBILITY編集部

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経済産業省は、2月に新らしく制定された日本工業規格(JIS)31件と改正された68件(平成31年2月20日公示JISリスト参照)の内、社会的に関心の高い重要な制定や改正について紹介をした。

 

JISは、製品の種類・寸法や品質・性能、安全性などを定めた国家規格で、社会的環境の変化に対応して、制定・改正されている。

経産省・ロゴ

[重要なJIS規格の制定と改正内容(2月分)]

 

<停止時・低速走行時の自動車騒音測定方法のJIS制定>

 

これまで、電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HEV)などの電動車の場合、低速走行時などに発する音量が小さいため、停止車両の存在や車両の接近に歩行者が気付きにくいことが課題となっていた。

 

この対策として車両の停止時や時速20キロメートル以下の低速走行時に、電動車が発する音の大きさを一定以上にすることが、国内外で義務づけられている(注1)。

 

国内の関係者が、電動車が発する音の測定方法を正確に理解してより正しく測定を実施するため、停止時・低速走行時の電動車が発する音量の測定方法を「JIS D1048」として制定した。

 

■主なポイント

 

停止時や低速走行時に電動車が発する騒音を正しく測定するための方法を定めたISO26254(注2)をもとに技術的な解説を加えて、車両以外の音(暗騒音)の影響が十分小さい状況で測定を行うために次の2種類の方法を規定した。

 

① 屋外での騒音測定

 

自動車の騒音測定は、従来、屋外で車両の中心から7.5mの位置(左右2か所)で測定していたが、エンジンを持たない、またはエンジン停止状態で走行可能な電動車の場合、低車速では自動車の発する音量が小さいため、従来の測定位置では暗騒音が小さい環境でしか音の測定ができなかった。

 

そこで、測定時の暗騒音の影響が安定して小さくなるよう、下図のように車両中心とマイクロホンの距離を2mと規定した。

 

② 屋内(無響室/注3)での騒音測定

 

測定を屋内で行なう場合に試験設備が満足すべき性能要件をISO26101(注4)の確認方法に基づいて規定し、屋外と等価な試験ができるようにした。

 

注1)国連欧州経済委員会自動車基準調和世界フォーラム(WP29)で採択された国際基準(UN-R138)で義務づけられ、国内でも平成28年に国土交通省により義務化される法律が制定された。

注2)ISO16254: Acoustics — Measurement of sound emitted by road vehicles of categoryM and N at standstill and low speed operation — Engineering method(音響- 停止時及び低速走行時のカテゴリ M 及び N の道路車両が発生する騒音の測定-工学的方法)

注3)無響室:音の反射をほとんどなくし、室内での音の反響や暗騒音が無視できるほど小さくなるよう設計した部屋のこと。

注4)ISO26101:Acoustics –Test methods for the qualification of free-field environments(音響―自由音場環境の評価のための試験方法)。

 

※日本工業標準調査会(JISC)の HP(http://www.jisc.go.jp/)から、「JIS D1048(停止時及び低速走行時にカテゴリ M 及び N の自動車が発生する音の試験方法)」で JIS検索すると本文を閲覧できる。

 

 

 

 

<システムやソフトウェア製品の利用時の品質を測定するためのJISを制定>

 

PCやスマートフォン、IoT機器の普及に伴い、利用者にとっては、その機器に内蔵されるソフトウェアの信頼性が重要となる。

 

これまでもJIS規格においては、ソフトウェアの利用時の品質を客観的に測る評価モデルは存在していたが、具体的な測定量や測定方法は規定されていなかったため、今回、国際規格ISO/IEC25022に対応する形でJISを制定した。

 

 

 

<案内用図記号のJIS改正>

 

案内用図記号(ピクトグラム)を、日本人だけでなく外国人観光客にもよりわかりやすい案内用図記号とするため、「JIS Z8210(案内用図記号)」に「洋風便器」「和風便器」「温水洗浄便座」の3つの案内用図記号を追加した。

 

 

 

 

[工業標準化法の一部改正]

 

平成30年第196会通常国会において、「不正競争防止法等の一部を改正する法律」(法律第33号)が可決成立し、工業標準化法が一部改正され、標準化の対象にデータ、サービスを追加し、法律名を“産業標準化法”に改め、“日本工業規格(JIS)”が“日本産業規格(JIS)”に変更される。

 

 

[各規格の問い合わせ先]

 

公示された各規格の詳細について問い合わせをする場合、以下の「平成31年2月20日公示JISリスト」に記載された担当課に直接問い合わせのこと。

 

■平成31年2月20日公示JISリスト(PDF):http://www.meti.go.jp/press/2018/02/20190220001/20190220001-1.pdf

 

 

■(経済産業省)主要なJISの制定・改正の紹介:http://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun/shuyoujis.html

■(日本工業標準調査会)JIS検索:http://www.jisc.go.jp/app/jis/general/GnrJISSearch.html

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。