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2020年6月5日【テクノロジー】

トヨタ、中国企業5社と商用車用FCシステム開発会社設立へ

NEXT MOBILITY編集部

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トヨタ・HP

 

 

トヨタ自動車は、中国での燃料電池車両(FCV)普及に向け、中国企業6社と、新会社「連合燃料電池システム研究開発(北京)」設立に向け、合弁契約を締結した。

 

新会社では、主に商用車用の燃料電池システムを開発。出資はトヨタ、億華通を筆頭に各社が行い、董事長には董長征氏、総経理には秋田隆氏が就任予定。2020年中に北京市内での設立を目指す。

 

<新会社に参加する6社>

 

・中国第一汽車股份(以下、一汽)
・東風汽車集団(以下、東風)
・広州汽車集団股份(以下、広汽)
・北京汽車集団(以下、北汽)
・北京億華通科技股份(以下、億華通)
・トヨタ自動車(以下、トヨタ)

トヨタ自動車・ロゴ

中国では、2016年に公表された「中国国家省エネ車及び新エネ車ロードマップ」に基づき、世界でも類を見ない速度で、商用車を中心に、FCV市場が拡大。トヨタでは、この変化の激しい中国市場においてFCVを普及、定着させるには個社で取り組むのではなく、オープンなFCV普及の基盤づくりが不可欠と、今回、6社連合による研究開発会社の設立に至ったと云う。

 

トヨタは、FCシステム開発の経験および市場での実績を有する億華通や、商用車開発ノウハウや市場経験が豊かな中国を代表する完成車メーカーとの連携で、競争力があり、中国における各種規制にも適合した燃料電池システムの開発が可能と判断。

 

具体的には、6社協議で商品を企画し、中国での性能ニーズを満たす「FCスタック等のコンポーネント」、それを支える「FCシステム制御」、そして「車両搭載」までの一連の技術開発を一気通貫で行うことで、開発から製品化までのリードタイムを大幅短縮し、中国の商用車市場におけるFCV普及を加速。FCV普及に不可欠な動力性能・燃費・耐久性など商品力に優れ、低コストで競争力ある燃料電池システムおよび、主要コンポーネントの開発に挑戦する。

 

新会社では、中国での水素社会の実現に向け、FCVの普及に努め、またそれらを進化・発展させることで、CO2排出量の削減や、大気汚染の低減などの環境問題解決に貢献。中国のよりよいモビリティ社会実現に資するべく、取り組んでいきたいとしている。

 

 

[新会社概要]

 

– 名称:

日本語:連合燃料電池システム研究開発(北京)有限会社
中国語:联合燃料电池系统研发(北京)有限公司
英語:United Fuel Cell System R&D (Beijing) Co., Ltd.

– 所在地:中国 北京市
– 面積:約19,000m2(予定)
– 代表:董事長董長征、総経理秋田隆(予定)
– 従業員数:約50名(2023年までに段階的に約100人にまで増やす計画)
– 総投資額:約50億1900万円
– 出資比率:

・トヨタ65%
・億華通15%
・一汽5%
・東風5%
・広汽5%
・北汽5%

 

 

[各社トップからのコメント]

 

<一汽集団の王国強 副総経理>

 

「中国一汽は、“地球環境を最大限に保全する”という理念の下、燃料電池技術を発展させると共に、志を同じくするパートナーと連携し、すべての関係者が利するWin-Winの関係を目指しております。各社力を合わせてリソーセスを共有することで、互いの優位性を生かせる燃料電池開発基盤を構築し、共に環境に優しいクルマ社会を作り上げることを切に期待しております」。

 

<東風集団の尤峥 副総経理>

 

「FCVの開発は、今、まさに新しい時代を迎えようとしています。FCVの発展・普及において、多くの人と理念を分かち合い、産業の成熟までの様々な困難を共に乗り越えていくことこそが水素社会実現の鍵だと考えます。今回、東風・一汽・北汽・広汽・億華通・トヨタが共同で新会社を立ち上げ、商用車用の燃料電池システムの研究開発に専念し、FC産業発展の基盤づくりに取り組むことは、自動車産業の歴史においても、前例のない新しい試みと言えます。東風は、よりオープンで、より合理的かつ現実的なビジョンを持った上で、環境に優しく低炭素な環境車開発の新たな道をパートナー各社と共に模索していきます。長く険しい道ですが、水素社会を実現するには、業界をあげてのさらなる努力が不可欠との信念のもと、新会社は、新しい局面を打開することにチャレンジしてまいります」。

 

<広汽集団の馮興亜 総経理>

 

「広汽集団は、他のパートナーと共に合弁会社を設立し、中国におけるFCV普及に取り組めることを大変光栄に思っています。新会社では中国市場で必要とされる各種技術開発を通じて、競争力のある燃料電池システムをタイムリーに開発し、中国商用車市場におけるFCV普及を加速させ、中国におけるFCV産業の発展を推進、ひいてはより良いモビリティ社会の実現に貢献できることを信じています。広汽集団は、引き続き各種イノベーション活動を通じて社会の発展を促進することを目的に、新エネ車分野に注力し、パートナーと共に中国における燃料電池産業の発展を推進して参りたいと考えております」。

 

<北汽集団の張夕勇 総経理>

 

「中国はFCV発展のスピードが最も速い国のひとつであり、燃料電池技術が発展期を迎えようとしている中、商業分野での運用も一部地域で展開が始まっています。北京汽車集団は、新エネ変革の積極的な担い手として、グローバルでの戦略的ビジョンを持つパートナーと共に、中国自動車産業が直面する課題への対策を検討し、水素技術の革新と研究開発分野での協業を強化していきます。今回の新会社は、オープンで協力的な研究開発プラットフォームを目指しており、トヨタの先進的な水素燃料電池技術、億華通のシステムインテグレート分野での実力及び各完成車メーカーの製造・マーケットでのノウハウを集結できると考えています。各社のリソーセスの共有及び技術革新努力により、近い将来の水素社会の実現や中国ひいてはグローバルのクリーンエネルギー革命に共に貢献できると信じています」。

 

<億華通の張国強 董事長>

 

「水素産業が省エネ・CO2低減の促進、エネルギー転換の重要手段であることはすでにグローバルの共通認識となっています。自動車分野においても、燃料電池システムはクルマのゼロエミッションを実現するための重要なソリューションとされており、今後のマーケット競争の中核になってくると考えられています。中国では、水素に転換できる各種エネルギー資源が豊富であることに加え、市場も大きいので、関連政策の整備に伴い、水素産業の発展が益々期待できます。今回の新会社が、よりオープンで・協力・共有できる水素エネルギー産業の構築や、水素利用及び産業の発展につながり、中国国内の水素社会の基礎づくりとなることを信じています」。

 

<トヨタの寺師茂樹 執行役員>

 

「新会社は、トヨタのグローバルにおけるFCV戦略上、大きな意義を持っています。これほどのスピード感のある自動車市場は中国をおいて他になく、FCV普及という共通の目標に対して、共に協力し合う“仲間”を得ることができ、非常に心強く思います。常々申し上げているように、電動化推進には「仲間づくり」が重要で、中国における商用車市場で大きな影響力を持つ各社と、さらに確かな技術力を持つ億華通と一緒に取り組むことにより、中国におけるFCV普及の足掛かりができると考えています。トヨタは中国におけるFCVの発展・促進に向け、パートナー各社とのオープンな協業関係を通じ、取り組みを深化させていきます」。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。