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2020年12月11日【エネルギー】

米トヨタ、新型MIRAIのFCユニット搭載の大型トラックを公開

坂上 賢治

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 トヨタ自動車(本社:愛知県豊田市、代表取締役社長:豊田 章男)傘下のトヨタ・ノース・アメリカ(Toyota Motor North America/以下、TMNA)は12月11日未明(米国時間 : 12月10日)、燃料電池大型商用トラック(以下、FC大型商用トラック)の最新プロトタイプを米国内に於いて初公開した。(坂上 賢治)

 

発表したTMNAによると同車には、先の日本時間の9日に発表された新型MIRAIに搭載された第二世代のFVシステムが採用されているという。これによって量産化の確立を前提に、力強い加速性能を実現させるなどパフォーマンスと使い勝手を大幅に向上させたと謳っている。

 

 

 車両スペック自体は、荷重量が8万ポンド(約36トン)、航続距離は300マイル(約480km)以上として、米国当地に於ける幅広い商用トラックニーズに適応できる仕様とした。

 

車両そのものは、オレゴン州ポートランドで1912年に創業した貨物自動車メーカー「ケンワース(Kenworth)」の手になるボディコンストラクションをベースとしているもので、これに先代T680と同じくトヨタ謹製のFCシステムを2連装。キャビン後方に6本の水素貯蔵タンクを格納。より高性能化されたリチウムイオンバッテリーを介して動力モーターへの電力を整流していく仕組みを採っている。

 

 そもそもトヨタは2017年から、ロサンゼルス港湾地域を舞台に商用FCトラックの可能性を検証してきた。これはロサンゼルス市港湾局(隣接のロングビーチ港も含む)が中心となって進める貨物輸送の〝ゼロ・エミッション化〟プロジェクト(ZANZEFF : Zero-and Near Zero-Emission Freight Facilities Project)に企業として参画しているもの。

 

 

このZANZEFFは、温室効果ガス排出量の削減、経済の強化、公衆衛生の改善を主目的に、カリフォルニア大気資源局(CARB)がロサンゼルス港へ助成金4千100万ドル(約42億7500万円)を投じて推進している地域プロジェクトを指す。

 

同港でCSO(Chief Sustainability Officer:最高サステナビリティ責任者)を務めるクリスキャノン氏は、「現在、当港(ロサンゼルス港)は16のゼロエミッション実証プロジェクトに取り組んでおり、この一環としてゼロエミッション貨物車の開発をサポートしています」と語っている。

 

 

 一方でトヨタは、これまでの研究・検証の成果として今月、第一世代のFCシステムを搭載した車両(ケンワースT680FCEV)2台を米貨物運送会社へ納入する。これについて同プロジェクトを推し進めているTMNAのR&D部門(ミシガン州アナーバー)で電動車・先進技術部門チーフエンジニアを務めるアンドリュー・ランド氏は、「FC大型商用トラックの大規模な実証は、研究開発に1時間あたり約100万ドル(1億円超)規模のコストを投下し、貨物輸送のゼロ・エミッション目指す我々にとって重要なステップにあたります。

 

これまでの実証を通じて、FC技術が日常の貨物輸送に適していることは確信していますが、今後は、新型プロトタイプを追加することで、単に量産化するだけではなく、より長距離輸送のニーズに応えるなど、幅広い用途先を視野に入れていきます」と話している。

 

 

 具体的な車両の納入先は、トヨタロジスティクスサービス(Toyota Logistics Services)と、カリフォルニア州の物流事業社のサザンカウンティエクスプレス(SouthernCounties Express)となっており、それぞれ最終的には車両8台を収め、各車両はロサンゼルス港とロングビーチの港に於ける港湾域輸送で使用される。

 

さらに2021年中には追加で同型トラック8台の納入も予定されている。この8台のトラックのうち3台は、港湾での運行に車両を供する予定の国際貨物輸送会社ユナイテッドパーセルサービス(UPS)へ。2台は米国の港湾域輸送でよく知られているトータルトランスポーテーションサービス(Total TransportationServices)へ。さらに3台はトヨタロジスティクスサービス(Toyota Logistics Services)が受け取る見通しとなっている。

 

 なおトヨタ自動車は、「社会の低炭素・脱炭素化に向け水素利用が様々な形で進んでいる中、引き続き小型高効率で生産性を追求した新型のFCシステムを、トラック・バスなど社会を支えるモビリティにも活用し、水素利用の拡大に向けて貢献することを目指していきます」と結んでいる。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。