NEXT MOBILITY

MENU

2020年12月10日【自動車部品】

豊田自動織機、FCエアコンプレッサーと水素循環ポンプを新開発

NEXT MOBILITY編集部

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

豊田自動織機は12月10日、同社が新たに開発した「燃料電池向けエアコンプレッサー」と「水素循環ポンプ」が、トヨタ自動車の燃料電池自動車(以下、FCV)の新型「MIRAI」に搭載されたと発表した。

豊田自動織機・ロゴ

気候変動問題は、世界各国が取り組むべき最重要課題として、先日、日本でも2050年の脱炭素社会実現が目標に掲げられた。このような状況を背景に、水素を燃料とし、走行時に水だけを排出するFCVおよび、FCシステムの商用利用など、水素利用が様々な形で進んでいる。

 

FCVの普及を見据えて開発された新型「MIRAI」では、「こんなクルマが欲しかった。それがMIRAIだった」を目標に、航続距離が延長され、スタイリングや走行性能等、全方位での見直しが実施された。

 

今回、その新型「MIRAI」に採用された豊田自動織機の新開発エアコンプレッサーは、量産品としては世界初(※)となる「可動ローラー式増速機」を用いた遠心式を採用し、従来モデルから24%の圧縮効率向上、35%の軽量化、45%の小型化を実現。また水素循環ポンプは、「新シール構造」を用い、素材を従来のステンレス製からアルミ製に変更することで、41%の軽量化が実現されている。

 

豊田自動織機は、FCV向け製品に加え、主力事業である産業車両分野の「FCフォークリフト」や「FCトーイングトラクター」など、今後もFC関連製品のラインアップを拡充し、水素社会の実現に貢献していくとしている。

 

 

[FCVにおける豊田自動織機製品の役割]

 

FCVは、FCスタック内で酸素と水素を反応させることで発生する電気でモーターを駆動して走行するが、燃料として使用する酸素は大気を「エアコンプレッサー」で吸引・圧縮して、水素は水素ステーションで充填された高圧水素タンクから、FCスタックに供給される。

 

そして、発電時に反応を起こさなかった水素や発生した水は、「水素循環ポンプ」によってFCスタックから吸引。未反応水素は再度FCスタックへ送られ使用され、水は外部に排水される。このように、エアコンプレッサーと水素循環ポンプは、FCVの発電システムにおいて重要な役割を担っている。

 

 

<エアコンプレッサー>

 

FCVでは、始動後に絶えず酸素と水素をFCスタック内で反応させるため、エアコンプレッサーはアイドリング時の小流量から加速時の大流量まで、大気を効率よく吸引・圧縮することが求められるが、開発品では、カーエアコン用コンプレッサーで培った圧縮技術をベースに、エアコンプレッサーの空気圧縮部を、量産品としては世界初(※)となる「可動ローラー式増速機」を用いた遠心式に変更。

 

これにより、圧縮部のインペラーを、自動車エンジン用ターボチャージャー並に超高速回転(183,700r/min)化し、新型「MIRAI」の高出力化に大きく貢献した。

 

さらに、増速機内部の可動ローラーが空気流量の変化に対応しながら最適位置に動き、モーターからインペラーへ動力を伝達することで、小流量時・大流量時共に効率的に空気を圧縮。従来モデル比で圧縮効率を24%向上、また35%の軽量化、45%の小型化も実現されている。

 

<水素循環ポンプ>

 

水素循環ポンプは、発電時未反応だった水素と発生した水を、効率よく循環させることが求められるが、新開発の水素循環ポンプでは、「新シール構造」を用いることで耐食性を向上。素材を従来のステンレス製からアルミ製に変えることを可能とし、41%の軽量化を実現した。

 

 

なお新型「MIRAI」には、上記製品の他、「カーエアコン用コンプレッサー」「水素循環ポンプ用インバーター」が搭載されている。

 

 

※豊田自動織機調べ。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。