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2021年1月7日【エネルギー】

ロシア極東で「ポーラーマイクログリッドシステム」の実証運転

NEXT MOBILITY編集部

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実証運転を開始した、ディーゼル発電機や蓄電池を格納した発電所

 

 

NEDOと東光高岳、三井物産、駒井ハルテックは、北極圏に位置し、ロシア極東の中でも特に寒冷な地域であるサハ共和国のティクシ市で2018年に運転を開始した風力発電機3基と、今年度新たに設置したディーゼル発電機、蓄電池およびエネルギーマネジメントシステムを組み合わせた「ポーラーマイクログリッドシステム」を完成させ、2020年12月28日に実証運転を開始したと、NEDOが1月7日発表した。実証運転を通して、低コストで安定的なエネルギー供給を目指すとしている。

 

 

1.概要
ロシア極東地域には、大規模な電力系統に接続せずに、電力供給をディーゼル発電機に依存している小規模な独立系統地域が多数存在している。これらの地域では、燃料輸送コストによって発電単価が極めて高い状況となっている。しかし、ロシア極東地域の地方政府は、電力価格を電力系統に接続している地域と同等程度に維持するための政策措置をとっているため、大きな財政負担を余儀なくされている。また、ディーゼル発電機の老朽化が進んでいるため、エネルギー安定供給に支障を来しかねない状況にある。

 

このような背景のもと、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2018年2月27日にモスクワ市において、ロシア連邦サハ共和国政府およびロシア国営電力会社ルスギドロとの間で、風力発電システムを含むエネルギーインフラ実証事業に関する協力覚書(MOC)を締結した。今回のNEDO実証事業※1の委託先として選定された東光高岳、三井物産、駒井ハルテックの3社は、サハ共和国の電力会社であるサハエネルゴと協力し、現地調査、機器の設計、設備・機器の製作および輸送、据付け・試運転を進めてきた。

※1 NEDO実証事業
事業名:エネルギー消費の効率化等に資する我が国技術の国際実証事業/実証/風力発電システムを含むエネルギーインフラ実証事業(ロシア連邦サハ共和国)
事業期間:2018年2月~2022年2月(予定)

 

今回、北極圏に位置するロシア極東の中でも特に寒冷な地域であるサハ共和国のティクシ市内に、2018年に運転を開始した風力発電機に加え、今年度新たに設置したディーゼル発電機、蓄電池およびエネルギーマネジメントシステムを組み合わせ、安定的なエネルギー供給を実現する「ポーラーマイクログリッドシステム(Polar Microgrid System)」を完成させ、2020年12月28日に実証運転を開始した。

 

なお、この実証事業は、2016年5月の日露首脳会談で提示された8項目の「協力プラン」※2のうち「4.石油、ガス等のエネルギー開発協力、生産能力の拡充」に含まれるものである。

※2 8項目の「協力プラン」
東方経済フォーラムに向けた現状と方針(ロシア経済協力8項目)(emb-japan.go.jp)
8項目の「協力プラン」の進捗(2.1MB)

 

 

2.今回の実証内容
実証運転では、既設発電所に設置されているディーゼル発電機や2018年に運転を開始したマイナス30℃以下での運転を可能とする極寒冷地仕様の風力発電システム[中型(300kW)の風力発電機3基]に加え、今回新たに設置した高効率のディーゼル発電機(1MW 3台)、高出力応答が可能なリチウムイオン電池(900kW-300kWh)を採用した蓄電池システムおよびエネルギーマネジメントシステムを組み合わせ、低コストで安定的なエネルギー供給を目指す。実証事業では、風力発電機とディーゼル発電機の効率的な運用により、年間約16%のディーゼル燃料使用量削減を目指す。

 

またこの実証では、原油を燃料として使用可能とするため、新設ディーゼル発電機のうち1台において、不純物を除去する低質油焚きエンジン用の付属装置を導入し、原油とディーゼル油による混焼焚きの有効性を実証する。

NEDO

ポーラーマイクログリッドシステムのイメージ

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。